孫子曰く、兵を用ふるの法、散地あり、輕地あり、爭地あり、交地あり、衢地あり、重地あり、𡉏地あり、圍地あり、死地あり。諸侯自ら其地に戰ふ者を散地となす。人の地に入つて深からざる者を輕地となす。我れ得るも亦利あり、彼れ得るも亦利ある者を爭地となす。我れ以て行くべく.彼れ以て來るべき者を交地となす。諸侯の地三屬す、先づ至つて天下の衆を得る者を衢地となす。人の地に入ること深うして城邑の多きを背にする者を重地となす。山林、險阻、沮澤、凡て行き難きの道を𡉏地となす。由て入る所のもの隘く、從つて歸る所のもの迂に、彼れ寡うして以て吾れの衆を擊つべき者を圍地となす。疾く戰へば則ち存し、疾く戰はざれば則ち亡ぶる者を死地となす。此故に散地には則ち戰ふこと無れ。輕地には則ち止まること無れ。爭地は則ち攻むること無れ。交地は則ち絕たるゝこと無れ。衞地は則ち交はりを合せよ。重地は則ち掠めよ。𡉏地は則ち行け。圍地は則ち謀れ。死地は則ち戰へ。
古の善く兵を用ふる者は、能く敵人をして前後相及ばず、衆寡相恃まず、貴賤相救はず、上下相收めず、卒離れて集まらず、兵合して齊はざらしめ、利に合して動き利に合せずして止む。敢