Page:鐵道震害調査書 大正12年.pdf/28

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脚柱基礎と土臺石との喰違󠄄ひ2呎餘に及び,階段も移動甚しく,從て橋體取付部の弛緩󠄁せるもの多し。尙橋脚用鑄鐵柱の切斷せられしもの,及び鑄鐵柱の間の筋違󠄄の取付部缺損せしもの多かりしも著しき傾斜󠄁をなせしものなし。その他の區間に於ける被害󠄂は輕微なり。(寫眞第五十八參照)

地下道󠄁 東京附近󠄁の地下道󠄁は殆ど被害󠄂なかりしも,下曾我驛のものは(盛土內に設けらる)全󠄁く舊形を止めざる程󠄁度の大崩󠄁壞をなせり。(第十三表並に寫眞第五十九及び第六十參照)

給水設備 給水槽臺は大船󠄂,國府津,山北3驛の煉化石造󠄁又󠄂は石造󠄁のもの,東神奈川驛の鐵製のもの,及び國府津驛に於ける木造󠄁のもの各1個破壞し,給水槽は孰れも鐵製にして墜󠄁落破損せり。(寫眞第六十二及び第六十三參照)

信號機 號󠄂機の被害󠄂にして最も多數なるは基礎の沈下又󠄂は鐵塔傾斜󠄁のため信號󠄂機の傾斜󠄁せしものにしてその數96基あり,次󠄁に柱の折損せしもの32基,柱又󠄂は附屬品の破損せしもの25基,倒壞せしもの14基あり。この外東京橫濱間に於て沿線火災のため燒損せしもの8基を算す。(寫眞第六十四參照)

道󠄁 有樂町濱松󠄁町間及び汐留驛構內並に神奈川橫濱間の各軌道󠄁は猛火に襲󠄂はれて枕木大部分󠄁燒失せしが,地震に因る被害󠄂は築堤沈下のために軌道󠄁の沈下彎曲せしもの,切取崩󠄁壞のため埋沒屈曲せしもの,橋桁墜󠄁落のため墜󠄁落屈折せしものとにして,その最も甚しく沈下彎曲したるは國府津下曾我間約2 1/2哩に亘る區間にして,戶塚足柄間に於ても各所󠄁に大被害󠄂あり,而して東京六郷󠄁川間に於ては田町驛附近󠄁約10鎖󠄁間,及び品川蒲田間に數箇所󠄁の小被害󠄂ありしのみなり。

列車 地震發生當時被害󠄂區域內の本線に運󠄁轉中の列車は旅客列車5,貨物列車13,電車12,合計30箇列車にしてこの內事故の生じたるもの16個列車あり,これを大別すれば,沿線火災のため類燒したるもの有樂町新橋間,新橋濱松󠄁町間,濱松󠄁町驛及び橫濱程󠄁ヶ谷間に於て各1個列車(機關車1輛脫線,1輛燒損,客車20輛,電車8輛燒損),築堤崩󠄁又󠄂は沈下のため脫線又󠄂は顚覆したるもの戶塚大船󠄂間,國府津下曾我間及び下曾我松󠄁田間に於て各1個列車(機關車2輛顚覆,1輛脫線,客車9輛傾斜󠄁,1輛顚覆,貨車23輛顚覆,16輛脫線),切取法面崩󠄁壞のため事故の生じたるもの山北谷峨間に於て1個列車(機關車1輛傾斜󠄁,貨車11輛顚覆,6輛脫線,2輛1軸脫線),震動のため脫線顚覆したるもの大船󠄂藤󠄇澤,山北,御殿場の各驛構內,及び藤󠄇澤辻堂間,平󠄁塚大磯間に於て各1個列車茅ヶ崎驛構內に於て2個列車(機關車4輛顚覆,客車2輛脫線,5輛顚覆,貨車20輛脫線,56輛顚覆,2輛傾斜󠄁)にして,尙これがため旅客の即死8人,重傷39人,輕傷5人,及び乘務員の即死1人,重傷2人を生じたり)。(第十七表並に附圖󠄃第三及び寫眞第六十五乃至第七十三參照)

第二節 濱川崎支線(川崎濱川崎間2.7哩)

築堤 本線は全󠄁區間殆ど築堤と橋梁とより成り,橋梁前󠄁後には高き築堤を有して海岸に近󠄁平󠄁野を通󠄁ずるため築堤の被害󠄂著しく大にして,京濱電車線架道󠄁前󠄁後の如きは最大沈下約20呎に達󠄁し,汐入川橋梁前󠄁後の沈下亦約10呎に及べり。その他全󠄁區間の築堤何れも多少損害󠄂を蒙らざるものなし(寫眞第七十四及び第七十五參照)

橋梁 橋梁袖石垣は崩󠄁壞若は孕出を生じたるも橋臺橋脚には大なる被害󠄂なく,僅に橋臺の傾斜󠄁せるものあるのみなり。

道󠄁 築堤の被害󠄂伴󠄁ひ軌道󠄁の沈下移動彎曲等を起󠄁し,軌條繼目ボールトの切斷せる箇所󠄁ありて殆ど全󠄁線に亘りて被害󠄂あり,而して川崎起󠄁點1哩30鎖󠄁近󠄁に於て枕木の間𨻶著しく變化せるも,終󠄁點附近󠄁に於ては變化なく,軌道󠄁全󠄁體として南東に移動せり。

第三節 鶴見程ケ谷間貨物線(鶴見程ケ谷間約4.1哩)

築堤 本線路は海岸の平󠄁地を通󠄁過󠄁し,各所󠄁にて電車線國道󠄁等を乘り越え全󠄁線殆ど築堤なるを以て被害󠄂全󠄁區間に亘れり。而してその最大なるものは橫濱驛前󠄁第一第二高島町架道󠄁前󠄁後の沈下約10呎なりとす。

土留壁 13哩70鎖󠄁より15哩34鎖󠄁に至る區間に於ては護岸石垣は練積と空󠄁積とを問はず全󠄁崩󠄁壞して大部分󠄁海中に沒し,又󠄂16哩73鎖󠄁近󠄁の石垣も崩󠄁壞し,これ等被害󠄂坪󠄁數384面坪󠄁達󠄁せり°尙この外高島驛構內荷揚場等の護岸壁も練積空󠄁積の區別なく崩󠄁壞しその量813面坪󠄁に及べり。(寫眞第七十六乃至第七十八參照)

橋梁 橋梁の被害󠄂最も大なるは浦島第三號󠄂橋梁(徑間40呎4連,寫眞第七十九參照)にして,兩橋臺ともバラス止大破,橋臺前󠄁進󠄁斜󠄁し,第一號󠄂第二號󠄂及び第三號󠄂橋脚は何れも沈下傾斜󠄁せり。この外バラス止の切斷,橋臺の傾斜󠄁せるもの多し。

停車場 入江信號󠄂所󠄁に於ては本屋傾斜󠄁し,高島驛にては本屋(木造󠄁二階建󠄁)傾斜󠄁移動し壁に龜裂を生ぜしが,木造󠄁上家は倒潰燒失せり。又󠄂同驛貨物上家は海岸,陸,中繼,何れも軸部は古軌條使󠄁用の鐵骨鐵筋混凝土造󠄁にして,屋根は混凝土スラブ葺なりしが全󠄁部倒潰し,積卸場擁壁も亦沈下傾斜󠄁したり。(附圖󠄃第三十四乃至第三十六並に寫眞第八十乃至第八十五參照)

信號機 入江,千若兩信號󠄂所󠄁及び高島驛構內に於て遠󠄁方,場內及び出發信號󠄂機合計24基傾斜󠄁せり。

道󠄁 全󠄁線に亘り軌道󠄁は沈下移動し,殊に橫濱驛前󠄁近󠄁高架線の如き沈下最大約10呎に及べり。