Page:鐵道震害調査書 大正12年.pdf/29

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第四節 東神奈川海神奈川間貨物支󠄂線(東神奈川海神奈川間1.2哩)

築堤及び軌道󠄁 本區間は殆ど全󠄁線築堤にして,第一第二運󠄁河橋梁附近󠄁の築堤約3呎沈下し軌道󠄁亦從て沈下せり,海神奈川驛構內に於ても線路屈曲して沈下2呎に及び,尙岸壁延󠄂長約150呎崩󠄁壞せり。

橋梁 橋梁は第一第二運󠄁河の2橋梁にして,何れも袖石垣崩󠄁壞し,橋臺は前󠄁進󠄁斜󠄁し,第一運󠄁河橋梁兩橋臺はバラス止切斷して軀體水平󠄁に切斷せり,又󠄂第二運󠄁河橋梁は海神奈川方橋臺上部に橫に罅裂を生じたり。(寫眞第八十六參照)

建物 海神奈川驛に於ける貨物扱所󠄁及びその他の建󠄁物小破せり。

第五節 高島横濱港󠄁間貨物支󠄂線(高島横濱港󠄁間2.8哩)

築堤 築堤は高島東橫濱間を除き第一,第二,第三橋梁前󠄁後の區間に於て著しく沈下し,最大10呎に及びたり。この外橫濱港󠄄驛構內に於ても陷落龜裂を生じたる箇所󠄁多し。

橋梁 本區間に於ける橋梁の被害󠄂は甚大にして,第一號󠄂橋梁(徑間30呎2連,100呎1連)の東橫濱方橋臺(徑間30呎用にして,井筒基礎2個の上部を穹拱にて連絡せるもの)は井筒上部水平󠄁に切斷して前󠄁進󠄁及び異動を生じ,第一號󠄂及び第二號󠄂橋脚(井筒基礎2個の上部を穹拱にて連絡せるもの)も亦井筒上部切斷傾斜󠄁せり。橫濱港󠄄方橋臺(徑間100呎用にして,井筒基礎4個の上部を穹拱にて連絡せるもの)は井筒上部切斷し,軀體に縱橫數條の大龜裂を生じて約2呎前󠄁進󠄁斜󠄁せり。第二號󠄂橋梁(徑間100呎1連)は兩橋臺(井筒基礎4個の上部を穹拱にて連絡せるもの)とも穹拱の下部に於て斜󠄁に切斷し,軀體に縱橫及び斜󠄁に數條の大龜裂を生じ,上部は切斷崩󠄁壞せり。第三號󠄂橋梁(徑間30呎2連)東橫濱方橋臺(井筒基礎3個を穹拱にて連絡せるもの)は橫及び斜󠄁に2條の大龜裂を生じて前󠄁進󠄁し,橋脚(井筒基礎3個を穹拱にて連絡せるもの)は井筒頂部にて切斷し且縱に1條の大龜裂を生ぜり。橫濱港󠄄方橋臺は地盤附近󠄁にて水平󠄁に切斷し隅の一部切斷脫出したり。

停車場 東橫濱並に橫濱港󠄄驛本屋及び貨物上家は何れも燒失し,尙東橫濱驛積卸場擁壁は不同に沈下して所󠄁々に罅裂を生じたり。

信號機 橫濱港󠄄驛構內に於ては場內及び出發信號󠄂機4基傾斜󠄁して火災に罹り,東橫濱驛構內にては遠󠄁方,場內及び出發信號󠄂機何れも傾斜󠄁せり。

道󠄁 道󠄁の被害󠄂は高島東橫濱間は輕微にして僅に沈下屈曲せるに過󠄁ぎざれども,第一號󠄂橋梁前󠄁後より第三號󠄂橋梁前󠄁後に至る(高島起󠄁點0哩65鎖󠄁より1哩18鎖󠄁に至る)區間は沈下屈曲甚しく,最大沈下10呎に達󠄁せり。尙東橫濱驛より橫濱港󠄄驛に至る間は火災のため枕木の燒失せるもの多し。

第六節 横濱櫻木町間電車線(横濱櫻木町間1哩)

築堤 本區間は殆ど全󠄁部築堤より成る高架線にして,4呎乃至6呎の沈下をなせり。

土留壁 本線路は一部分󠄁の外兩側に築堤土留用混凝土擁壁を設け,約30呎每に伸縮接合を有せしが,この伸縮接合は何れも間𨻶を生じ,擁壁は前󠄁方に押出されて傾斜󠄁,罅裂等を生じたる箇所󠄁あり,而して斯く擁壁の押出されたるため架空󠄁支󠄂持用の鐵塔は上部に於て4,5呎屈曲せり。(附圖󠄃第十三及び寫眞第八十七參照)

橋梁 內田町第一,第二及び第三橋梁は何れも橋臺の前󠄁方に傾斜󠄁し,縱に大なる罅裂を生じ,橫にも亦切斷罅裂を生ぜり。就中內田町第一橋梁橫濱側橋臺は被害󠄂最も大にして修理使󠄁用を困難ならしめたり。

停車場 櫻木町停車場本屋(石造󠄁二階建󠄁),乘降場上家は倒潰全󠄁燒し,擁壁は押出されて沈下崩󠄁又󠄂は罅裂を生ぜる部分󠄁あり。

地下道󠄁 築堤內に設けられたる櫻木町驛地下道󠄁の側壁及び階段側壁に數條の大龜裂(大なるものは幅2呎餘に及ぶ)を生じ,且移動して大破せり。(寫眞八十八乃至第九十參照)

列車 櫻木町驛附近󠄁に於て電車10輛燒失せり。(第十七表及び附圖󠄃第三參照)

信號機 櫻木町驛構內場內信號󠄂機及び出發信號󠄂機3基傾斜󠄁し,一部燒損せり。

道󠄁 築堤の沈下に伴󠄁ひ軌道󠄁亦沈下彎曲等の被害󠄂ありたり。

第七節 横濱線(東神奈川八王子間26.4哩)

切取 切取の被害󠄂は相原隧道󠄁南口の約1,000立坪󠄁,及び相原八王子間東神奈川起󠄁點24哩34鎖󠄁近󠄁(以下哩程󠄁は東神奈川を起󠄁點とす)の約1,200立坪󠄁崩󠄁壞を最も大なるものとし,その他東神奈川小机間寺尾隧道󠄁口,長津田原町田間12哩50鎖󠄁及び同哩60鎖󠄁近󠄁崩󠄁壞これに次󠄁ぎ,その他數箇所󠄁の小被害󠄂あり。

築堤 築堤の被害󠄂は長津田原町田間最も甚しくして13哩附近󠄁の如きは深最大約20呎の沈下を生じ,尙同區間に於ては最大沈下7呎程󠄁度のもの3箇所󠄁あり(寫眞第九十一及び第九十二參照),又󠄂東神奈川小机間に最大約15呎の沈下を生じ,小机中山間にも最大沈下約6呎乃至8呎のもの3箇所󠄁を生じたり。その他最大6呎以下の沈下を生ぜしもの10數箇所󠄁達󠄁す。而して原町田相原間に於ては被害󠄂較󠄁的輕微なりき。

土留壁 土留壁の被害󠄂は寺尾隧道󠄁前󠄁後坑門口附近󠄁の切取に於ける間知石空󠄁積合計約180面坪󠄁崩󠄁壞を最大なるものとし,これに次󠄁ぐを原町田淵野邊󠄔間の築堤土留間知石空󠄁積の崩󠄁壞とす。この外切取箇所󠄁に設けたる間知石空󠄁積の崩󠄁壞せるもの數箇所󠄁あり。

橋梁 橋梁の被害󠄂は東海道󠄁線乘越橋梁(徑間56呎2連)の八王子方橋臺崩󠄁壞し,東