外に子細の有と見へたり。若又外道天魔の障碍か。
そのゆへは羽生村の者共。たま〳〵因果のことはりを
わきまへ。菩提の道におもむくを。さゑんとて來れ
るか。さなくは狐狸のしわざにて。おゝくの人をたぶ
らかさんために。取つくにもやあらんに。せんなき事に
かゝりあひ。我が一分はともかくも。師匠の名までくだし
なば。宗門の瑕瑾なり。只そのまゝにすておき。所化
共も行べからずと。貞訓を加へたまへば権兵衛も
尤至極して。爾者所化衆をも留申さんとて。門外
さして出て行く。あとにて和尚おぼしめすは。既に
此事は石塔開眼まで。方丈へ訴へ。其領定有上は
縦ひ我〻捨置とも。終には弘經寺が苦労に成べ
き事共也。そのうへ権兵衛がはなしのてい。村中の難
義此事に究るとあれば。いとふびんの次第なり。
我行て吊はん。累が灵魂ならばいふに及はず。其
外天魔波旬のわざ。又は魑魅魍魎の所以にも
せよ。大願業力の本誓諸佛護念の加被力。一代
經巻の金文虚しからじ。其上和漢兩朝の諸典
に載る所。いか成三障四魔をもたゞちにしりぞけ。
順次得脱の證拠数多あり。幸成哉時機相應の他力
本願。佛力法力。傳授力。争以てしるしなからん。但し今
まで兩度の念仏にて。いまた埓あかで來る事。恐は