行ゆへに。すべて八大ぢごくへおち來るもの。みな我がとう
くわつにて見聞すれども日〻夜〻引もきらずとをる
事なれば。百分が一つも覚る事あたはず。しかれども同し
里に住し。なじみにて有やらん。當村の罪人。大かたは覚へ
たり。又かしやくのしな〳〵は。互にうさをかたりあひ。或は
あぼうらせつども。人をさいなむことばのはしにて。おのづから
聞しりたりといふとき。又あるものとふていわく。我が父は
十六年以前何月何日に死せしと。いゝもきらせずそれは
無間とこたへたり。問者せきめんして。汝我がおやの人にす
ぐれてあたる罪のあれば。むけんとは告るそ。あまりに
口の聞きすぎてそさうなるいゝ事や。とがの次第を一〻に
かたれきかんとのゝしりけり。かさねこたへていふやう。されば
とよ此事は。汝が親のさんげめつざい。むけんの苦を
かろめんため。此とがつぶさにかたるべし聞傳ふる人〻は。一
反の念佛をもかならずゑかうしたまふべしと懇にことはり。
さる比此弘經寺に利山和尚と聞へし能化。御住職
の時代に殘雪と申所化。相馬村にてたくはつし。九月下
旬の比をひ。安居の領を背負て。弘經寺さして
帰らるゝを汝が親見すまして。さゝはらよりはしりいで。
かの僧物をはぎとれば。やう〳〵ころも一ゑにて。ふるひ〳〵
逃られしを。たれ〳〵が見たるぞや。此一つの罪にても。三宝
物のぬす人なれば無間の業はまぬかれず。それのみ