そのまゝもとの姿となり。なきさけんで居るも有。その外いろ〳〵の責ともを見侍りしが。思ひいづるも心うく。かたれば胸もふさがりて。さのみはことばに述られず。されども世にも希有とき責めの。かず〳〵多き其中にをかしくもあり。又いとおしくもありしは。ある僧の左右の足にかねのくさりをからげつけ。門ばしらのかさ木に引はたけてつなぎ置き。さかさまにぶらめかし。彼わきかへるねつ鉄を。柄のながき口のあるひしやくにて。後門よりつきこめば。腹の中に煮とをりて。へそのまわりむね喉目口鼻耳。てへんより。くろがねの湯の。ふり〳〵とわき出る時彼僧声をあげて。あらあつやたへがたやかゝる事の有べしと。かねて佛のときおかれしを知ながら。つくりし罪のくやしさよ〳〵と。さけぶ声とひとしく。くされごものおつるやうに。ほね〴〵ふし〴〵つぎめ〳〵皆はなれて。めそ〳〵と地におちつき。なをもへあがる有様。いとふしかりし事共なりと。泪ぐみてぞかたりける。聞居たるものともも倶に涙をながしけり。さて地獄海道を悉く行過ぎ。約束のごとく白き道に出たる時かさね我を脇よりかい出し。是より一人ゆけといゝてうせるが。いつしかわれは爰にふせり居たるに。人ゞ大勢あつまり。念佛回向したまひて。やれ怨灵はさりたるぞとて。たちさわがれし時成とぞ。思ひ出し〳〵。來る日も來る夜も