そでの内よりかいまみてければ。さても〳〵すさましや。有所には人をたはらに入れ。よくくびり置き。つらばかりを出させ。はゞひろく。さきとがりもろはのついたる。柄のながき刀にて。づふ〳〵とつらぬけば。血けふりたつとひとしく。わつとなきさけぶ声。耳の底に通りて。今に其聲あるやうにおぼへたり。又有所には。人をあまたくろがねの臼に入れて。かみひげもそらさまにはへのぼり。牛のつらのごとく成ものどもが。大勢あつまりくろがねのきねにて。ゑい声出してつきはたけば。多くのからだ。手足五体もみぢんに成麦粉のごとくに成を。くろかねの箕にうつし。何か一口ものをいふて簸ければ。そくじに本の人となり。泪をながして居るも有。又有所を見れば。大き成池の中に。くろがねの湯の。くら〳〵とわきかへりたる兩方の山の岩のはなに。縄を引渡し。人のせなかにすりぬか俵ほど成石をせおわせ。其外つゞら椀櫃ふくろ荷桶の類ひまで。つむりにさゝへ肩にかけさせ彼の縄のうへを。いくらも〳〵追わたせば。よろめきながらやう〳〵中ば過るまで渡るかとみれば。ぼたり〳〵と。池の中におつるとひとしく。白くされたるかうべ。つがひばなれたる。しら骨ばかりわきかへり汀によるをまたおそろしきもの共が。鉄のぼうを以て彼ほね共をかきあつめ。何とかいふて一うち二うちうてば