寄合て。只此事のみにて有しか。いとめつらしき事共也さても此度菊が地獄極楽の物かたり。かれこれをといきわめらるれば。あるひは浄土の依正二報。五妙境界の快樂等。あるひは地獄の器界有情。三悪火坑の苦患等。其名をしらず。その事をわきまへずといへども。あるひはなれし村里の器によそへ。あるひは近き寺院の厳にたぐゑて。しどろもどろにかたりしをつたへ聞ば皆經論の実説に契ゑりとぞ。誠成かないんぐわ必然の理り恐るべし信すべし仏種は縁より生とあれば。此聞書あわれ廢悪修善のいんゑん共ならんかしと沙門受苦の所に至ては。恵心先徳往生要集の意を少〻書加へて。筆者〔某申殘壽〕罪障懺悔のため彼の菊が見し所の僧の呵責に因んて野僧が身に取て。破戒無慚。不浄説法。虚受信施放逸邪見の當果をのぶるゆへ恐〻名を記すものなり。仰願は此ものがたり一覧の人〻。彼墮獄の僧の業因いかにとならば。全く是他の事にあらず。筆者が罪科成と見取したまひて性具大悲の方便法施必ずあいまつものなり。
- 累が灵魂再來して菊に取付事
此比累が怨灵あらはれ。因果の理りを示し。与右衛門か恥辱ならびに村中のさわぎなりし所に。ほどなく他