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常磐なる松の木のまの初紅葉いろめづらしと折りてけるかな
明治十三年
雪間月
むら雲のたえま〳〵に夕月夜さすかとみればかつかくれつゝ
月不擇處
萩の戸の露にやどれる月影はしづが垣根もへだてざるらむ
菊
うつろふな霜はおくともわが見つゝ樂む庭のしら菊の花
紅葉淺
一枝はもみぢしにけりむら時雨いそぎてそめよあとのこずゑも
庭上鶴馴
なれ〳〵てへだて心もなかりけりわが九重のにはにすむ鶴
明治十四年
月夜蟲
霧はれて風しづかなる秋のよの月にすみゆく蟲の聲かな
爐邊述懷
埋火をかきおこしつゝつく〴〵と世のありさまを思ふよはかな
竹有佳色
うゑおきし庭のくれ竹よゝをへてかはらぬ色のたのもしきかな