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述懷

いにしへのふみ見るたびに思ふかなおのがをさむる國はいかにと

近きころ作りし宇都の山の洞道をすぎて

をぐるまのをす卷きあげてみわたせば朝日に匂ふ富士の白雪

京都にありて

住みなれし花のみやこの初雪をことしは見むと思ふたのしさ

嵐山の木の葉をあつめて香となしたるをたきて

ふるさとの木々の落葉のたき物を袖にとむるも嬉しかりけり

京都よりかへりける船の中にて

あづまにといそぐ船路の波の上にうれしく見ゆるふじの芝山

明治十二年

新年祝言

あらたまの年もかはりぬ今日よりは民のこゝろやいとゞひらけむ

山月

山の端をはなれもあへず久方の空にみちぬる月のかげかな

海上曉月

湊船あさびらきする波の上にうつるもうすき在明の月

馬場よりのかへるさ月を見て

のる駒の手綱かいくりかへるさにかへりみすれば月ぞいでたる

またの時紅葉のひともと色づきたるが見すぐしがたくおぼえければ