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明治天皇御集 上 明治十一年以前 二

梅のもとに篝をたかせて

白妙のうめもかゞりにてらされて薄紅ににほふよはかな

をりにふれて

おみどもと駒はせゆけば大庭のうめの匂をちらすはる風

浦夏月

波のうへに見るより涼し須磨のうらの松のこのまの夏のよの月

駒をはせてゆきけるに蓮池に月のうつりて見えければ

はちすばの露にやどれる夕月の光すゞしき池のおもかな

秋夜長

秋の夜のながくなるこそたのしけれ見る卷々の數をつくして

霧中鴈

秋山のふもとも見えぬ夕霧にこゑのみわたる鴈のひとつら

庭菊

この秋もところにきくの花うゑてたのしむ九重のには

ある夜侍補の輩をめしあつめて

あきのよの長きにあかずともし火をかゝげて文字をかきすさびつゝ

寒月

ふけゆけばいよ寒し淺茅生の霜にきらめく冬のよの月

人もわれも道を守りてかはらずばこの敷島の國はうごかじ

日本武尊

まつろはぬ熊襲たけるのたけきをもうち平げしいさを雄々しも明治天皇御集 上 明治十一年以前 三