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富士のねもはるかに見えてあしたづのたちまふ空ぞのどけかりける

明治十八年

窓前鶯

まどあけて見るとしらずや呉竹のしげみがなかに鶯のなく

花盛

春風もよきてふくかと思ふまでさかりのどけき花のかげかな

月前花

おぼろよの月も梢にさしいでゝにほひくはゝる花櫻かな

遠山花

春霞たなびく山はとほけれど雲ともみえぬ花の色かな

夕山吹

墨染のゆふべをぐらき池水になほ影みゆる山吹のはな

をりにふれて

ゆふだちのはれゆく空にたつ虹をたちいでゝ見ぬ人なかりけり

朝顏

しばがきにまとひあまりて萩の葉の末にもさけり朝顏の花

あるをりに船中見紅葉といふことを

紅葉よりあかく見ゆるはふねのうちにつらなる臣のこゝろなりけり

風後落葉

ひとしきりさそひし風はしづまりておのがまにちる紅葉かな

庭落葉