Page:明治天皇御集.pdf/14

提供:Wikisource
このページはまだ校正されていません

ひさかたの空にありながらわたつみの底まで照らす秋の夜の月

月前遠望

秋の夜の月の光にしら雲のあはも上總もみえわたるかな

馬場にて月を見て

駒ならす庭さやかなる月影にまがきの菊の花もみえつゝ

遠山霧

朝日かげのぼるきしきはみえながらなほ霧ふかしをちの山のは

河上霧

信濃なる河中島のあさ霧に昔の秋のおもかげぞたつ

毎秋見菊

秋ごとに匂ふしら菊もろ人と共にみるこそたのしかりけれ

池邊紅葉

みる人のかげと共にも池水の底にうつれる岸のもみぢ葉

月前殘菊

おく霜にうつろひそめし白菊をもとの色にもかへす月かな

庭落葉

風ふけばおつるこのはに朝なはらふ庭ともみえぬころかな

島冬月

すみなれて誰かみるらむ伊豆の海のおきの小島の冬のよの月

月照山雪

空はれて照りたる月に遠山の雪のひかりも見ゆるよはかな

晴天鶴