Page:明治天皇御集.pdf/13

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雲はれしこよひの月は玉だれのうちよりみるも涼しかりけり

夏のゆふべ月をまちて

あまつかぜこの村雲をふきはらへ涼しき月のかげもみるべく

夏の夜新殿の月を見て

たかどのゝ軒にさしいる月みれば風をなきよはも涼しかりけり

夏夜待風

はしゐして風をまてどもくれたけの枝もうごかぬ夏のよはかな

夏旅

旅衣あさたつ袖をふきかへす松風すゞし浮島が原

月前露

雲もなく霧もかゝらぬ月かげを芝生の露にやどしてぞみる

庭前蟲

ゆふされば庭の草葉も露おきてはなたぬむしの聲ぞきこゆる

野秋風

むさし野の千ぐさの花はちりすぎてすゝきにのこる秋の風かな

白川の關うちこえて見しかげもおもひぞいづるあきの夜の月

月前風

あまつ風ふきのまに雲はれて照りこそまされ秋の夜のつき

瀧邊月

いはまよりおちくる瀧の音すみて山かぜ寒しあきのよのつき

海上月