Page:明治天皇御集.pdf/11

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ときのまに千里かけらむ駒もがな糺の森にすゞみてをこむ

萩藏水

水の上に咲きなびきたり萩が花うつれる影も見えぬばかりに

月前露

くれわたる庭の芝生におく露のひかり見えゆく夕月のかげ

ふかゝらぬ庭の草にも蟲のねのきこゆる秋となりにけるかな

朝蟲

朝づく日つゆにかがやく草村にのこりてもなく蟲のこゑかな

車中聞蟲

をぐるまのうちよりきけば蟲の聲をわけゆくこゝちこそすれ

雨後月

むらさめの雫もいまだおちやまぬ松のひまより月ぞさしくる

濱月

白波のよせてはかへる長濱のまさごぢとほく照らす月かな

雲間雁

なきわたる鴈のつばさにかゝりけり月まつ山のゆふぐれのくも

霧埋山

ふじのねも見えずなりけりいづくまでたちのぼるらむ秋の夕ぎり

原霧

子日せし小松が原も夕霧のたなびく秋はさびしかりけり

菊契多秋