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河水久澄

昔よりながれたえせぬ五十鈴川なほ萬代もすまむとぞ思ふ

明治十六年

このごろはかきねの柳のきの梅みな鶯のやどゝなりぬる

折梅

さかりなる庭のうめがえたをらせて人と共にもかざす今日かな

四月二十三日小金井に遠乘しける時花のもとにて

春風のふきのまに雪とちる櫻の花のおもしろきかな

首夏水

夏あさき山下水をきてみればきのふの春の花ぞながるゝ

山新樹

薄くこくみどりかさなる夏山の若葉のいろのなつかしきかな

垣卯花

てすさびにさしゝ垣根の卯花もこの夏よりぞ咲きそめにける

夏草深

夏草のしげりて岡のべの小松もわかずなりにけるかな

夕立晴

雲は晴れ風はのこりてゆふだちの過ぎしあとこそ涼しかりけれ

をりにふれて

庭のおもは若葉しげりてすゞかけの花咲く頃となりにけるかな