Page:成吉思汗実録.pdf/135

提供:Wikisource
このページはまだ校正されていません

は​斡難︀ 河​​オナン ガハ​を​指​​サ​し​動​​ウゴ​きけり。​札木合​​ヂヤムカ​は、​己​​オノレ​を​君​​キミ​に​戴​​イタヾ​きたる​民​​タミ​を​虜︀​​トラ​ふると、​額兒古捏 河​​エルグネ ガハ​に​沿​​シタガ​ひ​札木合​​ヂヤムカ​は​回​​カヘ​り​動​​ウゴ​きけり。​彼等​​カレラ​をかく​潰​​ツイ​やして、​王罕​​ワンカン​は、​額兒古捏 河​​エルグネ ガハ​に​沿​​シタガ​ひ​札木合​​ヂヤムカ​を​追​​オ​ひたり。(この時、札木合は、蓋 王罕に降れり。

​成吉思 汗​​チンギス カン​の​泰赤兀惕​​タイチウト​ 追撃

​成吉思 合罕​​チンギス カガン​は、​斡難︀ 河​​オナン ガハ​の​處​​トコロ​に​泰赤兀惕​​タイチウト​の​阿兀出 巴阿禿兒​​アウチユ バアトル​を​追​​オ​ひたり。​阿兀出 巴阿禿兒​​アウチユ バアトル​は、その​部落​​ブラク​の​處​​トコロ​に​到​​イタ​ると、​部眾​​ブシウ​を​急​​イソ​がし​動​​ウゴ​かして、​阿兀出 巴阿禿兒​​アウチユ バアトル​、​豁敦 斡兒長​​ゴドン オルチヤン​[​等​​ラ​の]​泰赤兀惕​​タイチウト​は、​斡難︀ 河​​オナン ガハ​のかなたの​邊​​ホトリ​にあまたの​楯​​タテ​(蒙語​禿剌思​​トラス​、明譯 方牌)もてる​軍士​​イクサビト​を​整​​トヽノ​へて、​戰​​タヽカ​はんとて​整​​トヽノ​へて​立​​タ​ちけり。​成吉思 合罕​​チンギス カガン​ ​到​​イタ​ると、​泰赤兀惕​​タイチウト​と​戰​​タヽカ​へり。​頗​​スコブ​る​返​​カヘ​す​返​​カヘ​す​戰​​タヽカ​ひて、​晩​​クレ​になられて、その​戰​​タヽカ​へる​地​​トコロ​に​抗​​ムカ​ひ合ひて​宿​​ヤド​れり。​部眾​​ブシウ​も​急​​イソ​ぎて​來​​キ​て​又​​マタ​そこに​軍士​​イクサビト​どもと​一​​ヒト​つに​團​​ダン​をなして​宿​​ダン​り​合​​ア​へり。


§145(04:38:08)白鳥庫吉訳『音訳蒙文元朝秘史』(東洋文庫,1943年) Open original book in Wikimedia


​成吉思 汗​​チンギス カン​の重傷を​者︀勒篾​​ヂエルメ​の看護

 ​成吉思 合罕​​チンギス カガン​は、その​戰​​タヽカヒ​ひの​中​​ナカ​に​頸脈​​ケイミヤク​を​傷​​キズツ​けられて、​血​​チ​を​止​​トヾ​むれども​止​​トヾ​まらず、​惱​​ナヤ​まさるゝ​時​​トキ​、​日​​ヒ​ ​落​​オ​ちて、すぐ​其處​​ソコ​に​抗​​ムカ​ひ​合​​ア​ひて​下馬​​ゲバ​して、​塞​​フサ​がれる​血​​チ​を​者︀勒篾​​ヂエルメ​ ​吮​​ス​ひ​吮​​ス​ひ​口​​クチ​を​血​​チ​まみれにして、​者︀勒篾​​ヂエルメ​は​他​​ホカ​の​人​​ヒト​に​賴​​タヨ​らず、​守​​マモ​り​合​​ア​ひて​居​​ヰ​て​夜半​​ヨハ​になるまで​塞​​フサ​がれる​血​​チ​を​口​​クチ​に​滿​​ミ​たし​嚥​​ノ​みては​吐​​ハ​きて、​夜半​​ヨハ​を​過​​ス​ぐれば、​成吉思 合罕​​チンギス カガン​ ​心​​コヽロ​ ​醒​​サ​めて​言​​イ​はく「​血​​チ​ ​乾​​カワ​きて​了​​シマ​へり。​喉​​ノド​ ​渇​​カワ​けり、​我​​ワレ​」と​云​​イ​へり。

裸盜人

そこより​者︀勒篾​​ヂエルメ​は、​帽​​バウ​ ​靴​​クツ​ ​上衣​​ウハギ​ ​下衣​​シタギ​ ​都︀​​スベ​てを​脫​​ヌ​ぎて、​只​​タヾ​ ​褌​​フドシ​ある