Page:小倉進平『南部朝鮮の方言』.djvu/217

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  • の轉訛である。但し今日は山地にのみ用ひられる。
  • せんさん。「せんさき」又「せんさく」ともいひ、防波堤のことである。これ亦朝鮮 語「船滄」(션창)の轉訛であらうと思はれる。「集書」には「船滄內法」として「西よ り東まで幅七拾八間半御一番所前波際より向船滄まで北より南まで堅百二十二間上の船滄、船滄浦口三十 四間四尺」などあり、又「和交覺書」なる書中には、このごろ舟を繫ぎ難しと云を以て改 めてセンサウを築く」・「且貴州の懇望により改めてセンサウを築く」・「是によりて其後セン サウを築く」などあつて、其の中の一箇所には朱筆で「センサン」と假名を附し、又 他の二箇所には各々朱筆で「フナヤ」、「フネツナギ所」と註してある。「センサン」は 朝鮮語船滄(션창)の轉記であることは明かである。
  • 使。德川將軍家又は對州宗家から送る特送船の總稱であるが、對馬邊では其の 朝鮮音を訛つて「そさ」といひ、日本語としても可なり廣く用ひられたらしい。
  • とぐ。「集書」其の他の書にも此の語が散見する。朝鮮字音の轉訛である。
  • ねんがみ。「令監」(령감)の訛りであつて、今日でも朝鮮人は內地人を指して「ね