Page:小倉進平『南部朝鮮の方言』.djvu/214

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  1. 多く用ひられる。命令形は多くは「讀め」・「受けい」・「落ちい」・「い」・「い」・「 い」の如くいふが、「受けろ」・「ろ」の如く「ろ」を附する所も少くない。又或地方で は禁止的命令に「行ちや出來ん」・「見ちや出來ん」の如き形を有して居る。

  2. 助動詞 使役の助動詞の未來はすべて「しょう」(書かしよう。爲(さ)しよう)、終止・連體形は「す る」(書かする。爲(さ)する)が多く、受身及び可能の助動詞の未來はすべて「りょう」書かりよう。爲(さ)りよう) 終止・連體形には「る」・「るる」の兩形が最も多い。指定の助動詞は「ぢや」で、時 の助動詞中過去の否定には「ざった」(行かざつた。見ざつた)を用ひる。又尊敬の助動詞「る」・「ら る」の未來はすべて「りょう」終止・連體形は「る」・「るる」とも多く用ひられる。 現在進行を敬語にしたものには「をらる」(又、よらる)(行きをらる。行きをらしやる)を用ひる。但 し嚴原其の他大きい港などの言葉は著しく近代的色彩を帶びて居ることは注意す べきことである。

以上略述した語法上の特質を瞥見すると、誰しも對馬方言の九州北部方言と著しい 類似を有することを知り得るであらう。