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 (小亞細亞横斷旅行談)二(2)

と大凡此の邊の所に黒海に臨んでトレビゾンドと云ふ港があります、大凡此の線の以西を通稱アナトリアと云つて居るのであります、

今日土耳其政府に於きまして此のアナドールを幾つかの州に分つて居ります、其の名稱は第一ダーダネルス海峡の邉をビガーと云ひ、其の南多島海に面する地方をアイヂンと稱へて居ります、それからマルマラ海の南の邊から深く内地に入り込んでフダベンヂギアル州があり、マルマラ海の東にイズミツド州があります。イズミツドの東黒海に沿ふた地方をカスタムニ州と云ひ.その南の高地をアンゴラ州と稱へ、それからその又南の高地から一部地十海に出て居る地方をコニア州と云ひ、其の東南の隅に當て地中海の東北隅に臨む地方をアダナ州と云ひ、アンゴラ、コニアの東の方に當るのをシワス州と稱して居ります、シワスの北の一體黒海に面する部分がトレゼゾンド州である、先づ是だけの州を總稱して小亜細亜或はアナドールと名けて居るものと解繹して差支ありません、

小亜細亜の地形は中央の部分が非常な高原で其の高さは平均海抜三千尺を出入して居ります、西北南の三方に向つて急に斜面が海まで延びて、殊に南の斜面はタウルス山脈に由て明瞭に書成されて居りまず、タウルス山脈は殆と地中海に竝行して走り東はアルメニアの高地に行て次第に消えて仕舞ふ。此の山脈は小亜細亜中で一番に目立つ大きな山脈で、地理上にも歴史上にも最も重要なものゝ一つてあります、其最高峰ブルガル岳は直立二萬二千尺に及びます、但し小亜細亜第一の高山はカイザリエの南方エルジエス岳で直立一万四千尺あります、それから北と西は高原と低