Page:尋常小學國史 上巻 1934.pdf/7

提供:Wikisource
このページはまだ校正されていません

たので、大神は、とうとう天の岩屋に入り、岩戸を立てて御身をおかくしになつてしまつた。 大勢の神々は、たいそう御心配になつた。何とかして大神をお出し申さうと、岩戸の外に集つて、いろいろ御相談の上 、八坂瓊曲玉や八咫鏡などを榊の枝にかけて、神楽をおはじめになつた。その時、天鈿女命のまひの様子がいかにもをかしかつたので、神々はどつとお笑ひになつた。大神は何事が起つたかと、ふしぎにお思ひになり、すこしばかり岩戸をお開きになつた。すぐさま、神々は榊をおさし出しになつた。大神の御すがたが、その枝にかけた鏡にうつつた。大神は、ますますふしぎにお思ひなり、少し戸から出て、これを御らんにならうとした。すると、そばにかくれていた田力男命が、大神の御手を取つて、岩屋の中からお出し申し上げた。神々はうれしさのあまり、思はず聲をあげて、およろこびになつた。素戔嗚尊は、神々に追はれて、出雲におくだりになつた。さうして、簸川の川上で、八岐の大蛇をずたずたに斬つて、これまで苦しめられてゐた人々をおすくひになつたが、この時、大蛇の尾から一ふりの劔を得、これはたふとい劔であるとて、大神におさし上げになつた。これを天叢雲劔と申しあげる。素戔嗚尊は御子に、大国主命といふ御方があつた。命は、