高等女学校規程 (明治28年文部省令第1号)

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文部省令第一号

高等女学校規程ヲ定ムルコト左ノ如シ

明治二十八年一月二十九日文部大臣 侯爵西園寺公望

高等女学校規程

第一条 高等女学校ノ学科目ハ修身、国語、外国語、歴史、地理、数学、理科、家事、裁縫、習字、図画、音楽、体操トス又随意科目トシテ教育、漢文、手芸ノ一科目若クハ数科目ヲ加フルコトヲ得

外国語、図画、音楽ハ府県立学校ニ就キテハ文部大臣ノ許可ヲ受ケ其ノ他ノ学校ニ就キテハ地方長官ノ許可ヲ受ケテ之ヲ欠クコトヲ得又生徒ノ志望ニ依リ之ヲ課セサルコトヲ得

第二条 高等女学校ノ修業年限ハ六箇年トス但土地ノ情況ニ依リ一箇年ヲ伸縮スルコトヲ得

第三条 高等女学校ノ第一年級ニ入ルヘキ者ハ修業年限四箇年ノ尋常小学校ノ卒業生若クハ之ト同等ノ学力ヲ有スル者トス

第四条 入学生徒ノ資格ヲ高ムルニ従ヒ第二条ノ修業年限ヲ三箇年マテニ短縮スルコトヲ得

第五条 教授日数ハ毎年大約四十週教授時数ハ毎週大約三十時トス

第六条 高等女学校ノ学科目ノ程度ハ左ノ如シ

一 修身
教育ニ関スル 勅語ノ旨趣ニ基キテ人道実践ノ方法ヲ授ケ兼ネテ作法ヲ授ク
修身ヲ授クルニハ躬行実践ヲ旨トシ務メテ貞淑ノ徳ヲ養ヒ起居言語其ノ宜キニ適セシメンコトヲ要ス

二 国語
初メハ普通ノ漢字交リ文ヲ講読セシメ漸ク中古以降ノ平易ニシテ雅馴ナル文章及歌ニ及ホシ又日用書類記事文等ヲ作ラシメ兼ネテ文法ノ大要ヲ授ク
国語ヲ授クルニハ発音及句読ニ注意シ読方話方ニ習熟セシメ文章ヲ作ラシムルニハ簡明著実ニシテ達意ヲ旨トシ文題ハ務メテ実用ニ適スルモノヲ撰ヒ文法ハ講読作文教授ノ際其ノ他便宜ノ場合ニ於テ之ヲ授クヘシ

三 外国語
読方訳解習字書取会話文法及作文ヲ授ケ普通ノ文章ヲ読ミ及簡易ナル会話及通信等ヲ為スコトヲ得シムヘシ
外国語ヲ授クルニハ常ニ其ノ発音ヲ正シクシ及文法ニ注意セシメンコトヲ要ス

四 歴史
本邦建国ノ体制 皇統ノ無窮 歴代天皇ノ 盛業忠孝貞淑ノ事蹟学術技芸ノ隆替風俗ノ変遷等ニ関スル事項ヲ授ケ兼ネテ外国歴史ノ大要ヲ授ク
歴史ヲ授クルニハ我国体ヲ明カニシテ以テ国民タル志操ヲ養成センコトヲ務ムヘシ

五 地理
郷土ノ地理ヨリ始メ漸ク之ヲ拡メテ畿内八道ノ地理及本邦ト重要ノ関係アル諸外国ノ地理ヲ授ケ傍ラ地文ノ大要ヲ附説ス
地理ヲ授クルニハ人生ニ適切ナル事項ヲ知ラシムルヲ旨トシ地文ニ於テハ成ルヘク本邦ノ事実ニ依ルヘシ

六 数学
筆算ニ依リテ整数分数小数ノ加減乗除並比例百分算ヲ授ケ兼ネテ珠算ニ依リテ加減乗除ヲ授ク又開平開立ノ一端及幾何ノ初歩ヲ授クルコトヲ得
算術ヲ授クルニハ運算ノ方法及理由ヲ理会セシメ日常適切ノ問題ニ就キテ其ノ応用ニ慣レシメ兼ネテ暗算速算ニ習熟セシム又幾何ヲ授クル際ニハ兼ネテ求積法ノ一端ヲ知ラシムヘシ

七 理科
学校所在ノ地方ニ於ケル天然物及現象ニ就キテ端緒ヲ開キ漸ク通常ノ植物動物鉱物ノ性質効用等ヲ授ケ又物理上化学上重要ナル事項ヲ授ケ兼ネテ人身生理及衛生ノ大要ヲ授ク
理科ヲ授クルニハ実地ノ観察ニ基キ若クハ標本模型図画及実験等ニ依リテ正確ナル知識ヲ得シメ日常ノ生活及生業上ニ資セシメンコトニ注意スヘシ

八 家事
衣食住家計簿記家事衛生育児其ノ他一家ノ整理経済等ニ関スル事項ヲ授ク
家事ヲ授クルニハ成ルヘク実習セシメ務メテ実用ニ適セシメンコトニ注意スヘシ

九 裁縫
運針法縫方裁方繕方ヲ授ク
裁縫ヲ授クルニハ実用ヲ旨トシ其ノ技能ニ熟達セシムヘシ

十 習字
楷書行書草書及仮名ヲ授ク
習字ヲ授クルニハ字形端正ニシテ運筆渋滞セサランコトヲ旨トシ且普通文書ノ書方ニ習熟セシムヘシ

十一 図画
実物模型手本ニ就キテ自在画ヲ授ク
図画ヲ授クルニハ位置形状濃淡等其ノ宜キヲ得シムルヲ旨トシ時々自己ノ意匠ヲ用ヒテ図案ヲ作ラシメ又便宜彩色ノ法ヲ授クヘシ

十二 音楽
単音唱歌及複音唱歌ヲ授ク又便宜箏曲等ヲ授ク
音楽ヲ授クルニハ歌詞楽譜ノ高雅純正ニシテ教育上裨益アルモノニ就キテ練習セシムヘシ

十三 体操
普通体操若クハ遊戯ヲ授ク
体操ヲ授クルニハ精神ヲ爽快ニシ身体ヲ健康ナラシメンコトヲ務ムヘシ

十四 教育
教育ノ原則教授ノ方法等ヲ授ク

十五 漢文
経史記伝等ノ内平易ニシテ雅馴ナル文章ヲ講読セシム

十六 手芸
土地ノ情況ニ依リ女子ニ適切ナル手芸ヲ授ク

第七条 高等女学校ニ於テハ生徒卒業ノ後尚二箇年以内其ノ学業ヲ補習セシムルコトヲ得

第八条 中学校令第十四条第二項ニ依リ高等女学校ニ技芸専修科ヲ置クトキハ其ノ学科ハ第一条第一項ノ学科目中一科目若クハ数科目ヲ欠キ抜芸ニ属スル某科目ヲ加フルモノトス但修身、国語、裁縫ハ之ヲ欠クコトヲ得ス

第九条 第四条ニ依リ修業年限ヲ短縮セントスルトキハ文部大臣ノ許可ヲ受クヘシ但郡市町村立又ハ私立学校ニ就キテハ地方長官ヲ経由スヘシ

第十条 高等小学校正教員免許状ヲ有スル者ハ高等女学校ニ於テ上ノ三学年ノ学級ヲ除キ其ノ他ノ学級ノ教員タルコトヲ得

第十一条 本令ニ依ラサル学校ハ高等女学校ト称スルコトヲ得ス

第十二条 既設ノ高等女学校ハ明治二十八年八月三十一日マテ本令ニ依ラサルコトヲ得


○高等女学校規程ニ関スル説明 高等女学校規程ニ関スル説明ハ左ノ如シ(文部省)

一高等女学校ハ勅令(中学校令第十四条)ヲ以テ女子ニ須要ナル高等ノ普通教育ヲ施ス所ニシテ中学校ノ種類タルコトニ定メラレタレトモ爾来別段ノ規程ヲ定ムルコトナク自然ノ発達ニ任シテ今日ニ至レリ今ヤ高等小学校ヲ卒業シテ尚ホ高等ノ教育ヲ受ケンコトヲ希望スル女子年々其数ヲ増シ高等女学校ノ需要益〻多キヲ加ヘタレハ今ニ於テ之カ制度ヲ定ムルノ必要ヲ認メ本規程ヲ発セリ

一外国語、図画、音楽ハ本体ヲ必修科トシ而シテ監督官庁ノ許可ヲ得テ随意科ト為スコトヲ許セリ是レ生徒ノ負担ヲ軽減シ精神ノ過労ヲ避ケシムルノ必要ヲ認ムルノミナラス土地ノ情況及家庭ノ如何ニ依リ取捨ヲ許スノ適切ナルヲ認ムルニ依ル

一随意科目中ニ教育ヲ置キタルハ生徒卒業ノ後他日家庭教育ノ任ヲ尽スニ当リ其効益ノ顕著ナルヲ信スルノミナラス或ハ後日教員タランコトヲ欲スル者アルヘキヲ以テ兼テ其便ヲ図リ本科修業中又ハ卒業後補習ノ際之ヲ課スルコトヲ得シメントスルナリ

一修業年限ニ一箇年ノ伸縮ヲ許シタルハ女子ノ高等普通教育ニ関シテハ之ヲ同型ニ律スルノ必要ナキヲ以テ土地ノ情況ニ依リ其宜シキヲ制セシメントスルニ依ル又入学生徒ノ資格ヲ高ムルニ随ヒ修業年限ヲ短縮スルコトヲ得シメタルハ高等女学校ニ於テ必シモ下級生ヨリ生徒ヲ養成スルノ必要ヲ認メス経済上ノ便益ヲ与ヘテ其設立ヲ容易ナラシメントスルニ依ル

一技芸専修科ノ学科目ヲ一定セサルハ土地ノ情況ニ依リ最モ適切ナルモノヲ撰択セシムルノ便ヲ図リタルナリ

一教科用図書ノ採用ニ関シ別ニ制限ヲ置カサルハ高等女学校用教科書トシテ編著セル図書尚ホ乏シキヲ以テ適宜撰択スルヲ得シメタルナリ

一必修科ノ学科課程ニ関シ其標準ヲ示スコト左表ノ如シ但シ毎週教授時数ヲ第五条ノ制限数ニ満タシメサルハ随意科目ヲ加フルノ余地ヲ存セントスルニ依ル

(注意)左表合計ノ欄墨書ノ分ハ各生徒ノ必ス修ムヘキモノナレハ外国語、図画、音楽及教育、漢文、手芸ハ此時間ノ外ニ於テ課スルヲ要ス又朱書ヲ以テ示シタル学科目ハ必シモ之ヲ課スルヲ要セサルモノナレハ全体ノ情況ニ依リ其時間ヲ増減スルノ必要アルヘシ
第一年第二年ハ生徒ノ年齢尚ホ幼ナルニ依リ又第五年第六年ハ随意科等ヲ修メ得ルノ余地ヲ存スルノ必要アルヲ以テ必修科ノ時間ハ第三年第四年ニ於テ之ヲ増加スルコトヽセリ

(△印ハ朱書)



毎週
時数
第一学年 毎週
時数
第二学年 毎週
時数
第三学年 毎週
時数
第四学年 毎週
時数
第五学年 毎週
時数
第六学年
人倫道徳ノ要


外国





( 習字ヲ
除ク
)
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本邦地理 地文大要
外国地理
外国地理
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筆算
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筆算

筆算
筆算
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複音唱
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二一
二一
二三
二三
二一
二一

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