鉄道唱歌/山形県鉄道唱歌
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< 鉄道唱歌
東 の都 後 に見 て北 へ進 めば忍 草 忍 ぶ文字摺 る福嶋 の驛 にぞ早 く着 にける- こゝより
先 は二股 の右 と左 に分 るれど折 目 正 しきひだ衣 いざ左 より進 みなん 半 田 銀山右 に見 て眺 もよしや庭坂 の登 り登 れば名 も著 き板 谷 峠 のトンネルは見上 ぐる山 の數々 を十重 に二十重 に切 りぬきて車 の路 の通 ふこそ開 け行 く世 の惠 なれ暗 路 を辿 る心 地 して關 根 に進 み行 く時 は黄 金白玉置賜 の平 野 間近 く見 えにけり山 の麓 は名 もしるき米澤驛 の賑 はしく桑 摘 む兒等 の赤 襷 絹 の小 機 の音高 し學 の道 の彌開 け殖 産工業 盛 にて竈 の烟賑 ふは鷹山 公 の蔭 とかや東 の方 の左氏 泉 に佐 藤繼信忠信 の其 子 の爲 に母上 の跡 吊 ひし庵 あり糠 の目 驛 を打 過 ぎて誰 をか待 ちし松川 の橋 をとどろと踏 み鳴 らし急 ぎに急 ぎ行 く時 は赤 根 さす日 の赤 湯 驛 憂 き節繁 き憂 き世 をも旅 のつかれも束 の間 に浴 みて心 清々 し山 道 をたどり打 行 けば最 上 の平 野 遙 々 と一 目 の下 に見 渡 され あな心 地 よの景色 やな浮 世 の垢 を拂 へとや又 も出 湯 の上 の山 老 も若 きも打 ち群 れて浴 みる人 の山 をなす藏 王 の山 を右 に見 て須 川 の鐵橋打渡 り遙 に聞 ゆ喇 叭 の聲 是 ぞ山形 の都 なる民 の竈 の賑 はしく甍 並 ぶる軒繁 し車 の跡 の縱横 に出 入 る人 の眞砂 なす霞 の城 はあをによし奈良 の都 の其 昔 造 り創 めし城 なりき月 日 は移 り物變 り嵐 こと問 ひ木 の葉 ふり淋 しき月 は宿 かれど今 ぞ三十 二 聯隊 益 荒 男 子 の營所 なる東 の方 を眺 むれば昔 ながらの千 歳山 松 の緑 の色 そへて其 名 變 らぬ古 跡哉 實方 朝 臣 の慕 ひけむ阿古耶 の松 の木 がくれて忍 び/\にぬる袖 の中 將 姫 の果 の跡 馬見 が崎川打渡 り慈 覺大 師 の開 きけむ山寺山 を東 に見 天童驛 に來 て見 れば舞鶴山 の松 林 茂 り茂 りし其中 に信長公 の靈 の鎭 まりますぞ慕 はしき若 木 原 を打 行 けば限 りもあらぬ松原 の木々 の梢 に風 吹 きて松 葉 音 づる聲凉 し神町通 り楯岡 の美々 しく見 ゆる屋 棟 をば顧 みしつゝ大石 田 村 の驛 に着 にけり上 れば下 る稻舟 と詠 みし昔 の忍 ばるゝ最 上 の川 は此村 に沿 ひつゝ流 る日 の本 の三急流 の一 にて矢 を射 よりも猶早 し水 はあやなす常磐 に色 は藍 なす堅磐 に- かの
中 將 實方 の澤潟摺 の衣 着 と石 に刻 みて詠 じけむ尾 花 が里 を右 に見 て 猿羽根 の峠 越 え行 けば蔦 や葛 の葉 色 見 えて旅 の哀 は夕暮 の裏 見 る毎 にはや深 し出羽 で莊内 と謠 ひけむ田 川 邊 の景 色 をば尋 ねん人 は舟形 を下 りて西 へと進 むべし舟形川 を打渡 り並 木 の中 を通 りつゝ北 へ進 めば綾織 の其 名 も高 き新 莊 驛 指首 の河 邊 は古 の面影 とめて今 も猶 掬 ばむ人 は鏡 なす氷 の清 水口寒 し金山驛 を過 ぎ行 けば上 れば下 る坂 路 にて及位 の北 の杉 峠 是 ぞ羽後 との境 なる