通俗正教教話/信経/第十か條
(十)第十か條
[編集]- 『
我 認 む、一 の洗礼 を以 て罪 の赦 を得 るを』
- 『
問
- 答
其 は洗礼 及 び其 他 の機 密 は信仰 を表 す一 の印 で御座 いますから信仰 を述 ぶる時 には是非 共 必要 なものなので御座 います。
問
- 答
機 密 と申 しまするのは教会 で行 ひまする一 つの儀 式 で御座 いまして、此 儀 式 によって私 共 は神様 のお惠 を受 くる事 が出来 るので御座 います、其様 な機 密 は皆 で七 つ有 ります茲 に数 へて見 ませうなれば(一)洗礼 機 密 (二)傅 膏 機 密 (三)聖体 機 密 (四)痛悔 機 密 (五)神品 機 密 (六)婚配 機 密 (七)聖 傅 機 密
問
- 答
異 って居 るので御座 います即 ち。 - 第一、
洗礼 機 密 によって人々 に神様 から賜 はるお惠 は霊魂 の『生 れ更 り』で御座 います。 - 第二、
傅 膏 機 密 によって賜 はるお惠 は、霊魂 の堅固 と成長 で御座 います。 - 第三、
聖体 機 密 によって賜 はるお惠 は『霊魂 の培養 』で御座 います。 - 第四、
痛悔 機 密 によって人々に賜 はるお惠 は『霊魂 の疾 の医 』他 の言 を以 て申 しますれば罪 のお赦 で御座 います。 - 第五、
神品 機 密 は主教 とか司祭 とか輔祭 とかになる人 が、其位 に就 く時 に受 けまする機 密 で御座 いますので普 通 の信者 には余 り関係 は御座 いませぬが、此 機 密 によって神様 から受 くるお惠 は、『神様 の道 を人 に傳 へ機 密 を人 に授 け、人 の霊 を生 れ更 らしめ其 霊 を養 って行 く力 』で御座 います。 - 第六、
婚配 機 密 によって神様 から賜 るお惠 は『夫 婦 の間 が睦 じく、子 供 も多 く、其 子 供 を正 しく教育 して行 くことの力 』で御座 います。 - 第七、
聖 傅 機 密 によって神様 から賜 るお惠 は『霊魂 の疾 の医 』及 び『人 の肉体 の疾 の医癒 』で御座 います。
問
- 答
其 は信経 を作 りまする當 時 、洗礼 の事 に就 きまして種々 な議 論 が出来 まして、或者 が切 りに教 に背 いた者 を再 び教会 に受 くる時 には今一 度 洗礼 をしなほさなければならぬなどと説 きまして信者 を騒 がせましたので、洗礼 は一 度 より外 なすべきものでないと謂 ふ事 を説 く為 に特 に信経 の内 に洗礼 機 密 を載 せたので御座 います。
- (一)
洗礼 機 密
- (一)
問
- 答
洗礼 機 密 はハリストスの信者 となりまする時 に受 けまする一番 初 の機 密 で御座 いまして、聖 にした水 の内 に私 共 の身体 を父 と子 と聖神 の名 によって三 度 沈 めるので御座 います、此時 洗礼 を受 けた人 の霊 は凡 て今迄 持 って居 た罪 を贖 はれて、全 く生 れ更 り、ハリストスの門 徒 たる資 格 を得 るので御座 います、実 に私 共 は此 機 密 を受 けて生 れ更 らなかったならば神様 の子 となることが出来 ないので御座 います、聖書 に申 して御座 いますには『人 若 し水 及 び神 より生 れ更 れずば神 の国 に入 るを得 ず』〔イオアン三の五〕
問
- 答
此 機 密 の起因 は先 駆 イオアンが悔改 の洗礼 を人々 に授 けたのが抑 の初 で御座 いまして、其後 先 駆 イオアンから主 イイススは躬 ら洗礼 をお受 けになって人々 に其 模範 をお残 しになり、而 して遂 に自 ら天 にお昇 りになる前 に門 徒 に『爾 等 往 いて萬民 に教 を傳 へて、彼 等 に父 と子 と聖神 との名 に因 りて洗 を授 けよ』〔馬太二八の一九〕と仰 せられ、公然 と洗礼 機 密 を行 ふことをお命 じになったので御座 います。
問
- 答
其 は父 と子 と聖神 の名 に由 て洗礼 を受 ける人 の身 を三 度 水 の内 に沈 めることで御座 います。
問
- 答
其 は第一 に己 が犯 した罪 を深 く悔 ひ改 め、第 二 にはイイスス ハリストスを深 く信 ずることで御座 います、聖書 に申 して御座 いますには『信 じて洗 を受 くる者 は救 はれん』〔馬可一六の一六〕又 『悔改 せよ、而 して各 罪 の赦 の為 にイイスス ハリストスの名 に因 って洗 を受 くべし然 らば聖神 の賜 を受 けん』〔行実二の三八〕
問
- 答
其 う謂 ふ小児 に洗礼 を授 けますには其 小児 の父母 若 くは其 代 父母 〔之は教会で洗礼の時に必ず立てる洗礼を受くる人を信仰に導く名 親 で御座います〕の信仰 に依 頼 しますので、其 父母 たり代 父母 たる人 は其 で御座 いますから其 小児 の成人 したる時 其者 を信仰 に導 く義務 が有 るので御座 います。
問
- 答
基 く所 があるので御座 います、未 だイイスス ハリストスのお生 れにならぬ前 の旧約 時 代 に於 きましてはエウレイ民 は小児 が生 れますと八 日目 に必 ず割礼 と申 しまする儀 式 を行 って其 小児 を神様 のお選 びになった人民 の数 に加 へたもので御座 います、所 が其 旧約 教会 の割礼 は丁度 新約 教会 の洗礼 に當 りまするので御座 いますから、教会 で小児 に洗礼 を授 けますることは全 く昔 からの習慣 に基 いたもので御座 います。 新約 教会 の洗礼 が旧約 教会 の割礼 と同 じものであると謂 ふことに就 きましては聖 使徒 パエルも其書 の内 に記 して居 ります『爾 等 は手 を以 てせざる割礼 を受 けたり、即 ち肉身 の罪 の体 を脱 ぐ所 のハリストスの割礼 なり、洗礼 を以 て爾 等 は彼 と偕 に葬 られて亦 彼 を死 より復活 せしめし神 の力 を信 ずるを以 て彼 と偕 に復活 せり。〔コロサイ二の一一、一二〕
問
- 答
其 は前 にも申 しました通 り、洗礼 を受 くる人 に代 って其 信仰 を教会 の前 に保證 し其 から洗礼 の後 に其 若 き信者 の信仰 を固 むる為 なので御座 います。
問
- 答
悪 魔 と申 しまして一番 初 の人 アダムが罪 を犯 しました以来 人間 に常 に近 づいて居 て人々 を自分 の奴隷 の様 に使 って居 る悪 い霊 を詛 ふので御座 います、私 共 は信者 になって洗礼 を受 けまする前迄 は実 に其様 な悪 い者 の自由 になって居 たので御座 います、聖書 に申 して御座 いますには『爾 等 曩 に(未 だ主の門徒とならざる前には)斯 の世 の風習 に従 ひ空気 中 の権 ある君 、今 悖 逆 の子 の中 に行為 する神 の旨 に従 へり』〔エフェス二の二〕
問
- 答
信仰 と祈 祷 を以 てイイスス ハリストスの名 を呼 んで悪 魔 を自分 より追 ひ佛 ふことで御座 います、悪魔 は実 にイイスス ハリストスを無上 に恐 れて居 る者 で御座 いますから、彼 の名 を以 てすれば、直 に追 ひ佛 ひ得 るもので御座 います、此事 に就 いてはイイスス ハリストスも信者 の間 に確 なるお約束 を御 與 へになったので御座 います。『信 ずる者 には斯 の休徴 は従 はん、我 が名 に因 りて魔 鬼 を逐 ひ出 し新 なる方言 を謂 ひ得 ん』〔マルコ一六の一七〕と。
問
- 答
彼 は常 に主 の十字架 の苦 を思 ふ為 で御座 います、イイスス ハリストスの名 を口 で申 しまするのと少 しも変 はない事 なので御座 います。 - イェルサリムのキリルは
書 して居 りまするには『我 等 は耻 ることなく、食 ふにも飲 むにも、寝 るにも、起 るにも、出 るにも、息 むにも、何事 をなすにも必 ず十字架 を画 かん、是 れ大 なる守護 にして又 神様 の惠 、信者 の為 には軍 旗 にして悪 魔 の恐 るる者 なり云々』と。
問
- 答
聖 使徒 の時 からで御座 います。
問
- 答
彼 は別 に深 い意味 の有 る訳 では御座 いません、信者 の霊 と行 の潔白 で有 ると謂 ふことを示 す為 なので御座 います。
問
- 答
其 はイイスス ハリストスが仰 せられた『人 若 し我 に従 はんと欲 せば己 を捨 てて其 十字架 を負 ひて我 に従 へ』〔馬太一六の二四〕と謂 ふ言 を常 に思 ひ起 す為 なので御座 います。
問
- 答
彼 は心 の喜 を顕 す為 で御座 います。
問
- 答
左様 で御座 います、洗礼 は一 生涯 に一 度 より外 行 ふことの出来 ない者 で御座 います、前 にも申 しました通 り、洗礼 は霊 の生 れ更 りで御座 います、で御座 いまするから人 の世 に生 るゝ事 が一 度 で御座 いまする様 に霊 の生 れ更 りも一生 に一 度 より外 は無 いもので御座 います。
問
- 答
洗礼 は低 き処 に迷 ふて居 た人 を高 き位 に昇 せ、神様 の子 とするもので御座 いますから、若 し人 が洗礼 を受 けました後 、罪 に陥 りましたならば、其 堕 落 は洗礼 を受 けませぬ前 に数倍 するもので御座 います、聖 使徒 ペトルは此事 に就 いて申 して居 りまするには、『若 し人 我 が救主 イイスス ハリストスを識 るに因 りて世 の汚 を脱 れ復 之 に纏 れて勝 るゝ時 は彼 等 の為 に後 の患 は先 より更 に甚 し』〔ペトル後書二の二○〕と、併 し洗礼 を受 けました後 に信者 が犯 しました罪 に就 いては教会 には別 に痛改 機 密 と申 しまする特別 の儀 式 が御座 いまして、其 機 密 によりて信者 は洗礼 後 に犯 した罪 の赦 を得 るので御座 います、(痛改 機 密 のことは後に述べます)
- (二)
傅 膏 機 密
- (二)
問
- 答
傅 膏 機 密 と申 しまするのは信者 に聖神 のお惠 の降 る様 に、神 聖神 の御名 に由 て油 を信者 の身体 の様々 な部 分 に塗 るので御座 います。 此 機 密 に就 ては聖書 に下 の様 に記 して御座 います、『爾 等 は聖 なる者 より傅 膏 せられて知 らざる所 なし、爾 等 が彼 より受 けし所 の傅 膏 は爾 等 に居 るなり、故 に爾 等 は人 を教 ふるを要 せず、乃 此 傅 膏 は爾 等 に凡 の事 を教 へ、且 眞 にして偽 ならざるに因 りて、其 爾 等 に教 へし如 く彼 に居 れ』〔イオアン一書二の二○、二七〕
問
- 答
其 根本 を尋 ねますれば矢 張 主 イイスス ハリストスの御立 てになった機 密 で御座 いますので、彼 の時 から出来 たものと申 さねばなりませぬが、併 し今日 の様 に油 を用 ゐ出 したのは使徒等 のお弟子 の時代 からで御座 います、聖書 に記 されて御座 います通 り、聖 使徒 の未 だ御 存命 中 は聖神 のお惠 を信者 に授 くるには使徒 親 ら信者 の頭 に手 を置 いて祈 祷 をして、其 お惠 を信者 に傳 へたもので御座 いますが、〔行実八の一四‐一七〕其後 信者 の多 くなると共 に種々 な不 便 が出 て来 まして、一人 一人 信者 に親 ら手 を置 く事 が出来 なくなりましたので、旧約 時 代 の昔 王 や豫 言者 を立 てた時 に其人 の首 に油 を注 いだことが有 りましたので、其 儀 式 を取 って手 撫 〔手を頭に置く〕儀 式 に代 たので御座 います、勿論 傅 膏 機 密 に用 ゐる油 は聖 使徒 親 ら祈 祷 を以 て聖 にしたので御座 います。
問 では
- 答
其 は教会 の内 で最 も上 の位 に居 る主教 が聖 にするので御座 いまして其 油 を聖 にする儀 式 は非常 に厳 かな儀 式 で御座 います、日 本 では外国 から其 膏 を取 寄 せて居 ます、ですから別 に聖 にする必要 がありませぬので今迄 其 を行 ったことは御座 いませぬ。
問
- 答
其 は智慧 又 は思想 を清 くする為 で御座 います。
問
- 答
彼 は心 と希望 を聖 にする為 で御座 います。
問
- 答
其 は感情 を聖 にする為 で御座 います。
問 では
- 答
其 は基督信者 の為 すこと行 ふことを凡 て清 くする為 なので御座 います。
- (三)
聖体 機 密
- (三)
(以下は信経/第十か条 2に続く、未入力です)