行政執行法
朕帝國議會ノ協賛ヲ經タル行政執行法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
- 明治三十三年六月一日
内閣総理大臣 侯爵山縣有朋
大藏大臣 伯爵松方正義
内務大臣 侯爵西郷從道
陸軍大臣 子爵桂 太郎
文部大臣 伯爵樺山資紀
外務大臣 子爵青木周藏
逓信大臣 子爵芳川顕正
海軍大臣 山本權兵衛
司法大臣 清浦奎吾
農商務大臣 曾禰荒助
法律第八十四號
- 行政執行法
第一條 當該行政官廳ハ泥醉者、瘋癩者自殺ヲ企ツル者其ノ他救護ヲ要スト認ムル者ニ對シ必要ナル檢束ヲ加ヘ戎器、兇器其ノ他危險ノ虞アル物件ノ假領置ヲ爲スコトヲ得暴行、鬪爭其ノ他公安ヲ害スルノ虞アル者ニ對シ之ヲ豫防スル爲必要ナルトキ亦同シ
前項ノ檢束ハ翌日ノ没後ニ至ルコトヲ得ス又假領置ハ三十日以內ニ於テ其ノ期閒ヲ定ムヘシ
第二條 當該行政官廳ハ日出前、日没後ニ於テハ生命身體又ハ財產ニ對シ危害切迫セリト認ムルトキ又ハ博奕、密賣淫ノ現行アリト認ムルトキニ非サレハ現居住者ノ意ニ反シテ邸宅ニ入ルコトヲ得ス但シ旅店、割烹店其ノ他夜閒ト雖衆人ノ出入スル場所ニ於テ其ノ公開時閒內ハ此ノ限ニ在ラス
第三條 當該行政官廳ハ密賣淫犯ノ罪ヲ犯シタル者ニ對シ其ノ健康ヲ診斷シ必要ト認ムルトキハ本人若ハ媒合者ノ費用ヲ以テ病院ニ入ラシムルコトヲ得但シ本人又ハ媒合者ニ於テ費用ヲ負擔スルノ資力ナシト認ムルトキハ廰府縣警察費ヲ以テ之ヲ支辨スルコトヲ妨ケス
風俗上ノ取締ヲ要スル業ヲ爲ス者ノ居住其ノ他ノ制限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第四條 當該行政官廳ハ天災、事變ニ際シ又ハ敕令ノ規定アル場合ニ於テ危害豫防若ハ衞生ノ爲必要ト認ムルトキハ土地、物件ヲ使用、處分シ又ハ其ノ使用ヲ制限スルコトヲ得
第五條 當該行政官廳ハ法令又ハ法令ニ基ツキテ爲ス處分ニ依リ命シタル行爲又ハ不行爲ヲ强制スル爲左ノ處分ヲ爲スコトヲ得
- 一 自ラ義務者ノ爲スヘキ行爲ヲ爲シ又ハ第三者ヲシテ之ヲ爲サシメ其ノ費用ヲ義務者ヨリ徵收スルコト
- 二 强制スヘキ行爲ニシテ他人ノ爲スコト能ハサルモノナルトキ又ハ不行爲ヲ强制スヘキトキハ命令ノ規定ニ依リ二十五圓以下ノ過料ニ處スルコト
前項ノ處分ハ豫メ戒吿スルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス但シ急迫ノ事情アル場合ニ於テ第一號ノ處分ヲ爲スハ此ノ限ニ在ラス
行政官廳ハ第一項ノ處分ニ依リ行爲又ハ不行爲ヲ强制スルコト能ハスト認ムルトキ又ハ急迫ノ事情アル場合ニ非サレハ直接强制ヲ爲スコトヲ得ス
第六條 第三條及第五條ノ費用及第五條ノ過料ハ國稅徵收法ノ規定ニ依リ之ヲ徵收スルコトヲ得
行政官廳ハ前項ノ徵收金ニ付國稅ニ次キ先取特權ヲ有ス
第一項ノ費用及過料ニ關スル繰替支辨瓣、收入ノ所屬其ノ他必要ナル事項ハ敕令ヲ以テ之ヲ定ム
第七條 認可又ハ許可ヲ受クルニ非サレハ所有スルコトヲ得サル物件行政廳ノ保管ニ歸シタル場合ニ於テ其ノ所有ヲ認許スヘカラサルトキハ其ノ所有權國庫ニ歸屬ス假領置ヲ爲シタル物件ニシテ一箇年以內ニ交付ヲ請求スル者ナキトキ亦同シ
この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。
- 法律命令及官公󠄁文󠄁書
- 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
- 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁
この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。