聖詠講話中編/第百二十六聖詠講話

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第百二十六聖詠講話[編集]

しゅいへつくらずば、つくものいたづらろうし、しゅしろまもらずば、まもものいたづら儆醒けいせいす。なんぢいたづらつとおそ〔一節二節〕。


。 この聖詠せいえいイウデヤじん俘虜とりこよりかへりたるのち事業じぎょう状態じょうたいきてふなり。かれ俘虜とりこより解放かいほうされしのちおよ種族しゅぞくくによりかへりたるのち城邑まちかいされ、城壁じょうへきおよ高塔こうとう廃墟はいきょとなりしをこれ再興さいこうはじめたり、れどおほくのものイウデヤじん幸福こうふくねたみ、かれ安寧あんねいあやぶみつゝかれほうより攻撃こうげきしてぎょう妨害ぼうがいしたるにより、かかじょううちじつ消費しょうひし、聖堂せいどう建立こんりゅうするに四十ねんけいせり。イウデヤじんが『此殿このでんつるには四十六ねんたり』〔イオアン福音二の二十〕といひしことはソロモン建立こんりゅうせしだい一の聖堂せいどうにあらず、ペルシヤより解放かいほうされしのち建立こんりゅうしたる聖堂せいどうせるなり。くのごと聖堂せいどう城邑まちおよ墻壁しょうへきしろ建築けんちくするにはもっとおほくのじつようせり〉建築けんちくするにおほくのじつついやしたるがゆえに、言者げんしゃは、ふたたかみわしくべきことをかれをしへつゝ、これ解明ときあかして。イウデヤじんかみより佑助ゆうじょずんば、すべてのことのむなしくぜんなるをしめせり。かみ佑助ゆうじょなくんばただ俘虜とりこより解放かいほうされざるのみならず、解放かいほうされしのち城壁じょうへき再興さいこうすることもまたあたはざるなり。城壁じょうへき再興さいこうし、城邑まち建造けんぞうすることかくかか佑助ゆうじょゆうせざれば、その建造けんぞうおよ落成らくせいしたるものをぞうすることもまたあたはざりしならん。言者げんしゃこれふは全力ぜんりょくもつかれふたたかみ佑助ゆうじょむかはしめ、かれ平安へいあんなるによりて一層いつそう注意ちゅういなるものらざらんためなり。ればかみかれ幸福こうふくたまふや突然にはかにせずこれ漸々ぜんぜん徐々じょじょにしたるはすみやかに艱難かんなんよりすくはれたるのちふたたぜんこうむかはざらんためなり、またその幸福こうふくたまときにも、えずかれ注意ちゅうい警告けいこくしつゝ、数々しばしばてき攻撃こうげきすべきことをかれめいぜり。言者げんしゃことば一般いつぱんのことをはなされたるなれども、このけんもとづけるなり。イウデヤじんすべての人々ひとびと応用おうようせんことをようす、吾人われらみづからも注意ちゅういなるものとならず、無為むゐとどまらず、吾人われらかかはることをなし、すべてをかみき、ばんおいつねかみたのまんためなり。かみ佑助ゆうじょあるときも、注意ちゅういにして作動はたらかずんば終局しゅうきょくたつすることをざるなり。なんぢいたづらつとおそね』〔二節〕。ある訳者やくしゃすることをゆうす』〔アキラ〕となし、ある訳者やくしゃすること延引えんいんす』〔訳者不明〕となす。これことば意味いみごとし、縦令たとひなんぢすべてのとき労働ろうどうもちひてねず、あるいてつし、あるいぬるによこたはることをゆうしたりとも、うへよりの佑助ゆうじょけざればひとすべての事業じぎょうかいされ、またかか努力どりょくよりごうえきなからん。うれひパンくらふ』言者げんしゃこのことばもつかれぐんたり、また建築者けんちくしゃにして労力ろうりょくてき生活せいかつをなしたることをあらはすなり。こころは、かれしゅかごあるいいしたづさへ、右手ゆうしゅつるぎひつさげて建築けんちく戦争せんそう準備じゅんびしつゝ、たてもつつちはこべり。墻壁しょうへきしろまもるなく、防禦ぼうぎょこうのなかりしにより、イウデヤじんじつまい突然とつぜんにしてあはれなる攻撃こうげき危懼きくしつゝ、墻壁しょうへききづきてそうせり、かれかたはらにはつるぎたてほことありしが、かれよりへだたりててきみつなる行動こうどうイウデヤじんほうじ、およはるかにてきちかづけることをみとむるやいなや、喇叭らつぱらしてあひをなしし間牒かんちょうありき。れど言者げんしゃいはく、たとなんぢこれをなし、ろうときパンくらふも、うへよりの佑助ゆうじょざればばんぜんにしてむなしからん。かれしろ墻壁しょうへき再興さいこうするがためには一層いつそううへよりの佑助ゆうじょようするなり。ときかれそのあいするものぬるをたまふ。よ、しゅあたふるところげふしょなり』〔三節〕。ここげんじょうまへ如何いかなる接続せつぞくあるか。おほいなるしかえざる接続せつぞくあり。これことば意味いみごとし、かみおの佑助ゆうじょあたへざればばんむなし、れどかみもしその佑助ゆうじょたまとき睡眠すいみんここく、けんまぬかれ、平安へいあんてるやすらかなる生活せいかつあらんとなり。


。 ればかみかれ睡眠すいみんたまときかみかれ安息あんそくせしむるときかみ攻撃こうげきするもの駁撃ばくげきするときかれしろ建築けんちくしてこれまもるのみならず、すなはこれよりもはるかにおほいなる幸福こうふくく、すなはかみかれなほおほくの子女こどもたまひてかれおほくの子女こどもちちとならん。その褒章ほうしょうはらなり』。これなんこころなるか。こころは、かれ褒章ほうしょうとしておほくの子女こどもくとなり。子女こどもおほきことは天然てんねんことなれども、かみはその佑助ゆうじょあたふるとき一層いつそうおほからん、なんとなればおほくのぢょもうくるもまたうへよりの佑助ゆうじょようす、この佑助ゆうじょによりてイスラエルおほくの住民じゅうみんにてたされたればなり。れどかれ幸福こうふくただこの建築けんちく保護ほごおよぢょおほきことをもてかぎられず、これあるのことをもがつせらるゝなり、預言者よげんしゃこれつぎ少壮しょうそうしょ勇者ゆうしゃにあるごとし』〔四節〕てふことばもつあらはせり。このことば意味いみごとし、かれただ安全あんぜんなる城壁じょうへき堅固けんごなる城邑まちすうぢょあひだにあるのみならず、てきおそるゝところとなり、すなはごとおそれられんとなり。預言者よげんしゃただはずして勇者ゆうしゃにある』附加つけくはへたり。其物そのものおそるべきものにあらざるも、その勇者ゆうしゃにあるときもつてきかくす。かれおそるべきやくのごとし。かれとはたれなるか。

少壮しょうそうしょすなはかつよわかりしものしばられしものなり。預言者よげんしゃつねかれ幸福こうふくときぜん艱難かんなんきてかれべたり、もろもろ方法ほうほうもつて、すなはかれ忍受にんじゅせしことをもつて、すくはれしことをもつて、将来しょうらいけるたのしみもつかれこころ矯正きょうせいせんためなり。おのれのぞみこれによりてたすものさいはひなり、かれもんうちりててきともときはぢざらん』ある預言者よげんしゃこれそのえびらてたるものさいはひなり』〔フェオドチオン〕となせり。すなはち、かれ体力たいりょくものためえられざる畏懼いくおほくのぢょ安全あんぜん城邑まちれい勝利しょうりおよ戦争せんそうせんひんあたへられんとなり。ゆえ預言者よげんしゃくのごと幸福こうふくもつたのしむべきものとしてかれ称讃しょうさんするなり。預言者よげんしゃいはく、かれそうせらるゝも、かれ幸福こうふくはそのうちにあらずしてかれぢざることのうちり。かれもんうちりててきともときはぢざらん』何事なにごとなるか。もっとおほいなるせんひんもっとおほいなる光栄こうえい凱旋がいせんおよび幸福こうふくなり。てきかれもつあたかかみ照管しょうかんあたらざるものごとく、あるいりょくなるかみゆうするものごとく、あるい強力きょうりょくなるかみゆうするもおのれつみもつかみ照管しょうかんおのれより退しりぞくるものごと罵詈ばりせざらん。いなかれこれ城邑まち墻壁しょうへき衛卒えいそつ子女しぢょ武器ぶき刀剣とうけんをもてまさりたるにより、てきかくれず、すなはかみ保護ほごうへにある徴表しるしとしてこれのものをもつ装飾かざられ、かみさん頌揚しょうようしつゝおほいなるゆうもつてきむかへん。かみ佑助ゆうじょさんする状態じょうたいるは、すべての幸福こうふく頂上ちょうじょうなり、福楽ふくらく栄冠えいかんなり。れば預言者よげんしゃ衆人しゅうじんこの装飾そうしょくもとめ、これもつほこるべきことををしへつゝ此事このこともつせつむすべり。吾人われらまたこの装飾そうしょくん、光栄こうえい世々よよちち聖神せいしんともする吾人われらしゅイイスス ハリストス恩寵おんちょう仁愛じんあいとにりて永福えいふくくるにへんためなり。アミン。

参考[編集]

第百二十六聖詠せいえい

登上とうじやううたソロモンさく
1 しゅいへつくらずば、つくものいたづららうし、しゅしろまもらずば、まもものいたづら儆醒けいせいす。
2 なんぢいたづらつとき、おそね、うれひパンくらふ、ときかれそのあいするものぬるをたまふ。
3 よ、しゅあたふるところげふしょなり、その褒章はうしやうはらなり。
4 少壮せうさうしょは、勇者ゆうしやにあるごとし。
5 これそのえびらてたるものさいはひなり、かれもんうちりててきともときはぢざらん。


へん第127篇(文語訳旧約聖書)

ソロモンがよめるみやこまうでのうた
1 ヱホバいへをたてたまふにあらずば たつるものの勤勞きんらうはむなしく ヱホバしろをまもりたまふにあらずば衛士えじのさめをるは徒勞むなしきことなり
2 なんぢらはやくおきおそくいねて辛苦しんくかてをくらふはむなしきなり かくてヱホバそのいつくしみたまふものにねぶりをあたへたまふ
3 みよ子輩こらはヱホバのあたへたまふ嗣業ゆづりにして たいはそのむくいのたまものなり
4 年壮としわかきころほひのはますらをのにあるのごとし
5 のみちたるえびらをもつひとはさいはひなり かれらもんにありてあたとものいふときはづることあらじ