第65回国会における佐藤内閣総理大臣施政方針演説

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演説[編集]

(前略)

 戦後の日本経済の繁栄と発展は,世界貿易が拡大と自由化を続けたという恵まれた環境の中で達成されたのであります。その間,商品,資本,技術その他あらゆる面で国際的接触と交流が増大しております。政府はこの一両年,輸入の自由化に努めてまいりましたが,残存輸入制限品目を本年9月末には40以下に縮減して,西欧諸国に伍して遜色のない段階に達する予定であります。今後ともガット,OECDの場をはじめとして世界経済の拡大のための国際的努力に積極的に協力する所存であります。

 国際政治の面においてもこのような基本的な認識は変わることはありません。わたくしは日本が国際社会で生きる道は,国際主義に徹するほかはないと考えます。偏狭な自国中心主義を排して,国際社会の中で相互協力によつて生きようというのは,過去の歴史においてわれわれが見いだした教訓であります。戦後四分の一世紀を過ぎ,著しく国力の充実をみた今日,あらためて深く思いをいたすべきところと考えます。自由を守り,平和に徹し,国際協力を推進するというわが国外交の基本方針こそ,国際主義の真髄であります。

 この基本方針のもと,わが国の安全と経済の繁栄を維持し,地道に平和に生き抜いていくために,最も重要性をもつのは,米国との関係であります。日米関係の帰趨が国民生活に及ぼす影響は,他のいかなる国との関係に比べても,圧倒的に大きいことは,いまさら申すまでもありません。この事実は,内外情勢が流動する中にあつても,近い将来に変わる可能性はまつたく予見できないところであります。われわれは経済の面においても,近代的技術の面においても,世界の最高水準に到達することを大きな目標にしてまいりました。米国もまたより高度の発展を目ざして懸命の努力を重ねております。このような両国間の友好的競争関係こそが,今日,世界の平和と経済の拡大による民生の安定に大きく寄与しているのであります。

 最近日米間の重要な懸案となつている日米繊維交渉についても,自由経済と世界貿易の拡大という見地から,互恵互譲の精神に基づいて必ずや妥当な解決がもたらされることを確信しております。わが国と中国との関係は,歴史的にも地理的にも密接なつながりがあり,国益にも深くかかわると同時に,長期的な極東の平和と緊張緩和に関する重要な問題であるだけに,とくに慎重に取り組まなければなりません。

 中国問題の最も困難な点は,台北の中華民国政府と,北京の中華人民共和国政府が互いに全中国の正統政府たることを主張していることにあります。

 わが国は1952年,中華民国政府との間に日華平和条約を締結し,爾来親善友好関係を厚くしております。

 他方,わが国としては中国大陸との交流を積極的に行ない,その関係を改善したいと念願しております。日中友好関係を安定したものとするための基本は,なんといつても日中両民族の相互理解であります。政府としては長期的な見地から,わが国と中国大陸との間の不自然な状態を解消するために,中華人民共和国政府との間に,政府間の各種接触を行なう用意があり,また,民間貿易の拡大や記者交換の円滑化など交流の増大を強く望んでおります。同時に中華人民共和国政府の側からも,これに呼応する努力が行なわれることを期待している次第であります。

 政府は,他方領土の返還問題について機会あるごとに訴え続けておりますが,今後とも日本国民の正当な主張を展開し,一日も早くその実現を図る決意であります。日ソ関係は近年ますます緊密の度合いを深め,貿易経済のみならず,国際政治の分野においても相提携し,国際間の緊張緩和と平和確保に協力し合つております。両国間の友好関係をより深めるためにも,話し合いによつて北方領土問題を解決し,日ソ平和条約を締結しなければならないと信ずるものであります。国民各位の力強い支持のもとに,忍耐強く折衝を続けてまいります。

 開発途上国に対する協力についても,国際主義の立場から,相手国の立場と希望に応じ,その自立と真の発展に役だつよう,積極的に援助を進めてまいりたいと存じます。

 さて本年はいよいよ,国民待望の沖繩返還協定の調印を行なう年であります。日米間の作業は順調に進んでおります。すでに国政参加は実現いたしましたが,明年のできるだけ早い機会に施政権の返還を実現し,沖繩同胞をあたたかく迎え入れることができるよう,政府は格段の努力を傾ける決意であります。(後略)

出典[編集]

参考文献[編集]

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