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禮記/表記


子言之:歸乎!君子隱而顯,不矜而莊,不厲而威,不言而信。

〈訳:NDLJP:1118535/301 子之れを言ふ、歸らんか、君子はかくれてあらはれ、きようならずしてさうなり、れいならず してあり、はずしてしんあり。〉

子曰:君子不失足於人,不失色於人,不失口於人,是故君子貌足畏也,色足憚也,言足信也。《甫刑》曰:「敬忌而罔有擇言在躬。」子曰:裼襲之不相因也,欲民之毋相瀆也。

〈子曰く、君子、足を人にうしなはず、色を人に うしなはず、口を人にうしなはすママ、是の故に君子のかたちおそるゝに足るなり。色ははゞかる に足るなり。げんしんずるに足るなり。甫刑ほけいに曰く、敬忌けいきして擇言たくげんに在ること有 るしと。子曰く、裼襲せきしふあひらざるは、民の相けがすことなからんことを欲する なり。〉

子曰:祭極敬,不繼之以樂;朝極辨,不繼之以倦。子曰:君子慎以辟禍,篤以不掩,恭以遠恥。

〈子曰く、まつりけいきはむ、之れにぐにがくを以てせず。朝はべんきはむ、之 れにぐにけんを以てせず。子曰く、君子はしん以てくわけ、とく以ておほはれず、 きよう以てはぢとほざかる。〉

子曰:君子莊敬日強,安肆日偷。君子不以一日使其躬儳焉,如不終日。子曰:齊戒以事鬼神,擇日月以見君,恐民之不敬也。子曰:狎侮,死焉而不畏也。

〈子曰く、君子は莊敬さうけいして日にきよう安肆あんしして日にとう、君子 一日を以て其躬をして儳焉ざんえんとして日をへざるが如くならしめず。子曰く、さい かいして以て鬼神きしんつかへ、日月をえらんで以て君にまみゆるは、民のけいせざらんことを おそるればなり。子曰く、狎侮あふぶするときは死するもおそれざるなり。〉

子曰:無辭不相接也,無禮不相見也,欲民之毋相褻也。《易》曰:「初筮告,再三瀆,瀆則不告。」

〈子曰く、 なければあひせつせず、禮なければあひえず、民のあひけがすことなからんことを欲すれば なり。えきに曰く、初筮しよぜいぐ、さい三すればけがる、けがるれば則ち告げず。〉

子言之:仁者,天下之表也;義者,天下之製也;報者,天下之利也。

NDLJP:1118535/302 子之れを言ふ、じんは天下のへうなり、義は天下のせいなり、はうは天下の利なり。〉

子曰:以德報德,則民有所勸;以怨報怨,則民有所懲。《詩》曰:「無言不仇,無德不報。」《大甲》曰:「民非後無能胥以寧;後非民無以辟四方。」

〈子曰く、徳を以て徳に報ずれば、則ち民すゝむる所あり。うらみを以てうらみはうずれば、 則ち民るゝ所あり。に曰く、いふとしてむくいざるなく、徳としてむくいざるなし。 大甲たいかふに曰く、民、きみあらざれば、ひ以てやすんずるなく、きみは民に非ざれば、 以て四はうきみたること無しと。〉

子曰:以德報怨,則寬身之仁也;以怨報德,則刑戮之民也。

〈子曰く、徳を以てうらみはうずるは、則ち寛身くわんしんじん なり、うらみを以て徳にはうずるは、則ち刑戮けいりくたみなり。〉

子曰:無欲而好仁者,無畏而惡不仁者,天下一人而矣。是故君子議道自己,而置法以民。

〈子曰く、よくなくしてじんこのむ者と、おそるゝこと無くして不仁ふじんにくむ者とは、天下一人のみ。是の故に君子、 道をするはおのれよりし、はふを置くは民を以てす。〉

子曰:仁有三,與仁同功而異情。與仁同功,其仁未可知也;與仁同過,然後其仁可知也。仁者安仁,知者利仁,畏罪者強仁。仁者右也,道者左也。仁者人也, 道者義也。厚於仁者薄於義,親而不尊;厚於義者薄於仁,尊而不親。道有至,義有考。至道以王,義道以霸,考道以為無失。

〈子曰く、仁に三あり、仁と功 を同じくしてじやうことにす、じんこうを同じくすれば、其じんいまだ知る可からざるな り。じんくわを同じくして、然る後に其のじん知る可きなり。仁者じんしやは仁にやすんじ、知 者は仁を利し、罪をおそるゝ者はじんつとむ。仁は右なり、道は左なり。仁は人な り、道は義なり。じんあつき者は、うすく、したしみてたふとばず。義に厚き者は仁に うすく、たふとびてしたしまず。道に至あり、義あり、かうあり、至道しだうは以て王たり。義道ぎだう は以てたり。考道かうだうは以てうしなふなしと爲す。〉

子言之:仁有數,義有長短小大。中心憯怛,愛人之仁也:率法而強之,資仁者也。《詩》雲:「豐水有芑,武王豈不仕,詒厥孫謀,以燕翼子,武王烝哉。」數世之仁也。《國風》曰:「我今不閱,皇恤我後。」終身之仁也。

〈子之れを言ふ、じんすうあり、義に 長短ちやうたん小大せうだいあり、中心ちうしんさんたつなるは、人を愛するのじんなり、法にしたがひて之れをつとむ るは、じんとする者なり。に云ふ、豐水ほうすゐ𦬊あり、武王ぶわうつかふこととせざら んや、その孫謀そんぼうのこし、以て子をやすんたすく、[訳語疑問点]數世すうせいじんなり。國風こくふうに曰く、我すら今 れられず、我が後をうれふるにいとまあらんやと、終身しゆうしんじんなり。〉

子曰:仁之為器重,其為道遠,舉者莫能勝也,行者莫能致也,取數多者仁也,夫勉於仁者,不亦難乎?是故君子以義度人,則難為人;以人望人,則賢者可知已矣。

NDLJP:1118535/303 子曰く、じんたるおもし、其の道たるとほし、ぐる者能くふることきなり。 行ふ者能く致すこときなり。すうを取ること多き者はじんなり、れ仁を勉むる者 は、亦かたからずや。是の故に君子、義を以て人をはかれば、則ち人たりがたし、人を 以て人をのぞめば、則ち賢者けんしや知る可きのみ。〉

子曰:中心安仁者,天下一人而已矣。《大雅》曰:「德如毛,民鮮克舉之,我儀圖之,惟仲山甫舉之,愛莫助之。」

〈子曰く、中心ちうしんじんやすんずる者は、 天下に一人のみ。大雅たいがに曰く、徳のかるきことの如し。民、く之れをぐるも のすくなし、我之をたぐひはかる、たゞ仲山甫ちうざんぼ之れをぐ、あいすれど之れを助くるもの 莫し。〉

《小雅》曰:「高山仰止,景行行止。」子曰:詩之好仁如此,鄉道而行,中道而廢,忘身之老也,不知年數之不足,俛焉日有孳孳,斃而後已。

小雅せうがに曰く、高山かうざんあふぎ、景行けいかうは行ふと。子曰く、じんよみすることかくごとし。道にむかひて行く、中道ちうだうにしてはいす。身のゆるをわすれて、年數ねんすうらざる を知らず、俛焉べんえんとして日に孳孳ししたるあり、たふれて而してのちママむ。〉

子曰:仁之難成久矣!人人失其所好;故仁者之過易辭也。子曰:恭近禮,儉近仁,信近情,敬讓以行,此雖有過,其不甚矣。夫恭寡過,情可信,儉易容也,以此失之者,不亦鮮乎?《詩》曰:「溫溫恭人,惟德之基。」

〈子曰く、じんがたきことひさし、人人其のよみする所をうしなふ。故に仁者じんしやあやまちやすきな り。子曰く、きようれいちかく、けんじんちかく、しんじやうちかく、敬讓けいじやう以て此れを行 はば、あやまちありといへども、其れはなはだしからず、夫れきようくわすくなく、じやうは信なる可 く、けんやすきなり。此れを以て之をうしなふ者は、亦すくなからずや。に云ふ、 温温をんたる恭人きようじんれ徳のもとゐと。〉

子曰:仁之難成久矣,惟君子能之。是故君子不以其所能者病人,不以人之所不能者愧人。是故聖人之製行也,不製以己,使民有所勸勉愧恥,以行其言。禮以節 之,信以結之,容貌以文之,衣服以移之,朋友以極之,欲民之有一也。《小雅》曰:「不愧於人,不畏於天。」是故君子服其服,則文以君子之容;有其容,則文 以君子之辭;遂其辭,則實以君子之德。是故君子恥服其服而無其容,恥有其容而無其辭。恥有其辭而無其德,恥有其德而無其行。是故君子衰絰則有哀色,端冕則有敬色,甲胃則有不可辱之色。《詩》雲:「惟鵜在梁,不濡其翼;彼記之子,不稱其服!」

NDLJP:1118535/304 子曰く、じんがたきことひさし、たゞ君子之をくす。是の故に君子其のくす る所の者を、以て人をましめず、人のくせざる所の者を以て人をはづかしめず。 是の故に聖人せいじんおこなひせいするや、せいするにおのれを以てせず。民をして勤勉きんべんママ愧恥ぎちす る所ありて以て其言を行はしむ。れい以て之れをせつし、しん以て之れをむすび、容貌ようばう以 て之れをかざり、衣服いふく以て之れをうつし、朋友ほういう以て之れをきはむ。民のいつあらんことを 欲するなり。小雅せうがに曰く、人にはぢず、天をおそれずと。是の故に君子其ふくを服すれ ば、則ちかざるに君子のようを以てす。其ようあれば、則ちかざるに君子のを以てす。 其のぐれば、則ちみたすに君子の徳を以てす。是の故に君子、其ふくを服して 其ようなきをぢ、其ようありて其なきをぢ、其ありて其とくなきをぢ、其徳 ありて其かうなきを恥づ。是の故に君子衰絰さいてつすれば、則ち哀色あいしよくあり、端冕たんべんすれば、 則ち敬色けいしよくあり、甲冑かつちうすれば、則ちはづかしむ可からざるの色あり。に云ふ、維れ ていりやうに在り、其よくうるほさず、の子、其ふくかなはずと。〉

子言之:君子之所謂義者,貴賤皆有事於天下。天子親耕,粢盛櫃鬯以事上帝,故諸侯勤以輔事於天子。

〈子之れをふ、 君子の所謂いはゆるとは、貴賤きせん皆天下に事あり。天下ママみづかたがやし、粢盛しせい秬鬯きよちよう以て上帝じやうていつかふ。故に諸侯つとめて以て天子に輔事ほじす。〉

子曰:下之事上也,雖有庇民之大德,不敢有君民之心,仁之厚也。是故君子恭儉以求役仁,信讓以求役禮。不自尚其事,不自尊其身,儉於位而寡於欲,讓於賢,卑己而尊人,小心而畏義,求以事君。得之自是,不得自是,以聽天命。《詩》雲:「莫莫葛藟,施於條枚;凱弟君子,求福不回。」其舜、禹、文王、周公之謂與!有君民之大德,有事君之小心。《詩》雲:「惟此文王,小心翼翼,昭事上帝,聿懷多福,厥德不回,以受方國。」

〈子曰く、下の上につかふるや、民をおほふの大徳たいとくありといへども、あへて民に君たるの 心あらず、じんあつきなり。是の故に君子は恭儉きようけん以てじんさんことをもとめ、しん じやう以て禮をさんことをもとむ。みづから其事をたかくせず、みづから其身をたふとばず、くらゐけんにして、よくすくなく、けんゆづり、おのれひくくして人をたふとび、心をせうにしておそれ、以て君につかへんことをもとむ。之れを得ればみづから是とし、得ざるもみづから是 とし、以て天命てんめいく。に云ふ、莫莫ばくばくたる葛藟かつるゐ條枚でうまいへり、がいていの君子、 福をもとむることよこしまならずと。其れしゆん文王ぶんわう周公しうこうひか。民に君たる の大徳たいとくありて、君につかふるの小心せうしんあり。に云ふ、れ此の文王ぶんわう小心せうしん翼翼よくたり。 あきらか上帝じやうていつかへ、つひ多福たふくきたす、とくよこしまならず、以て方國はうこくを受くと。〉

子曰:先王諡以尊名,節以一惠,恥名之浮於行也。是故君子不自大其事,不自尚其功,以求處情;過行弗率,以求處厚;彰人之善而美人之功,以求下賢。是故君子雖自卑,而民敬尊之。

〈子曰く、先王せんわう以て名をたふとぶ、せつ以てめぐみもっぱらにす。名のおこなひぐるを づればなり。是の故に君子みづから其の事をだいにせず、みづから其こうたかくせず、以 てじやうらんことをもとむ。過行くわかうにはしたがはず、以てこうらんことをもとむ、人の ぜんあらはして、人のこうよみし、以てけんくだることをもとむ。是の故に君子みづかひくく すといへもママも、而かもたみ之れを敬尊けいそんす。〉

子曰:後稷,天下之為烈也,豈一手一足哉!唯欲行之浮於名也,故自謂便人。

〈子曰く、后稷こうしよくママの天下のれつたるや、に一しゆ 一足のみならんや、たゞおこなひの名にぎんことを欲するなり。故にみづか便人べんじん ふ。〉

子言之:君子之所謂仁者,其難乎!《詩》雲:「凱弟君子,民之父母。凱以強教之,弟以說安之。」樂而毋荒,有禮而親;威莊而安,孝慈而敬。使民有父之尊,有母之親。如此而後可以為民父母矣。非至德其孰能如此乎?今父之親子也,親賢而下無能;母之親子也,賢則親之,無能則憐之。母,親而不尊;父,尊而不親。水之於民也,親而不尊;火,尊而不親。土之於民也,親而不尊;天,尊而不親。命之於民也,親而不尊;鬼,尊而不親。

NDLJP:1118535/305 子之を言ふ、君子の所謂いはゆるじんは、其れかたいかな。に云ふ、がいていの君子は、民の と。がい以て之れを強教きやうけうし、てい以て之れを説安えつあんす、たのしんでくわうするく、禮あり てしん威莊ゐさうにしてあん孝慈かうじにしてけい、民をしてちゝそんあり、はゝしんあらしむ。かく の如くにして而してのちママに以て民の父母ふぼたる可し。至徳しとくあらざれば、其れたれかくの如くならんや。今、ちゝの子をしたしむや、けんしたしみて無能むのうくだす、はゝの子をしたし むや、けんなれば則ち之れをしたしみ、無能むのうなれば則ち之れをあはれむ。はゝしたしママくして たふとからず、ちゝたつとくしてしたしからず。水の民に於けるや、したしくしてたふとから ず。火はたふとくしてしたしからず。つちの民に於けるや、したしくしてたふとからず、天は尊 くしてしたしからず、めいの民に於けるや、したしくしてたつとからず、たつとくしてしたし からず。〉

子曰:夏道尊命,事鬼敬神而遠之,近人而忠焉,先祿而後威,先賞而後罰,親而不尊。其民之敝,憃而愚,喬而野,樸而不文。殷人尊神,率民以事神,先鬼而後禮,先罰而後賞,尊而不親,其民之敝。蕩而不靜,勝而無恥。」周人尊禮尚施,事鬼敬神而遠之,近人而忠焉,其賞罰用爵列,親而不尊,其民之敝,利而巧,文而不慚,賊而蔽。

〈子曰く、みちめいたつとぶ。つかしんけいして之れをとほざく。 人をちかづけてちうなり。祿ろくさきにし、を後にし、しやうを先にしてばつを後にす、したし くしてたふとからず。其の民のへいは、とうにしてけうにしてぼくにして文ならず、 殷人いんびとしんたふとぶ。民をひきゐて以てしんつかへ、を先にして禮を後にし、ばつを先に してしやうを後にす、たふとくしてしたしからず。其の民のへいは、たうにしてせいならず、 ちてはぢなし。周人しうひとは禮をたふとたふとぶ。つかしんけいして之れをとほざけ、人 を近づけてちうなり。其の賞罰しやうばつ爵列しやくれつを用ひ、したしくしてたふとからず。其民のへい は、利にしてかうふんにしてぢず、ぞくにしておほはる。〉

子曰:夏道未瀆辭,不求備,不大望於民,民未厭其親。殷人未瀆禮,而求備於民。周人強民,未瀆神,而賞爵刑罰窮矣。子曰:虞夏之道,寡怨於民;殷周之道,不勝其敝。

NDLJP:1118535/306 子曰く、の道はいまけがさず、そなはらんことをもとめず、大に民にのぞまず、 民いまだ其の親をいとはママはず。殷人いんびといまだ禮をけがさざる、而かもそなはらんことを民にもと む。周人しうひとは民をふ。いましんけがさざるも、而かも賞爵しやうしやく刑罰けいばつきうせり。子曰 く、虞夏ぐかの道は、民にうらみすくなし、殷周いんしうの道は、其のへいへず。〉

子曰:虞夏之質,殷周之文,至矣。虞夏之文不勝其質;殷周之質不勝其文。

〈子曰く、虞夏ぐかしつ殷周いんしうの文至れり。虞夏ぐかの文は其のしつへず、殷周いんしうしつは其の文にへず。〉

子言之曰:後世雖有作者,虞帝弗可及也已矣;君天下,生無私,死不厚其子;子民如父母,有憯怛之愛,有忠利之教;親而尊,安而敬,威而愛,富而有禮,惠而能散;其君子尊仁畏義,恥費輕實,忠而不犯,義而順,文而靜,寬而有辨。《甫刑》曰:「德威惟威,德明惟明。」非虞帝其孰能為此乎?

〈子之れをうて曰く、後世こうせいおこる者ありといへども、虞帝ぐていに及ぶ可からざるのみ。天下に君として、いきママきてわたくしなく、死して其の子にあつくせず、民を子とすること 父母ふぼの如く、憯怛せんだつあいあり、忠利ちうりをしへあり、したしくしてたふとく、やすくしてけいし、 ありて愛し、みて禮あり、けいにしてさんず、其の君子はじんたふとび義をおそ れ、ぢ實をかろんじ、忠にしておかさず、義にしてじゆん、文にしてせいくわんにして べんあり。甫刑ほけいに曰く、徳もてすればおそれ、徳もてあきらかにせばあきらかなり と。虞帝ぐていあらざれば其れたれかくの如くならんや。〉

子言之:事君先資其言,拜自獻其身,以成其信。是故君有責於其臣,臣有死於其言。故受祿不誣,其受罪益寡。

NDLJP:1118535/307 子之れを言ふ、君につかふるには先づ其のげんとし、はいしてみづから其の身をけん じ、以て其信をす。是の故に君、其臣をむるあり、臣其げんに死するあり。故 に其の祿ろくを受くることひず、其のつみを受くること益〻ますすくなし。〉

子曰:事君大言入則望大利,小言入則望小利;故君子不以小言受大祿,不以大言受小祿。《易》曰:「不家食吉。」

〈子曰く、君につか ふるに大言たいげん入れば、則ち大利たいりのぞみ、小言せうげん入れば、則ち小利せうりのぞむ。故に君子せう げんを以て大祿たいろくを受けず。大言たいげんを以て小祿せうろくを受けず。えきに曰く、しよくせず、きつと。〉

子曰:事君不下達,不尚辭,非其人弗自。《小雅》曰:「靖共爾位,正直是與,神之聽之,式穀以女。」子曰:事君遠而諫,則讇也;近而不諫,則屍利也。

〈子曰く、君につかふるに下達かたつせず、たふとばず、其の人にあらざればらず、小雅せうが に曰く、なんぢくらゐ靖共せいきようし、正直せいちよく是れみせば、しんの之をき、こくもつなんぢあたへんと。子曰く、君につかふるにとほくしていさむるは、則ちへつらふなり、近くし ていさめざるは、則ち尸利しりなり。〉

子曰:邇臣守和,宰正百官,大臣慮四方。

〈子曰く、邇臣じしんくわまもり、さい百官ひやくくわんたゞしく し、大臣たいしんは四方をおもんばかる。〉

子曰:事君欲諫不欲陳。《詩》雲:「心乎愛矣,瑕不謂矣;中心藏之,何日忘之。」

〈子曰く、君につかふるにいさめんことを欲して、のべママべん ことを欲せず。に云ふ、心に愛せども、とほくしてげず、中心ちうしん之れをかくす。いづれ の日か之をわすれんと。〉

子曰:事君難進而易退,則位有序,易進而難退則亂也。故君子三揖而進,一辭而退,以遠亂也。子曰:事君三違而不出竟,則利祿也,人雖曰不要,吾弗信也。

〈子曰く、君につかふるにすゝがたくして退しりぞやすければ、則ち くらゐじよあり、すゝやすくして退しりぞがたければ、則ちみだる。故に君子は三いふして進み、 一して退しりぞく、以てらんとほざかるなり。子曰く、君につかふるに三たびりてさかひ を出でざるは、則ち祿ろくとするなり。人はえうせずと曰ふといへども、われしんぜすママ。〉

子曰:事君慎始而敬終。子曰:事君可貴可賤,可富可貧,可生可殺,而不可使為亂。

〈子曰く、君につかふるにはじめつゝしみてをはりけいす。子曰く、君につかふるにたふとく すべくいやしくすべく、ますべく、まづしくすべく、いかすべくころすべし。而して らんを爲さしむべからず。〉

子曰:事君,軍旅不辟難,朝廷不辭賤。處其位而不履其事,則亂也。故君使其臣得誌,則慎慮而從之;否,則孰慮而從之,終事而退,臣之厚也。《易》曰:「不事王侯,高尚其事。」

NDLJP:1118535/308 子曰く、君につかふるに軍旅ぐんりよにはなんけず。朝廷てうていにはせんせず。其くらゐりて、其事をまざれば、則ちみだる。故に君、其の臣を使つかふに、こゝろざしを得れば 則ち愼慮しんりよして之にしたがひ、しからざれば則ち孰慮じゆくりよして之にしたがふ、事をへて退しりぞくは 臣のこうなり。えきに曰く、王侯わうこうつかへず、其事を高尚かうしやうにすと。〉

子曰:唯天子受命於天,士受命於君。故君命順則臣有順命;君命逆則臣有逆命。詩曰:「鵲之薑薑,鶉之賁賁;人之無良,我以為君。」

〈子曰く、たゞ天子は めいを天に受く、士はめいを君に受く。故に君命くんめいじゆんなれば、則ち臣めいしたがひ、 君命くんめいぎやくなれば、則ち臣めいさかふ。に曰く、じやく姜姜きやうきやうたるあり、じゆん賁賁ほんぼんたるあり、人のりやうなき、我以て君と爲すと。〉

子曰:君子不以辭盡人。故天下有道,則行有枝葉;天下無道,則辭有枝葉。是故君子於有喪者之側,不能賻焉,則不問其所費;於有病者之側,不能饋焉,則不問其所欲;有客,不能館,則不問其所舍。故君子之接如水;小人之接如醴。君子淡以成;小人甘以壞。《小雅》曰:「盜言孔甘,亂是用餤。」

〈子曰く、君子、を以て人を つくさず。故に天下道有れば、則ち行に枝葉しえふあり。天下道なければ、則ち枝葉しえふ あり。是の故に君子ある者のかたはらに於ては、することあたはざれば、則ち其の つひやす所を問はず。やまひある者のかたはらに於ては、おくることあたはざれば、則ち其の欲 する所をはず。かくあるにくわんすることあたはざれば、則ち其のしやせんとする所を はず。故に君子のまじはりは水の如く、小人せうじんまじはりれいの如し。君子はたんにして以 て成り、小人せうじんかんにして以てやぶる。小雅せうがに曰く、盜言たうげんはなはあまし、らん是を用てすゝむ と。〉

子曰:君子不以口譽人,則民作忠。故君子問人之寒,則衣之;問人之饑,則食之;稱人之美,則爵之。《國風》曰:「心之憂矣,於我歸說。」

NDLJP:1118535/309 子曰く、君子、口を以て人をめざれば、則ちたみちうおこる。故に君子、人のこゞえ たるを問へば、則ち之にせしめ、人のゑたるをへば、則ち之れにくらはしめ、 人のぜんしようすれば則ち之れをしやくす。國風こくふうに曰く、心に之れうれへあり、我に於て 歸りやどらんと。〉

子曰:口惠而實不至,怨菑及其身,是故君子與其有諾責也,寧有已怨。《國風》曰:「言笑晏晏,信誓旦旦。不思其反,反是不思,亦已焉哉!」

〈子曰く、口にけいしてじつ至らざれば、怨菑ゑんさい其身に及ぶ。是の故に君 子其の諾責だくせき有らんよりは、むしむるうらみあれ、國風こくふうに曰く、げんせうママ晏晏あんたり、信誓せんせいたん たんたり、其のはんを思はざりき、はんを是れ思はざりき、亦んぬるかな。〉

子曰:君子不以色親人。情疏而貌親,在小人則穿窬之盜也與?子曰:情欲信,辭欲巧。

〈子曰 く、君子、色を以て人をしたしまず。じやうにしてかたちしたしきは、小人せうじんりては 則ち穿窬せんゆたうなるか。子曰く、じゃうしんならんことを欲し、かうならんこと を欲す。〉

子言之:昔三代明王皆事天地之神明,無非卜筮之用,不敢以其私,褻事上帝。是故不犯日月,不違卜筮。卜筮不相襲也。大事有時日;小事無時日,有筮。外事用剛日,內事用柔日。不違龜筮。

〈子之れをふ、昔三代の明王めいわう、皆天地の神明しんめいつかふ、卜筮ぼくぜいを之れ用ふ るにあらずといふこと無し、あへて其のせつを以て上帝じやうていつかへざるなり。是を以て 日月をおかさず。卜筮ぼくぜいたがはず、卜筮ぼくぜいあひらず。大事は時日じじつあり、小事せうじは時日なし、 ぜいするあるとき、外事には剛日かうじつを用ひ、内事だいじには柔日じうじつを用ふ。龜筮きぜいたがはず。〉

子曰:牲牷禮樂齊盛,是以無害乎鬼神,無怨乎百姓。

〈子曰く、牲牷せいせん禮樂れいがく齊盛しせい、是を以て鬼神きしんがいなく、百せいうらみなし。〉

子曰:後稷之祀易富也。其辭恭,其欲儉,其祿及子孫。詩曰:「後稷兆祀,庶無罪悔,以迄於今。」

〈子曰く、こうママ しよくは、そなやすし、其きよう、其よくけん、其祿ろく子孫しそんに及ぶ。に曰く、こう しよくはじめてまつる、罪悔ざいくわいなきをこひねがひ、以て今にいたれりと。〉

子曰:大人之器威敬。天子無筮,諸侯有守筮。天子道以筮;諸侯非其國不以筮,卜宅寢室。天子不卜處大廟。

〈子曰く、大人の器 は、威敬ゐけいすべし、天子はぜいすること無し、諸侯に守筮しゆぜいあり、天子、道にしてぜいもちふ。諸侯其の國にあらざれば、ぜいを以ひず、たく寢室しんしつぼくす。天子は大廟たいべうくこ とをぼくせず。〉

子曰:君子敬則用祭器。是以不廢日月,不違龜筮,以敬事其君長。是以上不瀆於民,下不褻於上。

〈子曰く、君子けいすれば則ち祭器さいきを用ふ、是を以て日月をはいせず、 龜筮きぜいたがはず、以て其君長に敬事けいじす。是を以てかみ、民にけがされず、しもかみれ ず。〉

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原文:

この作品は1931年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。

 
翻訳文:

この著作物は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の発効日(2018年12月30日)の時点で著作者(共同著作物にあっては、最終に死亡した著作者)の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)50年以上経過しているため、日本においてパブリックドメインの状態にあります。


この著作物は、1931年1月1日より前に発行された(もしくはアメリカ合衆国著作権局に登録された)ため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。