禮記/王制

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訳は、『漢文叢書 第17（礼記）』有朋堂、昭和2年(1927)発行NDLJP:1118535（Commonsのファイル）による。※環境依存文字の一部（「屛」など）は平易化しています。

王者之制祿爵，公侯伯子男，凡五等。諸侯之上大夫卿，下大夫，上士，中士，下士，凡五等。天子之田方千里，公侯田方百里，伯七十里，子男五十里。不能五十里者，不合於天子，附於諸侯曰附庸。天子之三公之田視公侯，天子之卿視伯，天子之大夫視子男，天子之元士視附庸。

〈訳：NDLJP:1118535/70 王者（わうしや）の祿爵（ろくしやく）を制（せい）するは、公（こう）、侯（こう）、伯（はく）、子（し）、男（だん）、凡（およ）そ五等（とう）。諸侯（しよこう）の上大夫（じやうたいふ）卿（けい）、下（か） 大夫（たいふ）、上士（じやうし）、中士（ちうし）、下士（かし）、凡そ五等。天子の田（でん）は方（はう）千里、公侯（こうこう）の田は、方（はう）百里、伯（はく）は七 十里、子男は五十里、五十里なる能（あた）はざる者は、天子に合（がつ）せずして、諸侯に附す るを附庸（ふよう）と曰ふ。天子の三公（こう）の田（でん）は、公侯に視（なぞら）へ、天子（てんし）の卿（けい）は伯に視（なぞら）へ、天子 の大夫は、子男に視（なぞら）ヘ、天子の元士（げんし）は附庸（ふよう）に視（なぞら）ふ。〉

制：農田百畝。百畝之分：上農夫食九人，其次食八人，其次食七人，其次食六人；下農夫食五人。庶人在官者，其祿以是為差也。諸侯之下士視上農夫。祿足以代其耕也。中士倍下士，上士倍中士，下大夫倍上士；卿，四大夫祿；君，十卿祿。次國之卿，三大夫祿；君，十卿祿。小國之卿，倍大夫祿，君，十卿祿。

〈農（のう）の田（でん）を制すること百畝（ひやくぼ）、 百畝の分（ぶん）、上農夫（じやうのうふ）は九人を食（やしな）ひ、其次（つぎ）は八人を食（やしな）ひ、其次は七人を食（やしな）ひ、其 次は六人を食ふ。下農夫（かのうふ）は、五人を食（やしな）ふ。庶人（しよじん）の官（くわん）に在る者は、其祿（ろく）是を以 て差（さ）と爲す。諸侯の下士（かし）は、上農夫（じやうのうふ）に視（なぞら）ふ。祿（ろく）以て其耕（かう）に代（かふ）るに足（た）るなり。中（ちう） 士（し）は下士（かし）に倍（ばい）し、上士は中士に倍し、下大夫は上士に倍（ばい）し、卿（けい）は大夫の祿（ろく）を四（よつ）に し、君（きみ）は卿（けい）の祿（ろく）を十（じふ）にす。次國（じこく）の卿は、大夫の祿を三にし、君は卿の祿を十に し、小國（せうこく）の卿（けい）は、大夫（たいふ）の祿（ろく）に倍（ばい）し、君は卿の祿を十にす。〉

次國之上卿，位當大國之中，中當其下，下當其上大夫。小國之上卿，位當大國之下卿，中當其上大夫，下當其下大夫，其有中士下士者，數各居其上之三分。

〈NDLJP:1118535/71 次國（じこく）の上卿（じやうけい）は、位（くらゐ）、大國（たいこく）の中に當り、中は其下に當り、下は其上大夫に當る。 小國（せうこく）の上卿は、位、大國（たいこく）の下卿に當（あた）り、中は其上大夫に當り、下は其下大夫に當（あた） る。其中士（ちうし）下士（かし）ある者は、數（かず）各〻（おの〳〵）其上の三分（さんぶん）に居（を）る。〉

凡四海之內九州，州方千里。州，建百里之國三十，七十里之國六十，五十里之國百有二十，凡二百一十國；名山大澤不以封，其餘以為附庸間田。八州，州二百一十國。

〈凡そ四海（しかい）の内（うち）九州（きうしう）あり。 州（しう）ごとに方千里、州ごとに百里の國三十、七十里の國六十、五十里の國百（ひやく）有（いう）二 十を建（た）つ、凡そ二百一十國、名山（めいざん）大澤（たいたく）は以て封（ほう）ぜず、其餘は以て附庸（ふよう）間田（かんでん）と爲す。 八州には、州（しう）ごとに二百一十國。〉

天子之縣內，方百里之國九，七十里之國二十有一，五十里之國六十有三，凡九十三國；名山大澤不以朌，其餘以祿士，以為間田。

〈天子（てんし）の縣内（けんない）は、方百里の國九、七十里の國二 十有一、五十里の國六十有三、凡そ九十三國、名山（めいざん）大澤（たいたく）は以て肪（わか）〔ママ〕たず、其の餘は 以て士に祿（ろく）し、以て間田（かんでん）と爲す。〉

凡九州，千七百七十三國。天子之元士，諸侯之附庸不與。

〈凡そ九州（きうしう）、千七百七十三國、天子の元士（げんし）、諸侯（しよこう）の 附庸（ふよう）は與（あづ）からず。〉

天子百里之內以共官，千里之內以為御。

〈天子は百里の内（うち）以て官（くわん）に共（きよう）し、千里の内以て御（ぎよ）と爲す。〉

千里之外，設方伯。五國以為屬，屬有長。十國以為連，連有帥。三十國以為卒，卒有正。二百一十國以為州，州有伯。八州八伯，五十六正，百六十八帥，三百三十六長。八伯各以其屬屬於天子之老二人，分天下以為左右，曰二伯。

〈千里の外は、方伯（はうはく）を設（まう）く、五國以て屬（しよく）と爲し、屬（しよく）に長（ちやう）あり、十國以て連（れん）と爲 し、連に帥（すゐ）あり、三十國以て卒と爲し、卒に正（せい）あり、二百一十國以て州と爲し、 州（しう）に伯（はく）あり、八州に八伯（はく）、五十六正（せい）、百六十八帥（すゐ）、三百三十六長あり、八伯各〻（おの〳〵） 其屬を以て、天子の老（らう）二人（にん）に屬し、天下を分（わけ）て以て左右（さいう）と爲す、二伯と曰ふ。〉

千里之內曰甸，千里之外曰采，曰流。

〈千里の内（うち）を甸（でん）と曰ひ、千里の外（ほか）を采（さい）と曰ひ、流（りう）と曰ふ。〉

天子：三公，九卿，二十七大夫，八十一元士。

〈天子は三公（こう）、九卿（けい）、二十 七大夫、八十一元士（げんし）あり。〉

大國：三卿；皆命於天子；下大夫五人，上士二十七人。

〈大國は三卿（さんけい）、皆（みな）天子（てんし）に命（めい）ぜらる。下大夫は五人、上士 に二十七人（にん）、〉

次國：三卿；二卿命於天子，一卿命於其君；下大夫五人，上士二十七人。

〈次國（じこく）は三卿（さんけい）、二卿は天子に命（めい）ぜられ、一卿（いつけい）は其君に命ぜらる。下大 夫は五人、上士は二十七人、〉

小國：二卿；皆命於其君；下大夫五人，上士二十七人。

〈小國は二卿（にけい）皆（みな）其の君に命ぜらる。下大夫は五人、上 士は二十七人。〉

天子使其大夫為三監，監於方伯之國，國三人。天子之縣內諸侯，祿也；

〈天子其大夫をして三監（さんかん）と爲し方伯（はうはく）の國（くに）を監（かん）せしむ、國ごとに三 人。天子の縣内（けんない）の諸侯（しよこう）は祿（ろく）す、〉

外諸侯，嗣也。

〈外諸侯は嗣（つ）ぐなり。〉

制：三公，一命卷；若有加，則賜也。不過九命。次國之君，不過七命；小國之君，不過五命。

〈NDLJP:1118535/72 制（せい）は三公（こう）は一命（いちめい）して卷（こん）す、若し加（くは）はることあれば則ち賜（たま）ふなり、九命（めい）に過ぎず、 次國（じこく）の君は、七命に過ぎず、小國（せうこく）の君（きみ）は、五命に過ぎず、〉

大國之卿，不過三命；下卿再命，小國之卿與下大夫一命。

〈大國の卿（けい）は、三命に過 ぎず、下卿（けい）は再命（さいめい）、小國（せうこく）の卿（けい）と、下大夫（かたいふ）とは一命（めい）のみ。〉

凡官民材，必先論之。論辨然後使之，任事然後爵之，位定然後祿之。

〈凡（およ）そ民材（みんざい）を官にするに は、必ず先づ之を論（ろん）ず、論辨（ろんべん）して然る後に之を使（つか）ふ、事（こと）に任（にん）じて然る後に之を 爵（しやく）す。位（くらゐ）定（さだ）まりて然る後に之を祿（ろく）す。〉

爵人於朝，與士共之。刑人於市，與眾棄之。是故公家不畜刑人，大夫弗養，士遇之塗弗與言也；屏之四方，唯其所之，不及以政，亦弗（故）〔欲〕生也。

〈人を朝（てう）に爵（しやく）するには、士（し）と之を共にし、 人を市（いち）に刑（けい）するには、衆（しう）と之を棄（す）つ、是（こ）の故（ゆゑ）に公家（こうか）は刑人（けいじん）を畜（やしな）はず、大夫は養は ず、士は之に塗（みち）に遇（あ）ふも、與（とも）に言はざるなり、之を四方（しはう）に屏（しりぞ）け、唯（たゞ）其之（ゆ）く所（ところ） のまゝにす、及ぶに政（まつりごと）を以てせず、故（ことさら）に生（せい）せざるを示（しめ）す。〉

諸侯之於天子也，比年一小聘，三年一大聘，五年一朝。

〈諸侯の天子に 於けるや、比年（ひねん）に一たび小聘（せうへい）す、三年に一たび大聘（たいへい）す、五年に一たび朝（てう）す、〉

天子五年一巡守：

〈天 子は五年に一たび巡守（じゆんしう）す。〉

歲二月，東巡守，至于岱宗，柴而望祀山川；覲諸侯；問百年者，就見之。命大師陳詩以觀民風，命市納賈以觀民之所好惡。志淫好辟。命典禮考時月，定日，同律，禮樂制度衣服正之。山川神（祗）〔祇〕，有不舉者，為不敬；不敬者，君削以地。宗廟，有不順者，為不孝；不孝者，君絀以爵。變禮易樂者，為不從；不從者，君流。革制度衣服者，為畔，畔者君討。有功德於民者，加地進律。五月，南巡守，至于南嶽，如東巡守之禮。八月，西巡守，至于西嶽，如南巡守之禮。十有一月，北巡守，至于北嶽，如西巡守之禮。歸假于祖、禰，用特。

〈歳（とし）の二月に東（ひがし）に巡守（じゆんしう）し、岱宗（たいそう）に至り、柴（しばやい）て山川（さんせん） を望祀（ばうし）し、諸侯を覲（み）る、百年の者を問ひ、就（つ）きて之を見る。大師（たいし）に命（めい）じ詩（し）を陳（つら）ね 以て民の風を觀（み）、市（いち）に命（めい）じ賈（あきもの）を納（い）れしめ、以て民の好惡（かうを）する所（ところ）を觀（み）る、志（こゝろざし）淫（いん）な れば好（このみ）辟（へき）なり、典禮（てんれい）に命（めい）じて、時月（じげつ）を考（かんが）へ、日を定め、律（りつ）禮樂（れいがく）、制度（せいど）衣服（いふく）を同（おな）じ くし、之を正す。山川（さんせん）の神祇（しんぎ）、擧（あ）げざるある者（もの）を不敬（ふけい）と爲す、不敬の者（もの）は君削（けづ）る に地（ち）を以てす、宗廟（そうべう）不順（ふじゆん）なることある者を不孝（ふかう）と爲す、不孝の者は君絀（しりぞ）くるに 爵（しやく）を以てす。禮を變じ樂（がく）を易（か）ふる者を不從（ふじゆう）と爲す、不從（ふじゆう）の者は君流す、制度（せいど）衣（い） 服（ふく）を革（あらた）むる者を畔（はん）と爲す、畔（そむ）く者は君討（とう）ず。民に功徳（こうとく）ある者は、地（ち）を加（くは）へ律（りつ）を 進（すゝ）む。五月南に巡守（じゆんしゆ）し、南嶽（なんがく）に至（いた）る。東に巡守するの禮の如し。八月西に巡守 し、西嶽（せいがく）に至る。南に巡守（じゆんしう）するの禮の如し。十有一月北（きた）に巡守（じゆんしう）し、北嶽（ほくがく）に至る。 西（にし）に巡守するの禮の如し。歸（かへ）りて祖（そ）禰（でい）に假（いた）り、特（とく）を用（もち）ふ。〉

天子將出，類乎上帝，宜乎社，造乎禰，諸侯將出，宜乎社，造乎禰。

〈天子將（まさ）に出（い）でんとすれ ば、上帝（じやうてい）に類（るゐ）し、社（しや）に宜（ぎ）し、禰（でい）に造（ざう）す、諸侯將に出でんとすれば、社（しや）に宜（ぎ）し、 禰（でい）に造（ざう）す。〉

天子無事與諸侯相見曰朝，考禮、正刑、一德，以尊于天子。天子賜諸侯樂，則以柷將之；賜伯子男樂，則以鼗將之。

〈天子（てんし）事（こと）無（なく）して、諸侯（しよこう）と相（あひ）見るを朝（てう）と曰ふ、禮を考へ刑（けい）を正（たゞ）し徳（とく）を一に し、以て天子を尊（たふと）ぶ。 NDLJP:1118535/73 天子（てんし）諸侯（しよこう）に樂（がく）を賜（たま）へば、則ち柷（しゆく）を以て之を將（おこな）ふ。伯子（はくし）男（だん）に樂（がく）を賜（たま）へば、則ち 鼗（たう）を以て之を將（おこな）ふ。〉

諸侯，賜弓矢然後征，賜鈇鉞然後殺，賜圭瓚然後為鬯。未賜圭瓚，則資鬯於天子。

〈諸侯は弓矢（きうし）を賜ひて、然る後に征（せい）す、鈇鉞（ふゑつ）を賜（たま）ひて、然る後 に殺（ころ）す。圭瓚（けいさん）を賜（たま）ひて、然（しか）る後（のち）に鬯（ちよう）を爲（つく）る。未だ圭瓚（けいさん）を賜（たま）はざれば、則ち鬯（ちよう）を 天子に資（と）る。〉

天子命之教，然後為學。小學在公宮南之左，大學在郊。天子曰辟廱，諸侯曰頖宮。

〈天子之に教（をしへ）を命じて、然る後に學（がく）を爲（つく）る。小學（せうがく）は公宮（こうきう）の南（みなみ）の左に 在り。大學（だいがく）は郊（かう）に在り、天子に辟雍（へきよう）と曰ひ、諸侯に頖宮（はんきう）と曰ふ。〉

天子將出征，類乎上帝，宜乎社，造乎禰，禡於所征之地。受命於祖，受成於學。出征，執有罪，反，釋奠于學，以訊馘告。

〈天子（てんし）將に出征 せんとすれば、上帝（じやうてい）に類（るゐ）し、社に宜（ぎ）し、禰（でい）に造（ざう）し、征（せい）する所の地（ち）に禡（ば）し、命を 祖（そ）に受け、成（せい）を學（がく）に受く。出征して有罪（いうざい）を執（とら）へ、反（かへ）りて學に釋奠（せきてん）し、訊馘（じんくわく）を以て 告ぐ。〉

天子諸侯無事則歲三田。一為乾豆，二為賓客，三為充君之庖。無事而不田，曰不敬；田不以禮，曰暴天物。天子不合圍，諸侯不掩群。天子殺則下大綏，諸侯殺則下小綏，大夫殺則止佐車。佐車止，則百姓田獵。獺祭魚，然後虞人入澤梁。豺祭獸，然後田獵。鳩化為鷹，然後設罻羅。草木零落，然後入山林。昆蟲未蟄，不以火田。不麛，不卵，不殺胎，不殀夭，不覆巢。

〈天子諸侯事（こと）なければ、則ち歳（とし）ごとに三たび田（かり）す。一は乾豆（かんとう）の爲にし、二 は賓客（ひんかく）の爲にし、三は君の庖（くりや）に充（み）つるが爲にす。事なくして田（かり）せざるを不敬（ふけい）と 曰ふ。田（かり）して禮（れい）を以てせざるを天物（てんぶつ）を暴（ばう）すと曰ふ。天子は合圍（がふゐ）せず。諸侯は羣（ぐん）を 掩（おほ）はず。天子殺（えものあれ）ば即ち大綏（すゐ）を下（たふ）し、諸侯殺（えものあれ）ば則ち小綏（すゐ）を下（たふ）し、大夫殺（えものあれ）ば 則ち佐車（さしや）を止（とゞ）め、佐車（さしや）止（とゞ）まれば則ち百姓（せい）田（でん）獵（れふ）す。獺（だつ）魚（うを）を祭（まつ）りて、然る後に虞人（ぐじん）澤（たく） 梁（りやう）に入り、豺（さい）獸（じう）を祭（まつ）りて、然る後に田（でん）獵（れふ）す。鳩（きう）化（くわ）して鷹（よう）と爲りて、然る後に罻（ゐ） 羅（ら）を設（まう）け、艸木（さうもく）零落（れいらく）して、然る後に山林（さんりん）に入る。昆蟲（こんちう）未だ蟄（ちつ）せざれば、以て火田（くわでん） せず。麛（べい）せず卵（らん）せず、胎（たい）を殺さず、夭（えう）を殀（ころ）さず、巣（す）を覆（くつが）へさず。〉

（冡）〔冢〕宰制國用，必於歲之杪，五穀皆入然後制國用。用地小大，視年之豐（耗）〔秏〕。以三十年之通制國用，量入以為出，祭用數之仂。喪，三年不祭，唯祭天地社稷為越紼而行事。喪用三年之仂。喪祭，用不足曰暴，有餘曰浩。祭，豐年不奢，凶年不儉。國無九年之（畜）〔蓄〕曰不足，無六年之蓄曰急，無三年之蓄曰國非其國也。三年耕，必有一年之食；九年耕，必有三年之食。以三十年之通，雖有凶旱水溢，民無菜色，然後天子食，日舉以樂。天子七日而殯，七月而葬。諸侯五日而殯，五月而葬。大夫，士，庶人，三日而殯，三月而葬。三年之喪，自天子達，庶人縣封，葬不為雨止，不封不樹，喪不貳事，自天子達於庶人。喪從死者，祭從生者。支子不祭。

〈NDLJP:1118535/74 冢宰（ちようさい）國用（こくよう）を制（せい）するは、必（かなら）ず歳（とし）の杪（すゑ）に於てす。五穀（こく）皆（みな）入（い）りて、然る後に國用（こくよう）を 制（せい）す。地の小大を用（もつ）て年の豐耗（ほうかう）に視（なぞら）ふ、三十年の通を以て、國用を制し、入るを 量（はか）りて以て出すことを爲す。祭（まつり）は數（すう）の仂（あまり）を用ふ。喪（も）には三年祭（まつ）らず、唯（たゞ）天地（てんち）社（しや） 稷（しよく）を祭（まつ）るのみ。紼（ふつ）を越（こ）えて事を行ふを爲す。喪は三年の仂（あまり）を用ふ。喪祭（さうさい）に用（よう）足（た） らざるを暴（ばう）と曰ひ、餘（あまり）あるを浩（かう）と曰ふ。祭（まつり）は豐年（ほうねん）にも奢（おご）らず、凶年（きようねん）にも儉（けん）せ ず。國（くに）九年の蓄（たくはへ）なきを、不足と曰ひ、六年の蓄（たくはへ）なきを急（きふ）と曰ひ、三年の蓄無 きを、國其國に非ずと曰ふなり。三年耕（たがや）せば必ず一年の食（しよく）あり。九年耕せば必 ず三年の食（しよく）あり、三十年の通（つう）を以て、凶（きよう）旱（かん）水溢（すゐいつ）ありと雖も、民（たみ）菜色（さいしよく）なし。然 る後に天子食するに、日に擧ぐるに樂（がく）を以てす。天子は七日（にち）にして殯（ひん）し、七月 にして葬る。諸侯は五日にして殯（ひん）し、五月にして葬る。大夫（たいふ）、士、庶人（しよじん）は三日に して殯（ひん）し、三月にして葬る。三年の喪（も）は、天子より達（たつ）す。庶人（しよじん）は縣封（けんべん）す。葬（はうむり）は 雨（あめ）の爲めに止（や）めず、封（ほう）せず樹（じゆ）せず、喪（も）に事を貳（ふたつ）にせず。天子より庶人に達する まで、喪（も）は死者（ししや）に從ひ、祭（さい）は生者（せいしや）に從ひ、支子（しし）は祭（まつ）らず。〉

天子七廟，三昭三穆，與大祖之廟而七。諸侯五廟，二昭二穆，與大祖之廟而五。大夫三廟，一昭一穆，與大祖之廟而三。士一廟，庶人祭於寢。

〈NDLJP:1118535/75 天子は七廟（べう）あり。三昭（せう）三穆（ぼく）と、大祖（たいそ）の廟（べう）とにて七なり。諸侯は五廟（べう）あり。二昭（せう） 二穆（ぼく）と、大祖の廟（べう）とにて五あり。大夫は三廟あり。一昭（せう）一穆（ぼく）と、大祖の廟とにて 三なり。士は一廟のみ。庶人（しよじん）は寢（しん）に祭（まつ）る。〉

天子諸侯宗廟之祭：春曰礿，夏曰禘，秋曰嘗，冬曰烝。天子祭天地，諸侯祭社稷，大夫祭五祀。天子祭天下名山大川：五嶽視三公，四瀆視諸侯。諸侯祭名山大川之在其地者。

〈天子諸侯宗廟（そうべう）の祭（まつり）は、春（はる）に礿（やく）と曰ひ、 夏（なつ）に禘（てい）と曰ひ、秋（あき）に嘗（しやう）と曰ひ、冬（ふゆ）に烝（じよう）と曰ふ。天子は天地を祭り、諸侯は社稷（しやしよく） を祭り、大夫は五祀（し）を祭（まつ）る。天子は天下の名山（めいざん）大川（たいせん）を祭り、五嶽（がく）は三公に視（なぞら）へ、 四涜（しとく）は諸侯に視（なぞら）ふ。諸侯は名山（めいざん）大川（たいせん）の其地にある者を祭る。〉

天子諸侯祭因國之在其地而無主後者。

〈天子諸侯、因（よ）れる 國（こく）の其地に在（あ）りて主（しゆ）後（こう）なき者を祭る。〉

天子犆礿，祫禘，祫嘗，祫烝。諸侯礿則不禘，禘則不嘗，嘗則不烝，烝則不礿。諸侯礿，犆；禘，一犆一祫；嘗，祫；烝，祫。

〈子は特礿（とくやく）し、袷（かふ）して禘（てい）し、袷（かふ）して嘗（しやう）し、 袷（かふ）して烝（じよう）す。諸侯は礿（やく）すれば則ち禘（てい）せす、禘（てい）すれば則ち嘗（しやう）せず、嘗すれば則ち 烝（じよう）せず、烝すれば則ち礿（やく）せす。諸侯礿（やく）特（とく）す。禘（てい）一たびは特（とく）し一たびは袷（かふ）す。嘗 して袷（かふ）し烝して袷す。〉

天子社稷皆大牢，諸侯社稷皆少牢。大夫士宗廟之祭，有田則祭，無田則薦。庶人春薦韭，夏薦麥，秋薦黍，冬薦稻。韭以卵，麥以魚，黍以豚，稻以鴈。祭天地之牛，角繭栗；宗廟之牛，角握；賓客之牛，角尺。諸侯無故不殺牛，大夫無故不殺羊，士無故不殺犬豕，庶人無故不食珍。

〈天子の社稷（しやしよく）は皆大牢（たいらう）、諸侯（しよこう）の社稷（しやしよく）は皆少牢（せうらう）、大夫士の宗廟（そうべう） の祭は、田（でん）あれば則ち祭り、田なければ則ち薦（すゝ）む。庶人（しよじん）は春（はる）は韭（にら）を薦（すゝ）め、夏は麥（むぎ） を薦め、秋（あき）は黍（きび）を薦め、冬（ふゆ）は稻（いね）を薦（すゝ）む。韭（にら）は卵（らん）を以てし、麥は魚（うを）を以てし、黍（きび）は 豚（ゐのこ）を以てし、稻（いね）は鴈（がん）を以てす。天地を祭るの牛（うし）は、角（つの）は繭栗（けんりつ）。宗廟の牛は、角は 握（あく）。賓客（ひんかく）の牛は、角は尺（せき）。諸侯故なければ牛を殺さず。大夫故無ければ、羊（ひつじ）を殺 さず。士故無ければ犬豕（けんし）を殺さず。庶人（しよじん）故なければ珍（ちん）を食（くら）はず。〉

庶羞不踰牲，燕衣不踰祭服，寢不踰廟。

〈庶羞（しよしう）は牲（せい）に踰（こ）え ず。燕衣（えんい）は祭服（さいふく）に踰（こ）えず。寢（しん）は廟（べう）に踰えず。〉

古者：公田，藉而不稅。市，廛而不稅。關，譏而不征。林麓川澤，以時入而不禁。夫圭田無征。

〈NDLJP:1118535/76 古者（いにしへ）公田（こうでん）は、藉（しや）して税（ぜい）せず。市は廛（てん）して税（ぜい）せず。關（くわん）は譏（き）して征（せい）せず。林麓（りんろく）川澤（せんたく）は、 時を以て入りて、禁（きん）せず。夫れ圭田（けいでん）は征なし。〉

用民之力，歲不過三日。

〈民の力（ちから）を用ふるは、歳（とし）ごとに三 日に過ぎず。〉

田里不粥，墓地不請。

〈田里（でんり）は粥（う）らず、墓地（ぼち）は請（こ）はず。〉

司空執度度地，居民山川沮澤，時四時。量地遠近，興事任力。凡使民：任老者之事，食壯者之食。

〈司空（しくう）度（ど）を執（と）りて地を度（はか）り、民を居（お） く。山川（さんせん）沮澤（そたく）、四時（しじ）を時（じ）し、地の遠近（ゑんきん）を量（はか）り、事を興（おこ）し力に任（にん）ず。凡そ民を使 ふは、老者（らうしや）の事に任ぜしめ、壯者（さうしや）の食を食はしむ。〉

凡居民材，必因天地寒煖燥濕，廣谷大川異制。民生其間者異俗：剛柔輕重遲速異齊，五味異和，器械異制，衣服異宜。脩其教，不易其俗；齊其政，不易其宜。中國戎夷，五方之民，皆有性也，不可推移。東方曰夷，被髮文身，有不火食者矣。南方曰蠻，雕題交趾，有不火食者矣。西方曰戎，被髮衣皮，有不粒食者矣。北方曰狄，衣羽毛穴居，有不粒食者矣。中國、夷、蠻、戎、狄，皆有安居、和味、宜服、利用、備器，五方之民，言語不通，嗜欲不同。達其志，通其欲：東方曰寄，南方曰象，西方曰狄鞮，北方曰譯。

〈凡そ民材（みんざい）を居（お）くには、必ず 天地の寒煖（かんだん）燥濕（さうしつ）に因（よ）り、廣谷（くわうこく）大川（たいせん）制（せい）を異（こと）にす。民其間に生ずる者は俗（ぞく）を異にし、 剛柔（がうじう）輕重（けいぢゆう）遲速（ちそく）、齊（さい）を異にし、五味（み）、和（くわ）を異にし、器機（きかい）〔ママ〕、制（せい）を異にし、衣服（いふく）、宜（よろしき） を異にす、其教（をしへ）を脩（をさ）めて、其俗（ぞく）を易（か）へず、其政を齊（とゝの）へて、其宜（よろしき）を易へず。中 國戎夷（じゆうい）五方の民、皆性（せい）あり、推（お）し移（うつ）す可からず。東方を夷（い）と曰ふ、髪（かみ）を被（かうむ）り身（み） を文（もとろ）ぐ、火食（くわしよく）せざる者あり。南方（なんぱう）を蠻（ばん）と曰ふ。題（ひたひ）に雕（きざ）み趾（あし）を交（まじ）ふ、火食（くわしよく）せざ る者あり。西方を戎（じゆう）と曰ふ、髪（かみ）を被り、皮（かは）を衣（き）る粒食（りふしよく）せざる者あり。北方を狄（てき） と曰ふ、羽毛（うまう）を衣（き）、穴居（けつきよ）す、粒食（りふしよく）せざる者あり。中國夷（い）蠻（ばん）戎（じゆう）狄（てき）、皆安居（あんきよ）、和味（くわみ） 宜服（ぎふく）、利用（りよう）、備器（びき）あり。五方の民、言語（げんご）通（つう）せず、嗜欲（しよく）同じからず。其志（こゝろざし）を達（たつ） し、其欲を通ずるに、東方のを寄（き）と曰ひ、南方のを象（しやう）と曰ひ、西方のを狄鞮（てきてい）と 曰ひ、北方のを譯（えき）と曰ふ。〉

凡居民，量地以制邑，度地以居民。地、邑、民居，必參相得也。無曠土，無游民，食節事時，民咸安其居，樂事勸功，尊君親上，然後興學。

〈凡そ民を居（お）くに、地を量（はか）りて以て邑（いふ）を制（せい）し、地を度（はか） りて以て民を居く、地（ち）邑（いふ）民居（みんきよ）、必ず參（さん）して相得るなり。曠土（くわうど）なく、游民（いうみん）無く、 食（しよく）節（せつ）あり、事（こと）時（とき）あり、民咸（みな）其居に安んじ、事を樂（たのし）み功（こう）に勸（すゝ）め、君を尊（たふと）び上を 親（したし）み、然る後に學（がく）を興（た）つ。〉

司徒脩六禮以節民性，明七教以興民德，齊八政以防淫，一道德以同俗，養耆老以致孝，恤孤獨以逮不足，上賢以崇德，簡不肖以絀惡。命鄉，簡不帥教者以告。耆老皆朝于庠，元日，習射上功，習鄉上齒，大司徒帥國之俊士與執事焉。不變，命國之右鄉，簡不帥教者移之左，命國之左鄉，簡不帥教者移之右，如初禮。不變，移之郊，如初禮。不變，移之遂，如初禮。不變，屏之遠方，終身不齒。命鄉，論秀士，升之司徒，曰選士。司徒論選士之秀者而升之學，曰俊士。升於司徒者，不征於鄉；升於學者，不征於司徒，曰造士。樂正崇四術，立四教，順先王《詩》、《書》、《禮》、《樂》以造士。春秋教以《禮》、《樂》，冬夏教以《詩》、《書》。王大子，王子，群后之大子，〔公〕卿、大夫、元士之適子，國之俊選，皆造焉。凡入學以齒。將出學，小胥、大胥、小樂正簡不帥教者以告于大樂正。大樂正以告于王。王命三公、九卿、大夫、元士皆入學。不變，王親視學。不變，王三日不舉，屏之遠方。西方曰棘，東方曰寄，終身不齒。大樂正論造士之秀者以告于王，而升諸司馬，曰進士。司馬辨論官材，論進士之賢者以告於王，而定其論。論定然後官之，任官然後爵之，位定然後祿之。大夫廢其事，終身不仕，死以士禮葬之。有發，則命大司徒教士以車甲。凡執技論力，適四方，臝股肱，決射御。凡執技以事上者：祝、史、射、御、醫、卜及百工。凡執技以事上者：不貳事，不移官，出鄉不與士齒。仕於家者，出鄉不與士齒。

〈NDLJP:1118535/77 司徒（しと）六禮（れい）を脩（をさ）めて、以て民の性を節し、七教（けう）を明（あきら）かにして以て民の徳を興（おこ）し、 八政（せい）を齊（とゝの）へて以て民の淫（いん）を防（ふせ）ぎ、道徳（だうとく）を一にして以て俗（ぞく）を同じくし、耆老（きらう）を養（やしな） ひて以て孝（かう）を致し、孤獨（こどく）を恤（あはれ）みて以て足らざるに逮（およ）ぼし、賢（けん）を上にして以て徳 を崇（たふと）び、不肖（ふせう）を簡（えら）びて以て惡（あく）を絀（しりぞ）く。郷に命じて教に帥（したが）はざる者を簡（えら）びて以 て告げしむ。耆老（きらう）皆（みな）庠（しやう）に朝（てう）す。元日に射（しや）を習ふには功（こう）を上とし、郷（きやう）に習（なら）ふには 齒（よはひ）を上とす。大司徒（たいしと）國（くに）の俊士（しゆんし）を帥（ひき）ゐて、事を執るに與（あづか）る。變ぜざれば、國の右（いう） 郷（きやう）に命じて、教（をしへ）に帥（したが）はざる者を簡（えら）びて、之を左（ひだり）に移（うつ）し、國の左郷（さきやう）に命じて、 教に帥はざる者を簡びて、之を右に移（うつ）す。初（はじめ）の禮の如（ごと）くす。變（へん）ぜざれば、之を郊（かう） に移す。初の禮の如くす。變ぜざれば、之を遂（すゐ）に移す。初の禮の如くす。變ぜざ れば、之を遠方（ゑんぱう）に屏（しりぞ）けて、終身（しゆうしん）齒（よはひ）せず。郷（きやう）に命じて秀士（しうし）を論じて、之を司徒（しと） に升（のぼ）すを、選士（せんし）と曰ふ。司徒（しと）選士（せんし）の秀（ひい）でたる者（もの）を論じて、之を學に升（のぼ）すを、俊士（しゆんし）と 曰ふ。司徒に升さるゝ者は、郷に征（せい）せられず、學に升りたる者は、司徒に征せら れざるを、造士（ざうし）と曰ふ。樂正（がくせい）四術（しじゆつ）を崇（たふと）び、四教（けう）を立て、先王の詩（し）書（しよ）禮（れい）樂（がく）に順（したが） ひ、以て士を造（な）す。春秋（しゆんじう）は教ふるに禮（れい）樂（がく）を以てし、冬夏（とうか）は教ふるに詩（し）書（しよ）を以てす。 王の大子（たいし）、王子（わうじ）、羣后（ぐんこう）の大子（たいし）、卿（けい）大夫（たいふ）元士（げんし）の適子（てきし）、國の俊選（しゆんせん）皆造（いた）る。凡そ學に入る には齒（よはひ）を以てす。將（まさ）に學を出でんとすれば、小胥（しよ）、大胥（しよ）、小樂正（せうがくせい）、教に帥（したが）はざ る者を簡（えら）びて、以て大樂正（たいがくせい）に告げ、大樂正以て王に告ぐ。王三公（こう）九卿（けい）大夫（たいふ）元士（げんし） に命じ、皆學に入らしむ。變ぜざれば、王親（みづか）ら學を視（み）る。變ぜざれば、王三日擧 げず、之を遠方（ゑんぱう）に屏（しりぞ）く。西方（せいはう）を棘（ほく）と曰ひ、東方（とうはう）を寄（き）と曰ひ、終身（しゆうしん）齒（よはひ）せず。大樂（たいがく） 正（せい）造士（ざうし）の秀（ひいで）たる者（もの）を論じて、以て王に告げて、諸（これ）を司馬（しば）に升（のぼ）すを、進士（しんし）と曰ふ。 司馬（しば）、論を辨（べん）じ材（さい）を官（くわん）にし、進士（しんし）の賢者（けんしや）を論じて、以て王に告げて、其論を定 む。論（ろん）定（さだ）まりて然る後に之を官す。官に任じて然る後に之に爵（しやく）す。位（くらゐ）定まりて 然る後に之を祿（ろく）す。 NDLJP:1118535/78 大夫（たいふ）其事を廢（はい）すれば、終身（しゆうしん）仕（つか）へず。死すれば士（し）の禮を以て之を葬る。發（はつ）するこ とあれば、則ち大司徒（たいしと）に命じて、士（し）に教（をし）ふるに車甲（しやかふ）を以てせしむ。凡そ技（ぎ）を執（と） り力を論ずるものは、四方に適（ゆ）き、股肱（ここう）を臝（あらは）して、射御（しやぎよ）を決（けつ）せしむ。凡そ技（ぎ）を 執（と）りて以て上に事（つか）ふる者は、祝（しゆく）、史（し）、射（しや）、御（ぎよ）、醫（い）、卜（ぼく）、及び百工（ひやくこう）なり。凡そ技 を執りて以て上に事（つか）ふる者は、事を貳（ふたつ）にせず、官（くわん）を移さず、郷（きやう）を出づれば、 士（し）と齒（よはひ）せず。家（いへ）に仕（つか）ふる者は、郷を出づれば士と齒せず。〉

司寇正刑明辟以聽獄訟。必三刺。有旨無簡不聽。附從輕，赦從重。

〈NDLJP:1118535/79 司寇（しこう）、刑（けい）を正（たゞ）し辟（つみ）を明（あきら）かにし、以て獄訟（ごくしよう）を聽（き）く、必ず三刺（し）す。旨（むね）ありて簡（かん）な ければ聽（き）かず。附（つ）くるときは輕きに從ふ。赦（ゆる）すときは重（おも）きに從ふ。〉

凡制五刑，必即天論，郵罰麗於事。凡聽五刑之訟，必原父子之親，立君臣之義以權之。意論輕重之序，慎測淺深之量以別之。悉其聰明，致其忠愛以盡之。疑獄，氾與眾共之；眾疑，赦之。必察小大之比以成之。成獄辭，史以獄成告於正，正聽之。正以獄成告于大司寇，大司寇聽之棘木之下。大司寇以獄之成告於王，王命三公參聽之。三公以獄之成告於王，王三又，然後制刑。凡作刑罰，輕無赦。刑者侀也，侀者成也，一成而不可變，故君子盡心焉。析言破律，亂名改作，執左道以亂政，殺。作淫聲、異服、奇技、奇器以疑眾，殺。行偽而堅，言偽而辯，學非而博，順非而澤以疑眾，殺。假於鬼神、時日、卜筮以疑眾，殺。此四誅者，不以聽。凡執禁以齊眾，不赦過。有圭璧、金璋不粥於市。命服、命車不粥於市。宗廟之器不粥於市。犧牲不粥於市。戎器不粥於市。用器不中度，不粥於市。兵車不中度，不粥於市。布帛精麤不中數，幅廣狹不中量，不粥於市。姦色亂正色，不粥於市。錦文、珠玉成器不粥於市。衣服飲食不粥於市。五穀不時，果實未孰，不粥於市。木不中伐，不粥於市，禽獸魚鱉不中殺，不粥於市。關執禁以譏，禁異服，識異言。

〈凡そ五刑（けい）を制（せい） するには、必ず天論（てんりん）に即く、郵罰（いうばつ）事に麗（つ）く。凡そ五刑の訟（うつたへ）を聽くには、必ず父子（ふし）の 親（しん）に原（もとづ）く。君臣の義（ぎ）を立て、以て之を權（はか）る。意（い）輕重（けいぢゆう）の序（じよ）を論じ、愼（つゝし）みて淺深（せんしん）の 量（りやう）を測（はか）り、以て之を別（わか）つ。其聰明（さうめい）を悉（つく）し、其忠愛（ちうあい）を致（きは）めて、以て之を盡す。 疑獄（ぎご）は氾（ひろ）く衆（しう）と之を共にし、衆（しう）疑（うたが）ひて之を赦（ゆる）し、必ず小大の比（ひ）を察（さつ）して以て之 を成す。獄（ごく）の辭（ことば）を成せば、史（し）獄（ごく）の成るを以て、正に告げ、正之を聽（き）く。正（せい）獄（ごく）の 成るを以て、大司寇（たいしこう）に告げ、大司寇（たいしこう）之を棘木（きよぼく）の下（もと）に聽く。大司寇（たいしこう）獄（ごく）の成るを以て 王に告ぐ、王三公（こう）に命じて參（さん）して之を聽かしむ。三公（こう）獄（ごく）の成るを以て、王に告ぐ、王三（みたび）又（なだ）めて、然る後に刑（けい）を制（せい）す。凡そ刑罰（けいばつ）を作（な）すに、輕（かろ）きも赦（ゆる）すこと無し。刑（けい） は侀（けい）なり、侀（けい）は成（せい）なり。一たび成れば變ず可からず。故（ゆゑ）に君子心を盡くす。言（こと）を析（き） き律（りつ）を破（やぶ）り、名を亂（みだ）り作（さく）を改（あらた）め、左道（さだう）を執（と）りて以て政（まつりごと）を亂（みだ）すものは殺（ころ）す。淫聲（いんせい） 異服（いふく）、奇技（きぎ）奇器（きき）を作（つく）り、以て衆を疑（うたが）はしむるものは殺（ころ）す。行（おこなひ）僞（いつは）りて堅（けん）、言（こと）僞（いつは） りて辨（べん）、非（ひ）を學（まな）びて博（はく）、非（ひ）に順（したが）ひて澤（たく）、以て衆に疑はしむるものは殺す。鬼神（きしん） 時日（じじつ）卜筮（ぼぐぜい）を假（か）りて、以て衆を疑はしむるものは殺す。此の四誅（しちう）の者は、以て聽（ゆる）さ ず。 NDLJP:1118535/80 凡（およ）そ禁（きん）を執（と）りて以て衆を齊（ひと）しくするには、過（あやまち）を赦（ゆる）さず。圭璧（けいへき）金璋（きんしやう）あるもの 市（いち）に粥（うら）しめず、命服（めいふく）命車（めいしや）は、市（いち）に粥（うら）しめず、宗廟（そうべう）の器（き）は、市に粥（うら）しめず。犧牲（ぎせい）は、 市に粥（うら）しめず。戎器（じゆうき）は市に粥（うら）しめず。用器（ようき）度（ど）に中（あた）らざるは、市に粥（うら）しめず。兵車（へいしや） 度（ど）に中（あた）らざるは市に粥（うら）しめず。布帛（ふはく）精粗（せいそ）數（すう）に中（あた）らず、幅（ふく）の廣狹（くわうけふ）量（りやう）に中（あた）らざるは 市に粥（うら）しめず。姦色（かんしよく）の正色（せいしよく）を亂すものは、市に粥しめず。錦文（きんぶん）珠玉（しゆぎよく）成器（せいき）は市（いち） に粥（うら）しめず。衣服（いふく）飮食（いんしよく）は、市に粥しめず。五穀（こく）の時ならず、果實（くわじつ）の未だ熟（じゆく）せざ るものは、市に粥しめず。木の伐（ばつ）に中（あた）らざるは、市（いち）に粥しめず。禽獸（きんじう）魚鼈（ぎよべつ）の、殺（さつ） に中らざるは、市に粥（うら）しめず。關（くわん）禁（きん）を執（と）りて以て譏（み）、異服（いふく）を禁（きん）じ、異言（いげん）を識（しる）す。〉

大史典禮，執簡記，奉諱惡。

〈大史（たいし）禮（れい）を典（つかさど）り、簡記（かんき）を執（と）り、諱惡（きあく）を奉（ほう）ず。〉

天子齊戒受諫。司會以歲之成質於天子，冢宰齊戒受質。大樂正、大司寇、市，三官以其成從質於天子。大司徒、大司馬、大司空齊戒受質，百官各以其成質於三官。大司徒、大司馬、大司空以百官之成質於天子，百官齊戒受質。然後，休老勞農，成歲事，制國用。

〈天子齊戒（さいかい）して諫（いさめ）を受く、司會（しくわい）歳（とし） の成（せい）を以て、天子に質（ひと）しうす、冢宰（ちようさい）齊戒（さいかい）して質（しち）を受く。大樂正（たいがくせい）、大司寇（たいしこう）、市の三 官、其成を以て、從つて天子に質（たゞ）す。大司徒（たいしと）、大司馬（たいしば）、大司空（たいしくう）、齊戒（さいかい）して質（しち）を受 け、百官各〻（おの〳〵）其成を以て、三官に質（たゞ）す。大司徒、大司馬、大司空、百官の成を以 て、天子に質（たゞ）す。百官（ひやくくわん）齊戒（さいかい）して質（しつ）を受く。然る後に老（らう）を休（いこ）ひ農（のう）を勞（ねぎら）ひ、歳事（さいじ）を 成し、國用（こくよう）を制す。〉

凡養老：有虞氏以燕禮，夏后氏以饗禮，殷人以食禮，周人脩而兼用之。五十養於鄉，六十養於國，七十養於學，達於諸侯。

〈凡そ老（らう）を養（やしな）ふは、有虞氏（いうぐし）は燕禮（えんれい）を以てし、夏后氏（かこうし）は饗禮（きやうれい）を以てし、殷人（いんひと）は食（しよく） 禮（れい）を以てし、周人（しうひと）は脩（をさ）めて之を兼（か）ね用（もち）ひたり。五十をば郷（きやう）に養（やしな）ひ、六十をば國（くに） に養ひ、七十をば學（がく）に養ふ。諸侯に達す。〉

八十拜君命，一坐再至，瞽亦如之。九十使人受。五十異粻，六十宿肉，七十貳膳，八十常珍；九十飲食不離寢，膳飲從於遊可也。六十歲制，七十時制，八十月制；九十日脩，唯絞、紟、衾、冒死而后制。五十始衰，六十非肉不飽，七十非帛不煖，八十非人不煖，九十雖得人不煖矣。五十杖於家，六十杖於鄉，七十杖於國，八十杖於朝，九十者，天子欲有問焉，則就其室，以珍從。七十不俟朝，八十月告存，九十日有秩。五十不從力政，六十不與服戎，七十不與賓客之事，八十齊喪之事弗及也。五十而爵，六十不親學，七十致政。唯衰麻為喪。

〈八十は君命（くんめい）を拜（はい）するに、一坐（いちざ）再至（さいし）す。 瞽（こ）亦之（かく）の如し、九十は人をして受けしむ。五十は粻（かて）を異にし、六十は肉（にく）を宿し、 七十は膳（ぜん）を貳（に）にし、八十は常に珍（ちん）あり、九十は飮食（いんしよく）寢（しん）を離（はな）れず、膳飮（ぜんいん）遊（いう）に從（したが）ふ も可なり。六十は歳（とし）ごとに制し、七十は時ごとに制し、八十は月ごとに制（せい）し、九 十は日ごとに脩（をさ）む、唯（た）だ絞（かう）紟（きん）衾（きん）冒（ばう）は、死して而して后（のち）に制（せい）す。五十は始（はじ）めて衰（おとろ） ふ、六十は肉（にく）に非ざれば飽（あ）かず、七十は帛（きぬ）に非ざれば煖（あたゝ）ならず、八十は人に非 ざれば煖（あたゝか）ならず、九十は人を得（う）と雖（いへど）も煖（あたゝか）ならず。五十は家（いへ）に杖（つゑ）つき、六十は 郷（きやう）に杖（つゑ）つき、七十は國に杖つき、八十は朝（てう）に杖つく 九十の者は、天子問（と）ふこと あらんと欲（ほつ）せば、則ち其室（しつ）に就（つ）きて、珍（ちん）を以て從ふ。七十は朝（てう）を俟（ま）たず、八十は 月に存（そん）を告（と）ふ、九十は日に秩（ちつ）あり。五十は力政（りよくせい）に從はず、六十は服戎（ふくじゆう）に與（あづか）らず、 七十は賓客（ひんかく）の事に與（あづか）らず、八十は齊衰（さいさい）〔ママ〕の事は及ばざるなり。五十にして爵（しやく）す、 六十は親（みづか）ら學（まな）ばず、七十は政（まつりごと）を致（いた）す、唯だ衰麻（さいま）には喪（も）を爲す。〉

有虞氏養國老於上庠，養庶老於下庠。夏后氏養國老於東序，養庶老於西序。殷人養國老於右學，養庶老於左學。周人養國老於東膠，養庶老於虞庠：虞庠在國之西郊。有虞氏皇而祭，深衣而養老。夏后氏收而祭，燕衣而養老。殷人（哻）〔冔〕而祭，縞衣而養老。周人冕而祭，玄衣而養老。凡三王養老皆引年。八十者一子不從政，九十者其家不從政，廢疾非人不養者一人不從政。父母之喪，三年不從政。齊衰、大功之喪，三月不從政。將徙於諸侯，三月不從政。自諸侯來徙家，期不從政。

〈NDLJP:1118535/81 有虞氏（いうぐし）は國老（こくらう）を上庠（じやうしやう）に養（やしな）ひ、庶老（しよらう）を下庠（かしやう）に養（やしな）ふ。夏后氏（かこうし）は國老（こくらう）を東序（とうじよ）に 養ひ、庶老を西序（せいじよ）に養ふ。殷人（いんひと）は國老を右學（いうがく）に養ひ、庶老（しよらう）を左學（さがく）に養ふ。周人（しうひと）は 國老を東膠（とうかう）に養ひ、庶老を虞庠（ぐしやう）に養ふ。虞庠（ぐしやう）は國の西郊（せいかう）にあり。有虞氏（いうぐし）は皇（くわう）し て祭（まつ）り、深衣（しんい）して老を養ふ。夏后氏（かこうし）は收（しう）して祭り、燕衣（えんい）して老を養ふ。殷人（いんひと）は冔（く） して祭り、縞衣（かうい）して老を養ふ。周人（しうひと）は冕（べん）して祭り、玄衣（げんい）して老を養ふ。凡そ三王 老を養ふに皆引年（いんねん）す。八十の者は、一子政（まつりごと）に從（したが）はしめず。九十の者は、其家 政（せい）に從はしめず。廢疾（はいしつ）にして人に非ざれば養ふべからざる者は、一人政に從はし めず。父母（ふぼ）の喪（も）には、三年政（まつりごと）に從はしめず。齊衰（しさい）、大功（たいこう）の喪（も）には、三月政（まつりごと） に從はしめず。將（まさ）に諸侯（しよこう）に徙（うつ）らんとすれば、三月政に從はしめず。諸侯より來り て家（いへ）を徙（うつ）すものは、期（き）政（まつりごと）に從（したが）はしめず。〉

少而無父者謂之孤，老而無子者謂之獨，老而無妻者謂之矜，老而無夫者謂之寡。此四者，天民之窮而無告者也，皆有常餼。

〈少（わか）くして父なき者之を孤（こ）と謂ひ、老（お）い て子（こ）なき者之を獨（どく）と謂ひ、老（お）いて妻（さい）なき者之を矜（くわん）と謂ひ、老（お）いて夫（ふ）なき者之を寡（くわ） と謂（い）ふ。此の四の者は天民の窮して告ぐること無き者なり。皆常餼（じやうき）あり。〉

瘖、聾、跛、躃、斷者、侏儒、百工，各以其器食之。

〈瘖（いん）聾（ろう）、 跛（は）躄（へき）、斷者（だんしや）、侏儒（しゆじゆ）、百工（こう）は、各〻（おの〳〵）其器（き）を以て之を食（やしな）ふ。〉

道路：男子由右，婦人由左，車從中央。父之齒隨行，兄之齒鴈行，朋友不相踰。輕任并，重任分，班白不提挈。君子耆老不徒行，庶人耆老不徒食。

〈道路（だうろ）は男子（だんし）は右（みぎ）より し、婦人（ふじん）は左（ひだり）よりし、車（くるま）は中央（ちうあう）よりす。父の齒（よはひ）には隨行（ずゐかう）し、兄の齒（よはひ）には鴈行（がんかう） し、朋友（ほういう）には相（あひ）踰（こ）えず。輕任（けいにん）は并（あは）せ、重任（ぢゆうにん）は分（わ）け、斑白（はんぱく）の者は提挈（ていけつ）せず。君子の 耆老（きらう）は徒行（とかう）せず。庶人の耆老（きらう）は徒食（としよく）せず。〉

大夫祭器不假。祭器未成，不造燕器。

〈NDLJP:1118535/76 大夫は祭器假（か）らず。祭器未だ成らざ れば燕器を造らず。〉

方一里者，為田九百畝。方十里者，為方一里者百，為田九萬畝。方百里者，為方十里者百，為田九十億畝。方千里者，為方百里者百，為田九萬億畝。

〈NDLJP:1118535/82 方（はう）一里の者を田九百畝（ほ）と爲（な）し、方十里の者は方一里の者の百と爲し、田九萬（まん） 畝（ほ）と爲（な）し、方百里の者は、方十里の者の百と爲し、田九十億畝と爲し、方千里の 者は、方百里の者の百と爲し、田九萬億畝（まんおくほ）と爲す。〉

自恆山至於南河，千里而近。自南河至於江，千里而近。自江至於衡山，千里而遙。自東河至於東海，千里而遙。自東河至於西河，千里而近，自西河至於流沙，千里而遙。西不盡流沙，南不盡衡山，東不近東海，北不盡恆山，凡四海之內，斷長補短，方三千里，為田八十萬億一萬億畝。方百里者，為田九十億畝：山陵、林麓、川澤、溝瀆、城郭、宮室、塗巷，三分去一，其餘六十億畝。

〈恆山（こうざん）より南河（なんか）に至（いた）るまでに、 千里にして近く、南河（なんか）より江（かう）に至るまで、千里にして近し、江（かう）より衡山（かうざん）に至るまで 千里にして遙（はる）かなり、東河（とうか）より東海（とうかい）に至るまで、千里にして遙かなり、東河より 西河（せいか）に至るまで、千里にして近（ちか）し、西河より流沙（りうさ）に至（いた）るまで、千里にして遙かな り。西（にし）流沙（りうさ）を盡（つく）さず、南（みなみ）衡山（かうざん）を盡さず、東（ひがし）東海を盡さず、北恆山を盡さず。凡 そ四海（しかい）の内（うち）、長（ちやう）を斷（た）ち短（たん）を補（おぎな）へば、方三千里、田八十萬億（おく）一萬億畝（おくほ）と爲す。方 百里の者を、田九十億畝（おくほ）と爲し、山陵（さんりよう）、林麓（りんろく）、川澤（せんたく）、溝涜（こうとく）、城郭（じやうくわく）、宮室（きうしつ）、塗巷（とかう） は、三分（ぶん）して一を去（さ）り、其餘六十億畝あり。〉

古者以周尺八尺為步，今以周尺六尺四寸為步。古者百畝，當今東田百四十六畝三十步。古者百里，當今百（一）〔二〕十一里六十步四尺二寸二分。

〈古者（いにしへ）は周（しう）の尺（せき）八尺を以て歩と爲し、今周 の尺六尺四寸を以て歩（ほ）と爲す。古者（いにしへ）の百畝は、今の東田（とうでん）百四十六畝（ぼ）三十歩（ぼ）に當（あた）り、 古者（いにしへ）の百里は今の百二十一里六十歩（ぼ）、四尺二寸二分に當る。〉

方千里者，為方百里者百。封方百里者三十國，其餘，方百里者七十。又封方七十里者六十，為方百里者二十九，方十里者四十。其餘，方百里者四十，方十里者六十；又封方五十里者百二十，為方百里者三十，其餘，方百里者十，方十里者六十。名山大澤不以封，其餘以為附庸閒田。諸侯之有功者，取於閒田以祿之；其有削地者，歸之閒田。天子之縣內：方千里者，為方百里者百。封方百里者九，其餘方百里者九十一。又封方七十里者二十一，為方百里者十，方十里者二十九，其餘，方百里者八十，方十里者七十一。又封方五十里者六十三，為方百里者十五，方十里者七十五，其餘方百里者六十四，方十里者九十六。

〈NDLJP:1118535/83 方千里の者は、方百里の者百たり。方百里の者三十國を封ずれば、其餘りは方百 里の者七十あり。又方七十里の者六十を封（ほう）ずれば、方百里の者二十九。方十里の 者四十たり。其餘りは方百里の者四十、方十里の者六十あり。又方五十里の者百 二十を封（ほう）ずれば、方百里の者三十たり。其餘りは方百里の者十、方十里の者六十 あり。名山（めいざん）大澤（たいたく）は、以て封（ほう）ぜず。其餘りは以て附庸（ふよう）間田（かんでん）と爲（な）す。諸侯の功（こう）ある者 は、間田（かんでん）に取りて以て之を祿（ろく）し、其の地（ち）を削（けづ）らるゝ者あれば、之を間田（かんでん）に歸（き）す。天 子の縣内（けんない）、方千里の者は、方百里の者百たり、方百里の者十〔ママ〕を封ずれば、其餘り は方百里の者九十一あり。又方七十里の者二十一を封ずれば、方百里の者十と、 方十里の者二十九と爲る。其餘りは方百里の者八十、方十里の者七十一あり。又 方五十里の者六十三を封ずれば、方百里の者十五、方十里の者七十五と爲（な）る。其 餘りは方百里の者六十四、方十里の者九十六あり。〉

諸侯之下士祿食九人，中士食十八人，上士食三十六人。下大夫食七十二人，卿食二百八十八人。君食二千八百八十人。次國之卿食二百一十六人，君食二千一百六十人。小國之卿食百四十四人，君食千四百四十人。次國之卿，命於其君者，如小國之卿。天子之大夫為三監，監於諸侯之國者，其祿視諸侯之卿，其爵視次國之君，其祿取之於方伯之地。方伯為朝天子，皆有湯沐之邑於天子之縣內，視元士。諸侯世子世國，大夫不世爵。使以德，爵以功，未賜爵，視天子之元士，以君其國。諸侯之大夫，不世爵祿。

〈NDLJP:1118535/84 諸侯（しよこう）の下士は、祿（ろく）九人を食（やしな）ひ、中士は十八人を養（やしな）ひ、上士は三十六人を食ひ、 下大夫は七十二人を食ひ、卿（けい）は二百八十八人を食（やしな）ひ、君は二千八百八十人を食 ふ。次國（じこく）の卿（けい）は、二百一十六人を養（やしな）ひ、君は二千一百六十人を食ふ。小國（せうこく）の卿（けい） は百四十四人を食ひ、君は千四百四十人を食（やしな）ふ。次國（じこく）の卿（けい）、其君に命ぜらるゝ者 は、小國（せうこく）の卿（けい）の如し。天子の大夫、三監（かん）と爲りて、諸侯の國を監（かん）する者は、其祿 は諸侯の卿（けい）に視（なぞら）へ、其爵（しやく）は次國（じこく）の君に視（なぞら）へ、其祿（ろく）は之を方伯（はうはく）の地（ち）に取（と）る。方伯（はうはく） 天子に朝（てう）するが爲に、皆湯沐（たうもく）の邑（いふ）あり。天子（てんし）の縣内（けんない）に於て、元士に視ふ。諸侯の 世子（せいし）は國を世〻にす。大夫は爵を世〻にせず。使（つか）ふに徳（とく）を以てし、爵するに功を以 てす。未だ爵を賜（たま）はらざれば、天子の元士（げんし）に視へ、以て其國に君たり。諸侯の大夫（たいふ） は、爵祿（しやくろく）を世〻にせず。〉

六禮：冠、昏、喪、祭、鄉、相見。七教：父子、兄弟、夫婦、君臣、長幼、朋友、賓客。八政：飲食、衣服、事為、異別、度、量、數、制。

〈六禮（れい）とは冠（くわん）、昏（こん）、喪（さう）、祭（さい）、郷（きやう）、相見（しやうけん）なり。七教（けう）とは父子（ふし）、兄弟（けいてい）、夫婦（ふうふ）、君（くん） 臣（しん）、長幼（ちやうえう）、朋友（ほういう）、賓客（ひんかく）なり。八政（せい）とは飮食（いんしよく）、衣服（いふく）、事爲（じゐ）、異別（いべつ）、度（ど）、量（りやう）、數（すう）、 制（せい）なり。〉

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