山城の、井出や見ましと駒止めて。なほ水飼はん山吹の花の。露そふ春も暮れ。夏来にけらし見渡せば。浪の柵かけてより、卯の花咲ける津の国の里に。月日を送る間に。いつしか秋に近江なる、野路には人の明日も来ん。今を盛りの萩越えて、色なる浪にやどりにし、月の御空の冬ふかみ。雪気催ほす夕ざれば。汐風越して陸奥の、野田に千鳥の声淋し、ゆかし、名だたる武蔵野に晒す、さらす手づくりさらさらに。昔の人の恋しさも、今はたそひ奥山の、その流れをば忘れても、汲みやしつらん旅人の。高野の奥の水までも、名に流れたる、六つの玉川。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』中、武蔵野書院、1975年。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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