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  • 陣笠ひさしにも、もう夏らしい光りがきらきらと光っていた。 小幡が菩提所浄円寺は、かなりに大きい寺であった。門をはいると、山吹が一ぱいに咲いているが目についた。ふたりは住職に逢った。 住職は四十前後で、色の白い、髯(ひげ)あと青い人であった。客
    52キロバイト (10,355 語) - 2021年8月31日 (火) 23:10
  •  その日、半蔵は正香や景蔵らを馬籠宿はずれまで見送って、同じ道を自分家へ引き返した。三人客がわざわざ山吹村からさげて来てくれた祭典記念神酒(みき)と菓子折(おり)とがそのあとに残った。彼はそれを家神棚(かみだな)に供えて置いて、そばへ来る妻に言った。 「お民、このお神酒(みき)は家じゅうでいただこうぜ。お菓子もみんなに分けようぜ。」…
    648キロバイト (123,779 語) - 2019年9月29日 (日) 05:04
  • 田舎教師 (カテゴリ 日本近代文学)
     主客間には陶器手爐(てあぶ)りが二つ置かれて、菓子器には金米糖(こんぺいとう)〈[#ルビ「こんぺいとう」は底本では「こんいぺとう」]〉が入れられてあった。主僧とは正反対に体格がっしりした色の黒い細君が注(つ)いで行った茶は冷たくなったまま黄(き)いろくにごっていた。  一時間のちには、二人
    509キロバイト (98,550 語) - 2023年11月4日 (土) 14:56
  • 虞美人草 (カテゴリ 日本小説)
    「いやあ亡国菓子が来た」 「亡国菓子とは何だい」と甲野さんは茶碗を引き寄せる。 「亡国菓子さハハハハ。糸公知ってるだろう亡国菓子由緒(いわれ)を」と云いながら角砂糖を茶碗中へ抛(ほう)り込む。蟹(かに)ような泡(あわ)が幽(かす)かな音を立てて浮き上がる。…
    711キロバイト (133,899 語) - 2023年10月17日 (火) 13:49
  • 青草 (カテゴリ 日本近代文学)
    に、まだ表一畳台上に色の褪(さ)めた赤い毛布が掛けて、パン菓子などを入れた硝子(ガラス)傍に蜜柑や林檎(りんご)が電燈を浴びて艶(あでや)かに光っていた。塩塗(まみ)れ附いたうで卵鉢も並んでいる。西洋料理と白く抜いた長い紅提灯軒先に吊された店にはうどん看板や親子どんぶり立て看板なども立てかけてあった。…
    45キロバイト (9,267 語) - 2021年8月31日 (火) 22:43
  • 義経記 (カテゴリ 日本中世文学)
    尉は、紺葛袴に、木賊色の水干に、立烏帽子、紫檀胴に羊皮にて張りたる鼓、六調を掻き合はせて、左脇にかい挟みて、袴稜高らかに差し挟み、上の松山廻廊天井に響かせ、手打ち鳴らして、残楽党を待ちかけたり。梶原は紺葛袴に山鳩色の水干、立烏帽子、南鐐を以て作りたる金
    482キロバイト (112,842 語) - 2023年1月24日 (火) 19:22
  • づから捨て難き折もあるべし。月夜、雪朝、花もとにても、心のどかに物語して、杯いだしたる、萬興を添ふるわざなり。つれ〴〵なる日、思ひ外に友入り來て、取り行ひたるも心慰む。なれ〳〵しからぬあたり〔高貴人〕の御うちより、御菓子
    253キロバイト (51,502 語) - 2024年2月25日 (日) 09:53
  • 九郎兵衛でも来て、肥(ふと)った大きなからだで、皆間に割り込もうものなら、伊之助周囲(まわり)は男においでぷんぷんする。彼はそれらの人たちを相手に、東海道方に動いて行く鳳輦を想像し、菊の御ついた深紅色の錦(にしき)の御旗(みはた)続くさかんな行列を想像し、惣萌黄(そうもえぎ)
    622キロバイト (119,815 語) - 2019年9月29日 (日) 05:04
  • を愛して、直次梳(す)いてくれたを総髪(そうがみ)にゆわせ、好きな色の紐(ひも)を後ろ方に結びさげていた。吉左衛門時代から出入りする直次は下女お徳父親に当たる。 「お民、おれは王滝方へ出かけるんだぜ。」  それをみんなまで言わせないうちに、お民は夫様子をみて取った。妻籠
    731キロバイト (142,362 語) - 2019年9月29日 (日) 05:05
  • の御祝儀を申し上げるとか、能(おう)拝見を許されるとか、または両山の御霊屋(おたまや)へ参詣(さんけい)するとかほかには、人質も同様に、堅固で厳重な武家屋敷なかにこもり暮らしていたどこ簾中(れんちゅう)とかどこ若殿とかいうような人たちが、まるで手足
    704キロバイト (133,425 語) - 2019年9月29日 (日) 05:04