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  • ん、姐御が、この寺にいるなら、早速知らせて上げておくんなせえ」 「いうにゃ及ぶだ――お杉さんはまさか口は割るめえが、浪人衆の方の門人か何かが、行く先きを知ってて、しゃってしまえばそれッきりだ」 と、前庭を、書院座敷の方へ駆け出す吉のあとから、闇太郎は、ぬからず跟て行った。…
    50キロバイト (9,683 語) - 2019年2月27日 (水) 15:15
  • してしまった法印には、心からの、うれしい笑がおとしか思われないのだ。 「ねえ、お初つん、おいらは、あの荒波にかこまれた、三宅の島のいのち懸けで抜け出して娑婆(しゃば)の風にふかれてこの方、こんなにいい気持に酔っらったことあねえぜ。それというのも、おまはんが、程のいい人だからよ。何にしてもすばら…
    86キロバイト (16,141 語) - 2019年9月12日 (木) 12:49
  • ゃそう思っているんだもの、お話にならない」 「馬鹿だなあ」 「役者が、馬鹿なのよ」 「じゃあ、なんだって、そんな馬鹿なものになったんだい?」 「それ、仕方がないわ。それじゃ、あんたは、また何だって戦(いくさ)になんか行ったの?」 「おとなりのマメリューク・スルタンの国でパルチザン共がストライキを起こして暴れるので鎮めに行ったのさ」…
    10キロバイト (1,932 語) - 2019年9月29日 (日) 04:57
  • 馬鹿におもしろくなったぞ。ねえさん、さあ、炉の榾火(ほだび)に、おあたんなせえと言ったら――」 と、しつッこく手を取るのを、又も、引ッずして、浪路は、 「無礼もの!退(さが)れと言うたら!」 つと、立ち上がるのを、引きすえるあらくれ男たち、 「へ、へ、へ、おひさま、まあ、そう、お腹を立てねえで――」…
    88キロバイト (16,550 語) - 2019年3月1日 (金) 06:32
  •  一週間経つと花嫁と花嫁とも交際をはじめた。 「――お隣の奥さん、今日も一日遊んでらしたのよ。」  そうAの細君が、勤めから退けて来たAに報告(おしえ)るのであった。 「二人で、どんな話をして遊ぶんだい?」 「あの方、それ明けっぴろげで何でも云うの。あたし、幾度も返事が出来なくて困ったわ。」 「たとえば?」…
    26キロバイト (5,141 語) - 2023年2月2日 (木) 13:01
  • ――たしかに聴き覚えのある声だ―― と、闇太郎が、思わず、そうつぶやたとき、戸外の相手も、ギクリとしたもののように叫んだ。 「ああ、そうゃあ、おまえさんの声にも、覚えがあるが――」 「誰だ?名乗れ」 「おッ!」 と、外の男は、わめいた。 「こいつけねえ!おまはんは!」 逃げ足が立った容子!…
    106キロバイト (20,113 語) - 2019年2月27日 (水) 15:14
  • えものさ。でも、引っかえして来てくれてよかった。 ろ気が薄くっていいというので、たった一人、側に置かれているむく犬、駄犬ほどには主人おもいだ。 ――どれ、じゃあ、ひとつ、あいつのつらでも見てくるかな。 裏口から、草履を突っかけて出ようとすると、婆やが、 「吉ッつ
    58キロバイト (11,125 語) - 2019年3月1日 (金) 06:31
  • をきっかけにはずんだ語勢で、これだけはいつかはいってやろうと前々から腹にためこんでいたらしい言葉をとうとう口から吐き出すのだった。 「時にね、順吉つん、おまえさんもさ、考えてみりゃずいぶんつまらんことになったもんじゃないか、ええ?、満足に行ってりゃ、おまえさんも今時分は役人か弁護士か銀行員なんぞ…
    116キロバイト (23,537 語) - 2021年8月31日 (火) 22:35
  • )でなく、座興の添え方やもてなし振りは、すっかり理想的でした。 「今夜は非常に面白かったね、あの連中にときどき会うのも悪くはないよ」 私とナオミとは、終列車で帰る彼等を停車場まで送って行って、夏の夜道を手を携えて歩きながら話しました。星のきれいな、海から吹て来る風の涼しい晩でした。…
    576キロバイト (106,275 語) - 2023年10月17日 (火) 13:48
  • た敬太郎は、この時須永に「江戸っ子は贅沢(ぜいたく)なものだね。細君を貰うときにもそう贅沢を云うかね」と聞た。 「云えれば誰だって云うさ。何も江戸っ子に限りしない。君みたような田舎(いなか)ものだって云うだろう」  須永はこう答えて澄まして
    677キロバイト (132,287 語) - 2022年4月2日 (土) 11:15