極東国際軍事裁判速記録第一号

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亞米利加合衆國、中華民國、大不列顚北愛蘭聯合王國、「ソビエツト」社會主義共和國聯邦、濠洲聯邦、加奈陀、佛蘭西共和國、和蘭王國、新西蘭、印度及ビ比律賓國

被吿 荒木 貞夫   土肥原賢二

橋本欣五郞   畑  俊六

平沼騏一郞   廣田 弘毅

星野 直樹   板垣征四郞

賀屋 興宣   木戶 幸一

木村兵太郞   小磯 國昭

松井 石根   松岡 洋右

南  次郞   武藤  章

永野 修身   岡  敬純

大川 周明   大島  浩

佐藤 賢了   重光  葵

嶋田繁太郞   白鳥 敏夫

鈴木 貞一   東鄕 茂德

東條 英機   梅津美治郞

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昭和二十一年五月三日(金曜日)

東京都舊陸軍省內極東國際軍事裁判所法廷ニ於テ

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午前十一時二十分開廷

ヴアンミーター執行官 玆に極東國際軍事裁判所を開廷し、當裁判所に提示さるる如何なる問題に關しても聽取せんとするものであります。

ウエツブ裁判長 今日此の法廷に集合するに先だち、私共は恐るる所なく、且つ依姑贔負或は愛情に支配さるることなく、法に照し公明正大なる判決を下すべしとの共同宣言に署名したのであります。私共は我々に課せられました責任の如何に重大であるかを十分に認識して居るのであります。今囘の如き重要な刑事裁判は、實に世界史上に其の比を見ないのであります。言ふまでもなく我が裁判所はベレス又はヘスチングを彈劾すべく開會せられた上院或は貴族院と異つて、各國の高級司法官より選拔せられました一般人士に依りて構成せられた裁判所であります。一方今囘起訴せられ當裁判所に出頭して居る各被吿は、一地方知事の如き渺たる存在ではなく、過去十有餘年の間、卽ち日本の國運隆々として居りました當時、指導的立場を占めて居たものばかりで、元首相、外相、藏相、參謀總長、軍令部長其の他日本政府の最高の地位に在りました者を含むものであります。是等被吿の問はるる罪は、世界平和に對する罪、戰時法規違反の罪及び人道に對する罪並に是等の罪を犯す共同謀議であります。

起訴されて居ります罪は其の數の多いこと、其の規模の廣汎なることに鑑み、之を裁く裁判所として、最も適當なるものは國際的性質を有する軍事裁判所、卽ち日本を屈服せしめたる聯合國の代表者を以て構成せられた裁判所であるとの決定を見たのであります。是等の被吿が從來保有して居ました地位が如何に重要なものであつたに致しましても、是が爲め彼等は最も貧しき一日本兵卒或は一朝鮮人番兵などが受ける待遇よりもより良い待遇を受けしめる理由となりませぬ。倂し是等被吿の問はれる罪の數及び其の特異性は、提示さるべき證據に關し、當裁判所の最も細心の審査考慮を絕對必要とするものであると共に、彼等被吿に對し適用すべき法規に付ても、最も愼重に是を認定しなければならないのであります。

當裁判所の大なる任務は、事實と法との兩者に付き虛心坦懷公平なる態度を持するのにあるのであります。檢察側は被吿の問はれた罪が疑念を挾む餘地なきものなることを立證するの責任を持つのであります。

本裁判所を設定しました條例は、裁判所に對し公正且つ迅速なる裁判を行ふことを命ずるのであります。仍て私共は被吿に對して公正なる裁判を確保し得る限度に於て、迅速なる裁判を行ふことを旨とするのであります。倂しながら日英兩語にて公判を行ふ關係上、是が延引を來すが如きは蓋し不可避な事態でありませう。裁判所條例は豫備公判に言及して居ります。當裁判所は之を考慮に入れて審理を短縮する爲め、實際上議論の存しない證據書類及び諸事實の提示に關し、檢察側、辯護人側兩者の事前諒解を求める目的を以て近き將來に於て右兩者の會合を當法廷に於て開催する所存であります。

キーナン檢事 私は檢察側を代表致しまして、私の學識ある同僚と共に出廷致して居ります。御許可を得まして法廷に提出致したいものがございます。

向  哲  濬

裁事、上海高等法院檢事長。

コミンズ、カー氏

大ブリテン王國を代表して居ります。

S・A・ゴルンスキー

外務省條約局長、ソビエツト聯邦を代表して居られます。

A・J・マンスフイールド

濠洲高等法院判事、濠洲を代表して居られます。

ジエー、ゴエル、オネトー

補佐檢察官代理、フランスを代表して居られます。

ボルゲンホフ・マルテル

オランダ王國を代表して居られます。

R・H・クイリアム氏

ニユージーランドを代表して居られます。

ゴビンダ・メノン氏

インドの代表檢察官はまだ到着されませんで、數日中におゐでになります。

ペドロ・ロペス

代議士、フイリピン聯邦の代表であられます。

ヴアンミーター執行官 必要なる宣誓を致します。

〔宣誓〕

ウエツブ裁判長 二人被吿が缺席して居りますが、只今から二時半まで休憩を致します。

午前十一時四十二分休憩

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午後二時四十分開廷

キーナン檢事 裁判長閣下、私は起訴狀が朗讀されることを求めます。又は被吿人或は被吿人を代表する辯護人が、其の朗讀の權利を放棄するかどうかを質問されることを求めます。

ウエツブ裁判長 放棄致しませぬ。執行官ヴアンミーターさんに讀んで戴きます。

〔執行官起訴狀朗讀〕

〔執行官起訴狀朗讀中〕

高柳辯護人 裁判長閣下、抗議を申込みたいと思ひます。飜譯に誤りがあります。バースンズ・オン・ザ・ハイシーズは「洋上漂流者」でなくして「公海漂流者」であります。英語竝に日本を知つて居る者として、此の起訴狀の中には明かな誤りがあると思ひます。

〔執行官訴因第二十二まで朗讀〕

ウエツブ裁判長 只今より十五分間の休憩に移ります。

午後三時四十五分休憩

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午後四時五分開廷

大原辯護人 審理の途中でございますが、被吿人大川周明さんの辯護人大原であります。昨日お手許に差出しました申請書に付いて‥‥

ウエツブ裁判長 御名前は何と仰しやいますか。

大原辯護人 大川周明の辯護人大原信一と申します。審理の途中ございますが、昨日御手許に申請書を差出しました。其の事項に付て申上げたいと思ひます。但し此の內容に付きましては、御手許に差出しました書面の通りの內容でございますから、それを言葉にすることなく、此の內容に從つて御處理願ひたいと思ひます。

ウエツブ裁判長 其の申請に關しては後で提出して下さい。是は後で採用致します。只今は之を審議すべき時期ではありませぬ。

〔執行官訴因第四十七まで朗讀〕

ウエツブ裁判長 本公判は明日の午前九時三十分まで休廷致します。

午後四時五十分休廷

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  1. 法律命令及官公文書
  2. 新聞紙又ハ雑誌ニ掲載シタル雑報及時事ヲ報道スル記事
  3. 公開セル裁判所、議会並政談集会ニ於テ為シタル演述

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