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議院法

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明治22年法律第2号から転送)

原文

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朕󠄁樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ議院法ヲ裁可シ之ヲ公󠄁布セシメ倂セテ貴族院及衆議院成立ノ日ヨリ各〻本法ニ依リ施行スヘキコトヲ命ス

御名御璽

明治二十二年二月十一日

內閣總理大臣 伯爵󠄂 黑田淸隆
樞密院議長 伯爵󠄂 伊藤博󠄁文󠄁
外務大臣 伯爵󠄂 大隈重信
海軍大臣 伯爵󠄂 西鄕從道󠄁
農商務大臣 伯爵󠄂 井上 馨
司法大臣 伯爵󠄂 山田顯義
大藏大臣兼內務大臣 伯爵󠄂 松󠄁方正義
陸軍大臣 伯爵󠄂 大山 巖
文󠄁部大臣 子爵󠄂 森 有禮
遞信大臣 子爵󠄂 榎本武揚


法律第二號

議院法
第一章 帝國議會ノ召集成立及開會
第一條
帝國議會召集ノ勅諭ハ集會ノ期日ヲ定メ少クトモ四十日前󠄁ニ之ヲ發布スヘシ

第二條
議員ハ召集ノ勅諭ニ指定シタル期日ニ於テ各議院ノ會堂ニ集會スヘシ
第三條
衆議院ノ議長副議長ハ其ノ院ニ於テ各〻三名ノ候補者ヲ選󠄁擧セシメ其ノ中ヨリ之ヲ勅任スヘシ
議長副議長ノ勅任セラルヽマテハ書記官長議長ノ職務ヲ行フヘシ
第四條
各議院ハ抽籤法ニ依リ總議員ヲ數部ニ分󠄁割シ每部々長一名ヲ部員中ニ於テ互選󠄁スヘシ
第五條
兩議院成立シタル後勅命ヲ以テ帝國議會開會ノ日ヲ定メ兩院議員ヲ貴族院ニ會合セシメ開院式ヲ行フヘシ
第六條
前󠄁條ノ場合ニ於テ貴族院議長ハ議長ノ職務ヲ行フヘシ
第二章 議長書記官及經費
第七條
各議院ノ議長副議長ハ各〻一員トス
第八條
衆議院ノ議長副議長ノ任期ハ議員ノ任期ニ依ル
第九條
衆議院ノ議長副議長辭職又ハ其ノ他ノ事故ニ由リ闕位トナリタルトキハ繼任者ノ任期ハ仍前󠄁任者ノ任期ニ依ル
第十條
各議院ノ議長ハ其ノ議院ノ秩序ヲ保持シ議事ヲ整理シ院外ニ對シ議院ヲ代表ス
第十一條
議長ハ議會閉會ノ間ニ於テ仍其ノ議院ノ事務ヲ指揮ス
第十二條
議長ハ常任委員會及特別委員會ニ臨席シ發言スルコトヲ得但シ表決ノ數ニ預カラス
第十三條
各議院ニ於テ議長故障アルトキハ副議長之ヲ代理ス
第十四條
各議院ニ於テ議長副議長俱ニ故障アルトキハ假議長ヲ選󠄁擧シ議長ノ職務ヲ行ハシムヘシ
第十五條
各議院ノ議長副議長ハ任期滿限ニ達󠄁スルモ後任者勅任セラルヽマテハ仍其ノ職務ヲ繼續スヘシ
第十六條
各議院ニ書記官長一人書記官數人ヲ置ク
書記官長ハ勅任トシ書記官ハ奏任トス
第十七條
書記官長ハ議長ノ指揮ニ依リ書記官ノ事務ヲ提理シ公󠄁文󠄁ニ署名ス
書記官ハ議事錄及其ノ他ノ文󠄁書案ヲ作リ事務ヲ掌理ス
書記官ノ外他ノ必要ナル職員ハ書記官長之ヲ任ス
第十八條
兩議院ノ經費ハ國庫ヨリ之ヲ支出ス
第三章 議長副議長及議員歲費
第十九條
各議院ノ議長ハ歲費トシテ四千圓副議長ハ二千圓貴族院ノ被選󠄁及勅任議員及衆議院ノ議員ハ八百圓ヲ受ケ別ニ定ムル所󠄁ノ規則ニ從ヒ旅費ヲ受ク但シ召集ニ應セサル者ハ歲費ヲ受クルコトヲ得ス
議長副議長及議員ハ歲費ヲ辭スルコトヲ得ス
官吏󠄁ニシテ議員タル者ハ歲費ヲ受クルコトヲ得ス
第二十五條ノ場合ニ於テハ第一項歲費ノ外議院ノ定ムル所󠄁ニ依リ一日五圓ヨリ多カラサル手當ヲ受ク
第四章 委員
第二十條
各議院ノ委員ハ全󠄁院委員常任委員及特別委員ノ三類トス
全󠄁院委員ハ議院ノ全󠄁員ヲ以テ委員ト爲スモノトス
常任委員ハ事務ノ必要ニ依リ之ヲ數科ニ分󠄁割シ負󠄁擔ノ事件ヲ審査スル爲ニ各部ニ於テ同數ノ委員ヲ總議員中ヨリ選󠄁擧シ一會期中其ノ任ニ在ルモノトス
特別委員ハ一事件ヲ審査スル爲ニ議院ノ選󠄁擧ヲ以テ特ニ付託ヲ受クルモノトス
第二十一條
全󠄁院委員長ハ一會期コトニ開會ノ始ニ於テ之ヲ選󠄁擧ス
常任委員長及特別委員長ハ各委員會ニ於テ之ヲ互選󠄁ス
第二十二條
全󠄁院委員會ハ議院三分󠄁ノ一以上常任委員會及特別委員會ハ其ノ委員半󠄁數以上ノ出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第二十三條
常任委員會及特別委員會ハ議員ノ外傍聽ヲ禁ス但シ委員會ノ決議ニ由リ議員ノ傍聽ヲ禁スルコトヲ得
第二十四條
各委員長ハ委員會ノ經過󠄁及結果ヲ議院ニ報告スヘシ
第二十五條
各議院ハ政府ノ要求ニ依リ又ハ其ノ同意ヲ經テ議會閉會ノ間委員ヲシテ議案ノ審査ヲ繼續セシムルコトヲ得
第五章 會議
第二十六條
各議院ノ議長ハ議事日程ヲ定メテ之ヲ議院ニ報告ス
議事日程ハ政府ヨリ提出シタル議案ヲ先ニスヘシ但シ他ノ議事緊急󠄁ノ場合ニ於テ政府ノ同意ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十七條
法律ノ議案ハ三讀會ヲ經テ之ヲ議決スヘシ但シ政府ノ要求若ハ議院十人以上ノ要求ニ由リ議院ニ於テ出席議員三分󠄁ノ二以上ノ多數ヲ以テ可決シタルトキハ三讀會ノ順序ヲ省略スルコトヲ得
第二十八條
政府ヨリ提出シタル議案ハ委員ノ審査ヲ經スシテ之ヲ議決スルコトヲ得ス但シ緊急󠄁ノ場合ニ於テ政府ノ要求ニ由ルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二十九條
凡テ議案ヲ發議シ及議院ノ會議ニ於テ議案ニ對シ修正ノ動議ヲ發スルモノハ二十人以上ノ贊成アルニ非サレハ議題ト爲スコトヲ得ス
第三十條
政府ハ何時タリトモ既ニ提出シタル議案ヲ修正シ又ハ撤囘スルコトヲ得
第三十一條
凡テ議案ハ最後ニ議決シタル議院ノ議長ヨリ國務大臣ヲ經由シテ之ヲ奏上スヘシ
但シ兩議院ノ一ニ於テ提出シタル議案ニシテ他ノ議院ニ於テ否決シタルトキハ第五十四條第二項ノ規定ニ依ル
第三十二條
兩議院ノ議決ヲ經テ奏上シタル議案ニシテ裁可セラルヽモノハ次󠄁ノ會期マテニ公󠄁布セラルヘシ
第六章 停會閉會
第三十三條
政府ハ何時タリトモ十五日以內ニ於テ議院ノ停會ヲ命スルコトヲ得
議院停會ノ後再ヒ開會シタルトキハ前󠄁會ノ議事ヲ繼續スヘシ
第三十四條
衆議院ノ解散ニ依リ貴族院ニ停會ヲ命シタル場合ニ於テハ前󠄁條第二項ノ例ニ依ラス

第三十五條
帝國議會閉會ノ場合ニ於テ議案建󠄁議請󠄁願ノ議決ニ至ラサルモノハ後會ニ繼續セス但シ第二十五條ノ場合ニ於テハ此ノ限ニ在ラス
第三十六條
閉會ハ勅命ニ由リ兩議院合會ニ於テ之ヲ擧行スヘシ
第七章 祕密會議
第三十七條
各議院ノ會議ハ左ノ場合ニ於テ公󠄁開ヲ停ムルコトヲ得
一 議長又ハ議員十人以上ノ發議ニ由リ議院之ヲ可決シタルトキ
二 政府ヨリ要求ヲ受ケタルトキ
第三十八條
議長又ハ議員十人以上ヨリ祕密會議ヲ發議シタルトキハ議長ハ直ニ傍聽人ヲ退󠄁去セシメ討論ヲ用井スシテ可否ノ決ヲ取ルヘシ
第三十九條
祕密會議ハ刊行スルコトヲ許サス
第八章 豫算案ノ議定
第四十條
政府ヨリ豫算案ヲ衆議院ニ提出シタルトキハ豫算委員ハ其ノ院ニ於テ受取リタル日ヨリ十五日以內ニ審査ヲ終リ議院ニ報告スヘシ
第四十一條
豫算案ニ就キ議院ノ會議ニ於テ修正ノ動議ヲ發スルモノハ三十人以上ノ贊成アルニ非サレハ議題ト爲スコトヲ得ス
第九章 國務大臣及政府委員
第四十二條
國務大臣及政府委員ノ發言ハ何時タリトモ之ヲ許スヘシ但シ之カ爲ニ議員ノ演說ヲ中止セシムルコトヲ得ス
第四十三條
議院ニ於テ議案ヲ委員ニ付シタルトキハ國務大臣及政府委員ハ何時タリトモ委員會ニ出席シ意見ヲ述󠄁フルコトヲ得
第四十四條
委員會ハ議長ヲ經由シテ政府委員ノ說明ヲ求ムルコトヲ得
第四十五條
國務大臣及政府委員ハ議員タル者ヲ除ク外議院ノ會議ニ於テ表決ノ數ニ預カラス
第四十六條
常任委員會又ハ特別委員會ヲ開クトキハ每會委員長ヨリ其ノ主󠄁任ノ國務大臣及政府委員ニ報知スヘシ
第四十七條
議事日程及議事ニ關ル報告ハ議員ニ分󠄁配󠄁スルト同時ニ之ヲ國務大臣及政府委員ニ送󠄁付スヘシ
第十章 質問
第四十八條
兩議院ノ議員政府ニ對シ質問ヲ爲サムトスルトキハ三十人以上贊成者アルヲ要ス
質問ハ簡明ナル主󠄁意書ヲ作リ贊成者ト共ニ連署シテ之ヲ議長ニ提出スヘシ
第四十九條
質問主󠄁意書ハ議長之ヲ政府ニ轉送󠄁シ國務大臣ハ直ニ答辯ヲ爲シ又ハ答辯スヘキ期日ヲ定メ若答辯ヲ爲サヽルトキハ其ノ理由ヲ示明スヘシ
第五十條
國務大臣ノ答辯ヲ得又ハ答辯ヲ得サルトキハ質問ノ事件ニ付議員ハ建󠄁議ノ動議ヲ爲スコトヲ得
第十一章 上奏及建󠄁議
第五十一條
各議院上奏セムトスルトキハ文󠄁書ヲ奉呈󠄁シ又ハ議長ヲ以テ總代トシ謁見ヲ請󠄁ヒ之ヲ奉呈󠄁スルコトヲ得
各議院ノ建󠄁議ハ文󠄁書ヲ以テ政府ニ呈󠄁出スヘシ
第五十二條
各議院ニ於テ上奏又ハ建󠄁議ノ動議ハ三十人以上ノ贊成アルニ非サレハ議題ト爲スコトヲ得ス
第十二章 兩議院關係
第五十三條
豫算ヲ除ク外政府ノ議案ヲ付スルハ兩議院ノ內何レヲ先ニスルモ便󠄁宜ニ依ル
第五十四條
甲議院ニ於テ政府議案ヲ可決シ又ハ修正シテ議決シタルトキハ乙議院ニ之ヲ移スヘシ乙議院ニ於テ甲議院ノ議決ニ同意シ又ハ否決シタルトキハ之ヲ奏上スルト同時ニ甲議院ニ通󠄁知スヘシ
乙議院ニ於テ甲議院ノ提出シタル議案ヲ否決シタルトキハ之ヲ甲議院ニ通󠄁知スヘシ
第五十五條
乙議院ニ於テ甲議院ヨリ移シタル議案ニ對シ之ヲ修正シタルトキハ之ヲ甲議院ニ囘付スヘシ甲議院ニ於テ乙議院ノ修正ニ同意シタルトキハ之ヲ奏上スルト同時ニ乙議院ニ通󠄁知スヘシ若之ニ同意セサルトキハ兩院協議會ヲ開クコトヲ求ムヘシ
甲議院ヨリ協議會ヲ開クコトヲ求ムルトキハ乙議院ハ之ヲ拒ムコトヲ得ス
第五十六條
兩院協議會ハ兩議院ヨリ各〻十人以下同數ノ委員ヲ選󠄁擧シ會同セシム委員ノ協議案成立スルトキハ議案ヲ政府ヨリ受取リ又ハ提出シタル甲議院ニ於テ先ツ之ヲ議シ次󠄁ニ乙議院ニ移スヘシ
協議會ニ於テ成立シタル成案ニ對シテハ更󠄁ニ修正ノ動議ヲ爲スコトヲ許サス
第五十七條
國務大臣政府委員及各議院ノ議長ハ何時タリトモ兩院協議會ニ出席シテ意見ヲ述󠄁フルコトヲ得
第五十八條
兩院協議會ハ傍聽ヲ許サス
第五十九條
兩院協議會ニ於テ可否ノ決ヲ取ルハ無名投票ヲ用井可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所󠄁ニ依ル
第六十條
兩院協議會ノ議長ハ兩議院協議委員ニ於テ各〻一員ヲ互選󠄁シ每會更󠄁代シテ席ニ當ラシムヘシ其ノ初會ニ於ケル議長ハ抽籤法ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條
本章ニ定ムル所󠄁ノ外兩議院交󠄁渉事務ノ規程ハ其ノ協議ニ依リ之ヲ定ムヘシ
第十三章 請󠄁願
第六十二條
各議院ニ呈󠄁出スル人民ノ請󠄁願書ハ議員ノ紹介ニ依リ議院之ヲ受取ルヘシ
第六十三條
請󠄁願書ハ各議院ニ於テ請󠄁願委員ニ付シ之ヲ審査セシム
請󠄁願委員請󠄁願書ヲ以テ規程ニ合ハスト認󠄁ムルトキハ議長ハ紹介ノ議員ヲ經テ之ヲ却下スヘシ
第六十四條
請󠄁願委員ハ請󠄁願文󠄁書表ヲ作リ其ノ要領ヲ錄シ每週󠄁一囘議院ニ報告スヘシ
請󠄁願委員特別ノ報告ニ依レル要求又ハ議員三十人以上ノ要求アルトキハ各議院ハ其ノ請󠄁願事件ヲ會議ニ付スヘシ
第六十五條
各議院ニ於テ請󠄁願ノ採󠄁擇スヘキコトヲ議決シタルトキハ意見書ヲ附シ其ノ請󠄁願書ヲ政府ニ送󠄁付シ事宜ニ依リ報告ヲ求ムルコトヲ得

第六十六條
法律ニ依リ法人ト認󠄁メラレタル者ヲ除ク外總代ノ名義ヲ以テスル請󠄁願ハ各議院之ヲ受クルコトヲ得ス
第六十七條
各議院ハ憲󠄁法ヲ變更󠄁スルノ請󠄁願ヲ受クルコトヲ得ス
第六十八條
請󠄁願書ハ總テ哀願ノ體式ヲ用ウヘシ若請󠄁願ノ名義ニ依ラス若ハ其ノ體式違󠄂フモノハ各議院之ヲ受クルコトヲ得ス
第六十九條
請󠄁願書ニシテ皇室ニ對シ不敬ノ語ヲ用井政府又ハ議院ニ對シ侮辱ノ語ヲ用井ルモノハ各議院之ヲ受クルコトヲ得ス
第七十條
各議院ハ司法及行政裁判󠄁ニ干預スルノ請󠄁願ヲ受クルコトヲ得ス
第七十一條
各議院ハ各別ニ請󠄁願ヲ受ケ互ニ相干預セス
第十四章 議院ト人民及官廳地方議會トノ關係
第七十二條
各議院ハ人民ニ向テ告示ヲ發スルコトヲ得ス
第七十三條
各議院ハ審査ノ爲ニ人民ヲ召喚シ及議員ヲ派出スルコトヲ得ス
第七十四條
各議院ヨリ審査ノ爲ニ政府ニ向テ必要ナル報告又ハ文󠄁書ヲ求ムルトキハ政府ハ祕密ニ渉ルモノヲ除ク外其ノ求ニ應スヘシ
第七十五條
各議院ハ國務大臣及政府委員ノ外他ノ官廳及地方議會ニ向テ照會往󠄁復スルコトヲ得ス
第十五章 退󠄁職及議員資󠄁格ノ異議
第七十六條
衆議院ノ議員ニシテ貴族院議員ニ任セラレ又ハ法律ニ依リ議員タルコトヲ得サル職務ニ任セラレタルトキハ退󠄁職者トス
第七十七條
衆議院ノ議員ニシテ選󠄁擧法ニ記載シタル被選󠄁ノ資󠄁格ヲ失ヒタルトキハ退󠄁職者トス
第七十八條
衆議院ニ於テ議員ノ資󠄁格ニ付異議ヲ生シタルトキハ特ニ委員ヲ設ケ時日ヲ期シ之ヲ審査セシメ其ノ報告ヲ待テ之ヲ議決スヘシ
第七十九條
裁判󠄁所󠄁ニ於テ當選󠄁訴訟󠄁ノ裁判󠄁手續ヲ爲シタルモノハ衆議院ニ於テ同一事件ニ付審査スルコトヲ得ス
第八十條
議員其資󠄁格ナキコトヲ證明セラルヽニ至ルマテハ議院ニ於テ位列及發言ノ權ヲ失ハス但シ自身ノ資󠄁格審査ニ關ル會議ニ對シテハ辯明スルコトヲ得ルモ其ノ表決ニ預カルコトヲ得ス
第十六章 請󠄁暇辭職及補闕
第八十一條
各議院ノ議長ハ一週󠄁間ニ超エサル議員ノ請󠄁暇ヲ許可スルコトヲ得其ノ一週󠄁間ヲ超ユルモノハ議院ニ於テ之ヲ許可ス期限ナキモノハ之ヲ許可スルコトヲ得ス
第八十二條
各議院ノ議員ハ正當ノ理由ヲ以テ議長ニ屆出スシテ會議又ハ委員會ニ闕席スルコトヲ得ス
第八十三條
衆議院ハ議員ノ辭職ヲ許可スルコトヲ得
第八十四條
何等ノ事由ニ拘ラス衆議院議員ニ闕員ヲ生シタルトキハ議長ヨリ內務大臣ニ通󠄁牒シ補闕選󠄁擧ヲ求ムヘシ
第十七章 紀律及警察
第八十五條
各議院開會中其ノ紀律ヲ保持セムカ爲內部警察ノ權ハ此ノ法律及各議院ニ於テ定ムル所󠄁ノ規則ニ從ヒ議長之ヲ施行ス
第八十六條
各議院ニ於テ要スル所󠄁ノ警察官吏󠄁ハ政府之ヲ派出シ議長ノ指揮ヲ受ケシム
第八十七條
會議中議員此ノ法律若ハ議事規則ニ違󠄂ヒ其ノ他議場ノ秩序ヲ紊ルトキハ議長ハ之ヲ警戒シ又ハ制止シ又ハ發言ヲ取消サシム命ニ從ハサルトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ終ルマテ發言ヲ禁止シ又ハ議場ノ外ニ退󠄁󠄁去セシムルコトヲ得
第八十八條
議場騷擾ニシテ整理シ難キトキハ議長ハ當日ノ會議ヲ中止シ又ハ之ヲ閉ツルコトヲ得
第八十九條
傍聽人議場ノ妨害ヲ爲ス者アルトキハ議長ハ之ヲ退󠄁場セシメ必要ナル場合ニ於テハ之ヲ警察官廳ニ引渡サシムルコトヲ得
傍聽席騷擾ナルトキハ議長ハ總テノ傍聽人ヲ退󠄁場セシムルコトヲ得
第九十條
議場ノ秩序ヲ紊ル者アルトキハ國務大臣政府委員及議員ハ議長ノ注󠄁意ヲ喚起󠄁スルコトヲ得
第九十一條
各議院ニ於テ皇室ニ對シ不敬ノ言語論說ヲ爲スコトヲ得ス
第九十二條
各議院ニ於テ無體ノ語ヲ用井ルコトヲ得ス及他人ノ身上ニ渉リ言論スルコトヲ得ス
第九十三條
議院又ハ委員會ニ於テ誹毀侮辱ヲ被リタル議員ハ之ヲ議院ニ訴ヘテ處分󠄁ヲ求ムヘシ私ニ相報復スルコトヲ得ス
第十八章 懲罰
第九十四條
各議院ハ其ノ議員ニ對シ懲罰權ヲ有ス
第九十五條
各議院ニ於テ懲罰事犯ヲ審査スル爲ニ懲罰委員ヲ設ク
懲罰事犯アルトキハ議長ハ先ツ之ヲ委員ニ付シ審査セシメ議院ノ議ヲ經テ之ヲ宣告ス
各委員會又ハ各部ニ於テ懲罰事犯アルトキハ委員長又ハ部長ハ之ヲ議長ニ報告シ處分󠄁ヲ求ムヘシ
第九十六條
懲罰ハ左ノ如シ
一 公󠄁開シタル議場ニ於テ譴責ス
二 公󠄁開シタル議場ニ於テ適󠄁當ノ謝辭ヲ表セシム
三 一定ノ時間出席ヲ停止ス
四 除名
衆議院ニ於テ除名ハ出席議員三分󠄁ノ二以上ノ多數ヲ以テ之ヲ決スヘシ
第九十七條
衆議院ハ除名ノ議員再選󠄁ニ當ル者ヲ拒ムコトヲ得ス
第九十八條
議員ハ三十人以上ノ贊成ヲ以テ懲罰ノ動議ヲ爲スコトヲ得
懲罰ノ動議ハ事犯アリシ後三日以內ニ之ヲ爲スヘシ
第九十九條
議員正當ノ理由ナクシテ勅諭ニ指定シタル期日後一週󠄁間內ニ召集ニ應セサルニ由リ又ハ正當ノ理由ナクシテ會議又ハ委員會ニ闕席スルニ由リ若ハ請󠄁暇ノ期限ヲ過󠄁キタルニ由リ議長ヨリ特ニ招狀ヲ發シ其ノ招狀ヲ受ケタル後一週󠄁間內ニ仍故ナク出席セサル者ハ貴族院ニ於テハ其ノ出席ヲ停止シ上奏シテ勅裁ヲ請󠄁フヘク衆議院ニ於テハ之ヲ除名スヘシ

新字体・平仮名版

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朕枢密顧問の諮詢を経て議院法を裁可し之を公布せしめ併せて貴族院及衆議院成立の日より各々本法に依り施行すべきことを命ず

御名御璽

明治二十二年二月十一日

内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
枢密院議長 伯爵 伊藤博文
外務大臣 伯爵 大隈重信
海軍大臣 伯爵 西郷従道
農商務大臣 伯爵 井上 馨
司法大臣 伯爵 山田顕義
大蔵大臣兼内務大臣 伯爵 松方正義
陸軍大臣 伯爵 大山 巌
文部大臣 子爵 森 有礼
逓信大臣 子爵 榎本武揚


法律第二号

議院法
第一章 帝国議会の召集成立及開会
第一条
帝国議会召集の勅諭は集会の期日を定め少くとも四十日前に之を発布すべし
第二条
議員は召集の勅諭に指定したる期日に於て各議院の会堂に集会すべし
第三条
  1. 衆議院の議長副議長は其の院に於て各々三名の候補者を選挙せしめ其の中より之を勅任すべし
  2. 議長副議長の勅任せらるるまでは書記官長議長の職務を行ふべし
第四条
各議院は抽籤法に依り総議員を数部に分割し毎部部長一名を部員中に於て互選すべし
第五条
両議院成立したる後勅命を以て帝国議会開会の日を定め両院議員を貴族院に会合せしめ開院式を行ふべし
第六条
前条の場合に於て貴族院議長は議長の職務を行ふべし
第二章 議長書記官及経費
第七条
各議院の議長副議長は各々一員とす
第八条
衆議院の議長副議長の任期は議員の任期に依る
第九条
衆議院の議長副議長辞職又は其の他の事故に由り闕位となりたるときは継任者の任期は仍前任者の任期に依る
第十条
各議院の議長は其の議院の秩序を保持し議事を整理し院外に対し議院を代表す
第十一条
議長は議会閉会の間に於て仍其の議院の事務を指揮す
第十二条
議長は常任委員会及特別委員会に臨席し発言することを得但し表決の数に預からず
第十三条
各議院に於て議長故障あるときは副議長之を代理す
第十四条
各議院に於て議長副議長倶に故障あるときは仮議長を選挙し議長の職務を行はしむべし
第十五条
各議院の議長副議長は任期満限に達するも後任者勅任せらるるまでは仍其の職務を継続すべし
第十六条
  1. 各議院に書記官長一人書記官数人を置く
  2. 書記官長は勅任とし書記官は奏任とす
第十七条
  1. 書記官長は議長の指揮に依り書記官の事務を提理し公文に署名す
  2. 書記官は議事録及其の他の文書案を作り事務を掌理す
  3. 書記官の外他の必要なる職員は書記官長之を任ず
第十八条
両議院の経費は国庫より之を支出す
第三章 議長副議長及議員歳費
第十九条
  1. 各議院の議長は歳費として四千円副議長は二千円貴族院の被選及勅任議員及衆議院の議員は八百円を受け別に定むる所の規則に従ひ旅費を受く但し召集に応ぜざる者は歳費を受くることを得ず
  2. 議長副議長及議員は歳費を辞することを得ず
  3. 官吏にして議員たる者は歳費を受くることを得ず
  4. 第二十五条の場合に於ては第一項歳費の外議院の定むる所に依り一日五円より多からざる手当を受く
第四章 委員
第二十条
  1. 各議院の委員は全院委員常任委員及特別委員の三類とす
  2. 全院委員は議院の全員を以て委員と為すものとす
  3. 常任委員は事務の必要に依り之を数科に分割し負担の事件を審査する為に各部に於て同数の委員を総議員中より選挙し一会期中其の任に在るものとす
  4. 特別委員は一事件を審査する為に議院の選挙を以て特に付託を受くるものとす
第二十一条
  1. 全院委員長は一会期ごとに開会の始に於て之を選挙す
  2. 常任委員長及特別委員長は各委員会に於て之を互選す
第二十二条
全院委員会は議院三分の一以上常任委員会及特別委員会は其の委員半数以上の出席するに非ざれば議事を開き議決を為すことを得ず
第二十三条
常任委員会及特別委員会は議員の外傍聴を禁ず但し委員会の決議に由り議員の傍聴を禁ずることを得
第二十四条
各委員長は委員会の経過及結果を議院に報告すべし
第二十五条
各議院は政府の要求に依り又は其の同意を経て議会閉会の間委員をして議案の審査を継続せしむることを得
第五章 会議
第二十六条
  1. 各議院の議長は議事日程を定めて之を議院に報告す
  2. 議事日程は政府より提出したる議案を先にすべし但し他の議事緊急の場合に於て政府の同意を得たるときは此の限に在らず
第二十七条
法律の議案は三読会を経て之を議決すべし但し政府の要求若は議院十人以上の要求に由り議院に於て出席議員三分の二以上の多数を以て可決したるときは三読会の順序を省略することを得
第二十八条
政府より提出したる議案は委員の審査を経ずして之を議決することを得ず但し緊急の場合に於て政府の要求に由るものは此の限に在らず
第二十九条
凡て議案を発議し及議院の会議に於て議案に対し修正の動議を発するものは二十人以上の賛成あるに非ざれば議題と為すことを得ず
第三十条
政府は何時たりとも既に提出したる議案を修正し又は撤回することを得
第三十一条
  1. 凡て議案は最後に議決したる議院の議長より国務大臣を経由して之を奏上すべし
  2. 但し両議院の一に於て提出したる議案にして他の議院に於て否決したるときは第五十四条第二項の規定に依る
第三十二条
両議院の議決を経て奏上したる議案にして裁可せらるるものは次の会期までに公布せらるべし
第六章 停会閉会
第三十三条
  1. 政府は何時たりとも十五日以内に於て議院の停会を命ずることを得
  2. 議院停会の後再び開会したるときは前会の議事を継続すべし
第三十四条
衆議院の解散に依り貴族院に停会を命じたる場合に於ては前条第二項の例に依らず
第三十五条
帝国議会閉会の場合に於て議案建議請願の議決に至らざるものは後会に継続せず但し第二十五条の場合に於ては此の限に在らず
第三十六条
閉会は勅命に由り両議院合会に於て之を挙行すべし
第七章 秘密会議
第三十七条
各議院の会議は左の場合に於て公開を停むることを得
一 議長又は議員十人以上の発議に由り議院之を可決したるとき
二 政府より要求を受けたるとき
第三十八条
議長又は議員十人以上より秘密会議を発議したるときは議長は直に傍聴人を退去せしめ討論を用ゐずして可否の決を取るべし
第三十九条
秘密会議は刊行することを許さず
第八章 予算案の議定
第四十条
政府より予算案を衆議院に提出したるときは予算委員は其の院に於て受取りたる日より十五日以内に審査を終り議院に報告すべし
第四十一条
予算案に就き議院の会議に於て修正の動議を発するものは三十人以上の賛成あるに非ざれば議題と為すことを得ず
第九章 国務大臣及政府委員
第四十二条
国務大臣及政府委員の発言は何時たりとも之を許すべし但し之が為に議員の演説を中止せしむることを得ず
第四十三条
議院に於て議案を委員に付したるときは国務大臣及政府委員は何時たりとも委員会に出席し意見を述ぶることを得
第四十四条
委員会は議長を経由して政府委員の説明を求むることを得
第四十五条
国務大臣及政府委員は議員たる者を除く外議院の会議に於て表決の数に預からず
第四十六条
常任委員会又は特別委員会を開くときは毎会委員長より其の主任の国務大臣及政府委員に報知すべし
第四十七条
議事日程及議事に関る報告は議員に分配すると同時に之を国務大臣及政府委員に送付すべし
第十章 質問
第四十八条
  1. 両議院の議員政府に対し質問を為さむとするときは三十人以上賛成者あるを要す
  2. 質問は簡明なる主意書を作り賛成者と共に連署して之を議長に提出すべし
第四十九条
質問主意書は議長之を政府に転送し国務大臣は直に答弁を為し又は答弁すべき期日を定め若答弁を為さざるときは其の理由を示明すべし
第五十条
国務大臣の答弁を得又は答弁を得ざるときは質問の事件に付議員は建議の動議を為すことを得
第十一章 上奏及建議
第五十一条
  1. 各議院上奏せむとするときは文書を奉呈し又は議長を以て総代とし謁見を請ひ之を奉呈することを得
  2. 各議院の建議は文書を以て政府に呈出すべし
第五十二条
各議院に於て上奏又は建議の動議は三十人以上の賛成あるに非ざれば議題と為すことを得ず
第十二章 両議院関係
第五十三条
予算を除く外政府の議案を付するは両議院の内何れを先にするも便宜に依る
第五十四条
  1. 甲議院に於て政府議案を可決し又は修正して議決したるときは乙議院に之を移すべし乙議院に於て甲議院の議決に同意し又は否決したるときは之を奏上すると同時に甲議院に通知すべし
  2. 乙議院に於て甲議院の提出したる議案を否決したるときは之を甲議院に通知すべし
第五十五条
  1. 乙議院に於て甲議院より移したる議案に対し之を修正したるときは之を甲議院に回付すべし甲議院に於て乙議院の修正に同意したるときは之を奏上すると同時に乙議院に通知すべし若之に同意せざるときは両院協議会を開くことを求むべし
  2. 甲議院より協議会を開くことを求むるときは乙議院は之を拒むことを得ず
第五十六条
  1. 両院協議会は両議院より各々十人以下同数の委員を選挙し会同せしむ委員の協議案成立するときは議案を政府より受取り又は提出したる甲議院に於て先づ之を議し次に乙議院に移すべし
  2. 協議会に於て成立したる成案に対しては更に修正の動議を為すことを許さず
第五十七条
国務大臣政府委員及各議院の議長は何時たりとも両院協議会に出席して意見を述ぶることを得
第五十八条
両院協議会は傍聴を許さず
第五十九条
両院協議会に於て可否の決を取るは無名投票を用ゐ可否同数なるときは議長の決する所に依る
第六十条
両院協議会の議長は両議院協議委員に於て各々一員を互選し毎会更代して席に当らしむべし其の初会に於ける議長は抽籤法を以て之を定む
第六十一条
本章に定むる所の外両議院交渉事務の規程は其の協議に依り之を定むべし
第十三章 請願
第六十二条
各議院に呈出する人民の請願書は議員の紹介に依り議院之を受取るべし
第六十三条
  1. 請願書は各議院に於て請願委員に付し之を審査せしむ
  2. 請願委員請願書を以て規程に合はずと認むるときは議長は紹介の議員を経て之を却下すべし
第六十四条
  1. 請願委員は請願文書表を作り其の要領を録し毎週一回議院に報告すべし
  2. 請願委員特別の報告に依れる要求又は議員三十人以上の要求あるときは各議院は其の請願事件を会議に付すべし
第六十五条
各議院に於て請願の採択すべきことを議決したるときは意見書を附し其の請願書を政府に送付し事宜に依り報告を求むることを得
第六十六条
法律に依り法人と認められたる者を除く外総代の名義を以てする請願は各議院之を受くることを得ず
第六十七条
各議院は憲法を変更するの請願を受くることを得ず
第六十八条
請願書は総て哀願の体式を用うべし若請願の名義に依らず若は其の体式違ふものは各議院之を受くることを得ず
第六十九条
請願書にして皇室に対し不敬の語を用ゐ政府又は議院に対し侮辱の語を用ゐるものは各議院之を受くることを得ず
第七十条
各議院は司法及行政裁判に干預するの請願を受くることを得ず
第七十一条
各議院は各別に請願を受け互に相干預せず
第十四章 議院と人民及官庁地方議会との関係
第七十二条
各議院は人民に向て告示を発することを得ず
第七十三条
各議院は審査の為に人民を召喚し及議員を派出することを得ず
第七十四条
各議院より審査の為に政府に向て必要なる報告又は文書を求むるときは政府は秘密に渉るものを除く外其の求に応ずべし
第七十五条
各議院は国務大臣及政府委員の外他の官庁及地方議会に向て照会往復することを得ず
第十五章 退職及議員資格の異議
第七十六条
衆議院の議員にして貴族院議員に任ぜられ又は法律に依り議員たることを得ざる職務に任ぜられたるときは退職者とす
第七十七条
衆議院の議員にして選挙法に記載したる被選の資格を失ひたるときは退職者とす
第七十八条
衆議院に於て議員の資格に付異議を生じたるときは特に委員を設け時日を期し之を審査せしめ其の報告を待て之を議決すべし
第七十九条
裁判所に於て当選訴訟の裁判手続を為したるものは衆議院に於て同一事件に付審査することを得ず
第八十条
議員其資格なきことを証明せらるるに至るまでは議院に於て位列及発言の権を失はず但し自身の資格審査に関る会議に対しては弁明することを得るも其の表決に預かることを得ず
第十六章 請暇辞職及補闕
第八十一条
各議院の議長は一週間に超えざる議員の請暇を許可することを得其の一週間を超ゆるものは議院に於て之を許可す期限なきものは之を許可することを得ず
第八十二条
各議院の議員は正当の理由を以て議長に届出ずして会議又は委員会に闕席することを得ず
第八十三条
衆議院は議員の辞職を許可することを得
第八十四条
何等の事由に拘らず衆議院議員に闕員を生じたるときは議長より内務大臣に通牒し補闕選挙を求むべし
第十七章 紀律及警察
第八十五条
各議院開会中其の紀律を保持せむが為内部警察の権は此の法律及各議院に於て定むる所の規則に従ひ議長之を施行す
第八十六条
各議院に於て要する所の警察官吏は政府之を派出し議長の指揮を受けしむ
第八十七条
会議中議員此の法律若は議事規則に違ひ其の他議場の秩序を紊るときは議長は之を警戒し又は制止し又は発言を取消さしむ命に従はざるときは議長は当日の会議を終るまで発言を禁止し又は議場の外に退去せしむることを得
第八十八条
議場騒擾にして整理し難きときは議長は当日の会議を中止し又は之を閉づることを得
第八十九条
  1. 傍聴人議場の妨害を為す者あるときは議長は之を退場せしめ必要なる場合に於ては之を警察官庁に引渡さしむることを得
  2. 傍聴席騒擾なるときは議長は総ての傍聴人を退場せしむることを得
第九十条
議場の秩序を紊る者あるときは国務大臣政府委員及議員は議長の注意を喚起することを得
第九十一条
各議院に於て皇室に対し不敬の言語論説を為すことを得ず
第九十二条
各議院に於て無体の語を用ゐることを得ず及他人の身上に渉り言論することを得ず
第九十三条
議院又は委員会に於て誹毀侮辱を被りたる議員は之を議院に訴へて処分を求むべし私に相報復することを得ず
第十八章 懲罰
第九十四条
各議院は其の議員に対し懲罰権を有す
第九十五条
  1. 各議院に於て懲罰事犯を審査する為に懲罰委員を設く
  2. 懲罰事犯あるときは議長は先づ之を委員に付し審査せしめ議院の議を経て之を宣告す
  3. 各委員会又は各部に於て懲罰事犯あるときは委員長又は部長は之を議長に報告し処分を求むべし
第九十六条
  1. 懲罰は左の如し
    一 公開したる議場に於て譴責す
    二 公開したる議場に於て適当の謝辞を表せしむ
    三 一定の時間出席を停止す
    四 除名
  2. 衆議院に於て除名は出席議員三分の二以上の多数を以て之を決すべし
第九十七条
衆議院は除名の議員再選に当る者を拒むことを得ず
第九十八条
  1. 議員は三十人以上の賛成を以て懲罰の動議を為すことを得
  2. 懲罰の動議は事犯ありし後三日以内に之を為すべし
第九十九条
議員正当の理由なくして勅諭に指定したる期日後一週間内に召集に応ぜざるに由り又は正当の理由なくして会議又は委員会に闕席するに由り若は請暇の期限を過ぎたるに由り議長より特に招状を発し其の招状を受けたる後一週間内に仍故なく出席せざる者は貴族院に於ては其の出席を停止し上奏して勅裁を請ふべく衆議院に於ては之を除名すべし

関連項目

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両院共通

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衆議院

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参議院及び貴族院

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この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。