教育議附議

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臣永孚謹テ

内旨ヲ禀ク、内務卿奏上スル所ノ教育議、其既往ノ弊源ヲ論シ、将来救正ノ方ヲ陳スル、頗ル詳悉ナルヲ以テ、

陛下ノ之ヲ嘉納スルハ固ヨリ然リ、蓋シ人君ハ臣民ノ綱、其天下万機ニ於ケル、其大綱ヲ提テ以テ群下ヲ制御スルハ君道ノ要、故ニ其令スル所モ、亦其綱領ニ止マリテ、其節目ノ施設ニ至テハ、固ヨリ内務文部ノ議案ニ任スヘキナリ、然トモ今奏議案中、

聖旨ノ含蓄スル所ヲ拡充シ、遺漏スル所ヲ裨補スルニ切ナルヲ以テ、或ハ過慮予防ノ意想ニ出ル者アリ、而シテ

聖旨ノ在ル所ニ於テ、却テ未タ融会セサル所アルニ似タリ、故ニ敢テ附議ヲ草シ、更ニ明説シテ

聖旨ノ在ル所ヲ闡キ、以テ原議ノ意想ニ答フルヿ左ノ如シ


教育議 附議

一原議ニ云フ所ノ制行ノ敗レ云々、言論ノ敗レ云々、是乃

聖旨ノ云フ所ノ、品行ヲ破リ、風俗ヲ傷ヒ、仁義忠孝ヲ後ニスルノ流弊ナリ、故ニ廉恥ヲ尚トヒ、礼譲ヲ重ンシ、倫理ヲ篤クスルノ教育ヲ施ス時ハ、制行ノ敗レヲ救フ可ク、平易公正ノ論ヲ主トシ、激昻相凌クノ風ヲ改メ、人心ヲ協和シ、国体ヲ扶植スルノ教育ヲ施ス時ハ、言論ノ敗レヲ救フ可シ、是

聖旨ノ本義ニシテ、其要ハ仁義忠孝ヲ明カニスルニ在ル而已、其節目ノ方法ハ、閣臣文部ノ参考設立スル所、其当ヲ得ルニ在ルハ論ヲ俟タス、

一原議ニ云フ所ノ、倫理風俗ニ係ル読本ノ良善ナル者ヲ択テ之ヲ用ルト教官ヲ約束シ教官訓条ヲ施行スルニアルハ至論ナリ、然トモ其倫理風俗ニ係ル良善ナル読本ト云者、西洋ノ修身学ニモ之アルヘシト雖トモ之ヲ要スルニ、孝経論語孟学庸詩書ノ上ニ出ツヘカラス、且西洋ノ修身学ニ云所、君臣ノ義薄ク、夫婦ノ倫ヲ父子ノ上ニ置クカ如キ、固ヨリ我邦ノ道ニ悖ル、且修身ノ書、多クハ耶蘇教法ニ出ツ、故ニ四書五経ヲ主トシ、加ルニ国書ノ倫理ニ関スル者ヲ用ヒ、更ニ洋書ノ品行性理ニ完全ナル者ヲ択ヒ取ルヘシ、

右孝経以下ノ書、其学問ノ浅深ニヨリ、之ヲ教ルニ其順序ヲ違ヘス、小学中学大学其等級ニ応シテ施行スヘシ、而シテ其書ノ要ヲ得ルハ、教官ニ人ヲ得ルニ在テ、従来漢学者流ノ固陋空論ノ如キハ、亦却テ其弊ヲ招クヘシ、故ニ学識徳行アル教官ヲ得テ、其書ヲ択ヒ其要ヲ誤ラサルヘシ、

一原義ニ云所ノ、永遠ニ涵養シテ、急施速効ヲ求ムヘカラサルハ、教育ノ大目的ニシテ、固ヨリ

聖旨ノ在ル所、然リ而シテ今日ニ於テ基礎ヲ立テサレハ、将来ノ目的ヲ愆リ、其弊救フヘカラス、是最

聖旨ノ要帰ナリ、

一原義ニ云所ノ、高等ノ生徒ヲシテ科学ニ訓導スヘク、之ヲ無用ノ政談ニ誘進スヘカラスト云ハ、固ヨリ善シ、然ルニ

聖旨ノ在ル所、教育ノ極点ハ、決シテ科学ニ止ルヘカラス、高等ノ中ニシテ才識徳行ノ秀テタルハ、道徳経綸ヲ養成シテ、輔相ト為ルノ器量ヲ研磨シ得ヘキヲ以テ、学校ノ本旨トスレハ、高等ノ生徒ニハ、更ニ最高等ノ学科ノ設ケ必アルヘキナリ、

一原議ニ云所ノ、古今折衷シ、経典ヲ斟酌シ、一ノ国教ヲ建立シテ、以テ世ニ行フカ如キハ、必ス賢哲其人アルヲ待ツト、抑其人アルトハ誰ヲ指シ云歟、今

聖上陛下、君ト為リ師ト為ルノ御天職ニシテ、内閣亦其人アリ、此時ヲ置テ将ニ何ノ時ヲ待タントス、旦国教ナル者、亦新タニ建ルニ非ス、

祖訓ヲ敬承シテ之ヲ闡明スルニ在ルノミ、其人民ノ信従スルト否サルトハ、唯

陛下ノ閣臣ト厚ク信シテ恒久撓マサルニアリ、彼ノ仏法耶蘇教ノ妄鑿信スルニ足ラサルモ、其死生禍福利害ノ人心ニ切当ナルヲ以テ、人々迷信沈痼動スヘカラサルニ至ルヲ見レハ、則国教ノ立ツト立タサルトハ、我信スルノ厚キト厚カラサルトニ決スルノミ、其人民ノ信否ハ、政府ノ管制スヘキ所ニ非サルハ、原議ノ云所ノ如ク、仏法ノ入ル已ニ久シク、耶蘇教又之ヲ不問ニ置キ、之ヲ禁止スヘカラサレハ、則国教ヲ建明施行スル、

陛下ト閣臣トノ最確信篤行ニ出テサルヘカラサルナリ、欧州ノ事、之ヲ審カニセスト雖トモ、其帝王宰相以下人民ニ至リ、皆其宗教ニ基ツカサル者ハ無キナリ、本朝

瓊々杵尊以降、

欽明天皇以前ニ至リ、其

天祖ヲ敬スルノ誠心凝結シ、加フルニ儒教ヲ以テシ、祭政教学一致、仁義忠孝上下二アラサルハ、歴史上歴々証スヘキヲ見レハ、今日ノ国教他ナシ、亦其古ニ復セン而已、但古今時勢人情ヲ異ニスレハ、原議ノ所謂折衷斟酌其宜キヲ得ルハ、是亦

陛下ト閣臣トノ責任ニシテ、今ノ時ヲ置テ他日ヲ待チ他人ノ譲ル可キニ非サルナリ、

一原義ニ云所ノ末弊ヲ救フニ急ニシテ、大政ノ前轍ヲ変更シ、更ニ旧時ノ陋習ヲ回護スルカ若キアラハ、甚宏遠ノ大計ニ非スト云ハ、固ヨリ

聖意ノ深ク慎ミアラセラルヽ所、唯前轍ノ傾欹ヲ救フテ、将来ノ方向ヲ中正ニ帰セシムル、是最

聖旨ノ現今ニ在ル所ナリ、故ニ学制モ原義ニ云所ノ如ク、形相ニ失シテ精神ヲ缺キ、其末ニ馳テ其本ヲ遺ス者多キヲ以テ、

聖旨唯形相ヲ改良シテ、精神ヲ注ケ、其末ヲ矯正シテ、其本ニ復スルニ汲々タルノミ、


  • 底本: 『教育勅語渙発関係資料集 第一巻』国民精神文化研究所、1938年3月
  • 底本中の旧字を新字に改めた。
  • 「コト」の合字は「ヿ」を用いて、「トモ」の合字は二字に分けて表記した。

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