提摩太後書(明治元訳) 第二章

Wikisource:宗教 > 聖書 > 明治元訳新約聖書 (明治37年) > 提摩太後書(明治元訳)

第二章

1 わが子（こ）よ爾（なんぢ）キリスト・イエスにある恩（めぐみ）に堅固（かたく）なるべし
2 又（また）なんぢ多（おほく）の證人（あかしびと）の前（まへ）にて我（われ）より聞（きき）し所（ところ）の事（こと）を忠信（ちうしん）にして能（よく）人（ひと）を教（をしふ）るに足（た）る人（ひと）に託（たく）すべし
3 爾（なんぢ）キリスト・イエスの精（よき）兵卒（へいそつ）の如（ごと）く我（われ）と共（とも）に苦（くるしみ）を忍（しの）ぶべし
4 兵卒（へいそつ）を務（つとむ）る者（もの）は世事（よのわざ）を以（も）て自己（みづから）を累（わづら）はせず是（これ）募（つの）れる者（もの）の心（こころ）を悦（よろこ）ばせんと爲（すれ）ばなり
5 もし力（ちから）を角（きそ）ふもの法（はふ）に遵（したが）ひて角（きそ）はずば冕（かんむり）を得（え）ず
6 勤勞（ほねをり）たる百姓（ひやくしやう）まづ實（み）を得（う）べき也（なり）
7 爾（なんぢ）わが言（いひ）し所（ところ）を思（おも）ふべし主（しゆ）爾（なんぢ）に萬事（すべてのこと）を曉（さとら）しめん
8 ダビデの裔（すゑ）より出（いで）たるイエス・キリスト我（わ）が傳（つたふ）る所（ところ）の福音（ふくいん）の如（ごと）く死（し）より甦（よみがへ）りたるを爾（なんぢ）心（こころ）に記（とむ）べし
9 この福音（ふくいん）の爲（ため）に我（われ）苦（くるしみ）を受（うけ）て罪人（つみびと）の如（ごと）く繫（つなが）るるに至（いた）れり然（され）ど神（かみ）の道（ことば）は繫（つなが）れず
10 是（この）故（ゆゑ）に我（われ）選（えらば）れし者（もの）の爲（ため）に凡（すべて）の事（こと）を忍（しのぶ）これ彼等（かれら）にもキリスト・イエスにある救（すくひ）および永遠（かぎりなき）の榮（さかえ）を得（え）しめんため也（なり）
11 爰（ここ）に信（しん）ずべき話（はなし）あり我儕（われら）もし彼（かれ）と共（とも）に死（し）なば彼（かれ）と共（とも）に生（いく）べし
12 我儕（われら）もし忍（しの）ばば彼（かれ）と共（とも）に王（わう）と爲（なる）べし我儕（われら）もし彼（かれ）を知（しら）ずと言（いは）ば彼（かれ）も我儕（われら）を知（しら）ずといはん
13 われら信（しん）ぜずと雖（いへど）も彼（かれ）は誠（まこと）なり彼（かれ）は己（おのれ）に違（たが）ふこと能（あたは）ざる也（なり）と

14 なんぢ彼等（かれら）をして此（この）事（こと）を憶（おもは）しめ且（かつ）主（しゆ）の前（まへ）にて彼等（かれら）を戒（いまし）め言（ことば）に因（より）て爭（あらそ）ふこと勿（なか）らしむべし是（これ）益（えき）する所（ところ）なく聽（きく）人（ひと）をして沈淪（ほろび）に至（いた）らしむ
15 なんぢ神（かみ）に悦（よろこ）ばるる者（もの）と爲（なら）んことを務（つとめ）また耻（はづ）る所（ところ）なき工人（はたらくもの）となりて眞道（まことのことば）を正（ただし）く頒（わか）ち教（をしへ）んことを務（つと）むべし
16 妄（みだり）なる益（えき）なき談（はなし）を避（さく）べし蓋（そは）之（これ）をなす者（もの）ますます不信（ふしん）に進（すすめ）ばなり
17 彼等（かれら）の言（ことば）は脱疽（だつそ）の如（ごと）く腐（くされ）爛（ひろが）るべしヒメナヨとピレトは此（かく）の如（ごと）き者（もの）の中（なか）に在（あり）
18 かれら眞（まこと）を謬（あやま）りて復生（よみがへり）は既（すで）に過（すぎ）たりといひ斯（かく）て數人（すにん）の信仰（しんかう）を滅（ほろぼ）すなり
19 然（しかれ）ども神（かみ）の置（すゑ）給（たま）ひし堅（かたき）基（もとゐ）たてり其（その）上（うへ）に印（いん）あり誌（しる）していふ主（しゆ）己（おのれ）に屬（つけ）る者（もの）を知（しる）とまた云（いふ）すべて主（しゆ）の名（な）を龥（よぶ）ものは不義（ふぎ）を離（はな）るべしと
20 大（おほい）なる家（いへ）の中（うち）には金（きん）と銀（ぎん）の器（うつは）あるのみならず木（き）と土（つち）の器（うつは）もあり彼（かれ）は貴（たふと）きに用（もち）ひ此（これ）は賤（いやし）きに用（もちゐ）るなり
21 人（ひと）もし此等（これら）を離（はな）れて己（おのれ）を潔（きよく）せば貴（たつと）きに用（もちゐ）る器（うつは）となり潔（きよく）して主（しゆ）の用（よう）に合（かな）ひ諸（すべて）の善事（よきわざ）を作（なす）ことを得（うる）なり
22 なんぢ幼少（いとけなき）ときの慾（よく）を避（さけ）て義（ぎ）と信（しん）と愛（あい）を追求（おひもと）め又（また）清（きよき）心（こころ）にて主（しゆ）を龥（よぶ）者（もの）と和（やはら）ぐ事（こと）を追求（おひもと）むべし
23 愚（おろか）なると無學（むがく）なる辯論（べんろん）を避（さく）べし蓋（そは）之（これ）より爭競（あらそひ）の起（おこ）るを知（しれ）ばなり
24 主（しゆ）の僕（しもべ）は爭（あらそ）ふべからず和平（やはらか）に凡（すべて）の人（ひと）を待（あしら）ひ教（をしへ）を善（よく）し忍（しのぶ）ことをなし
25 逆（さから）ふ者（もの）をば柔和（にうわ）を以（も）て戒（いまし）むべし神（かみ）あるひは彼等（かれら）に悔（くい）改（あらた）むる心（こころ）を賜（たまひ）て之（これ）に眞理（まこと）を識（しら）しめ給（たま）はん
26 また彼等（かれら）その醉（ゑひ）さめて惡魔（あくま）の罟（わな）を脱出（のがれいで）ん蓋（そは）惡魔（あくま）彼等（かれら）をして己（おのれ）が旨（むね）を行（おこな）はしめん爲（ため）に之（これ）を擒（とりこ）にすれば也（なり）