神路山、昔に変らぬ杉の枝。萱の御屋根に五色の玉も、光をてらす朝日山、清き流れの五十鈴川、御裳濯川の干網の、宇治の里ぞと見渡せば、頃は弥生の賑しき、門に笹たて鈴の音、獅子の舞ぞとうたひつる。山を越したる小田の橋。岩戸の山に神楽を奏し、二見の浦の朝景色、岩間に淀む藻塩草、世義寺の夕景色、野辺の螢や美女のの遊び、浮れて汲むや盃の、早や鳥羽口に紅葉ばの、染めて楽しむ老人の、浅熊山眺めも勝る奥の院、晴れ渡りたる富士の白雪。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』下、武蔵野書院、1975年。
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