少年少女

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目次

恢復期


 ジェルメーヌは病気になりました。どうして病気になったのかはわかりません。熱病の種をまく手も、毎晩やってきて子供たちの目に睡気を催させる、砂をいっぱい握りしめたあの老人の手と同じように、人の目にはとまりません。けれどもジェルメーヌは、それほど長い間病気になっていたのではありません、彼女はたいへん苦しみもしませんでした。そして今ではもう回復期に入っています。回復期というものは、それより前の健康な時よりも、いっそう気持ちの楽しいものです。それはちょうど、希望や目論見が、しばしば、人の希望したところのもの、目論んだところのものそのものよりも、いっそう優れているのによく似ています。ジェルメーヌは彼女の気持ちのいい青い部屋に臥ています、そして彼女の夢はその部屋と同じ色に染められています。

 彼女はまだ病後の衰えた目で、臥床の傍らに置かれた人形をながめています。いとけない小娘と人形との間には、深い同感のあるものです。ジェルメーヌの人形は、その小さなお母さんと一緒に病気になりました、そして今では、そのお母さんと一緒に回復期に入っているのです。車に乗って初めて外出するときにも、きっとジェルメーヌと一緒でしょう。

 人形もやはり先生の往診をうけました。アルフレッドが脈をとりにきたのです。それは乱暴なお医者様です。すぐもう腕を截るとか脚を截るとかいうのです。やっとジェルメーヌが頼み込んで、手脚を截らないで治してもらうことになりました。お医者様は、一番苦いお薬を処方することで我慢をしたのです。

 病気には、しかし一つの利益があります、それは私たちに、私たちの友人を教えます。今ジェルメーヌは、親切なアルフレッドに信頼できることを知りました。彼女はまた、姉妹でもリュシイが、最も気立てのやさしいのを悟りました。病気のつづいた九日の間、リュシイは青い部屋に来て、勉強も縫い物もずっとそこでしてくれました。彼女は自分で、小さな病人に煎じ薬を運んでくれようとしたのです。その薬と言うのは、アルフレッドの処方のような苦い薬ではありません。いいえそれは、野生の草花のいいにおいのする飲み物でした。

 ジェルメーヌはそれをかぐと、彼女が去年、そこであんなに遊び暮らした山の小道、いろんな花の咲き乱れた、子供たちと蜜蜂とだけがよく知っていた小道のことを思いました。アルフレッドもまた、それらの美しい山路や、林や、泉や、鈴の音をたてながら崖の縁を登っていく騾馬のことを思いました。

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