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官吏服務紀律 (公布時)

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朕官吏服務紀律ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ施行セシム

御  名    御  璽

明治二十年七月二十九日

內閣總理大臣伯爵伊藤博文

勅令第三十九號

官吏服務紀律

第一條  凡ソ官吏ハ天皇陛下及天皇陛下ノ政府ニ對シ忠順勤勉ヲ主トシ法律命令ニ從ヒ各其職務ヲ盡スヘシ

第二條  官吏ハ其職務ニ付本屬長官ノ命令ヲ遵守スヘシ但其命令ニ對シ意見ヲ述ルコトヲ得

第三條  官吏ハ職務ノ內外ヲ問ハス廉耻ヲ重シ貪汚ノ所爲アルヘカラス

官吏ハ職務ノ內外ヲ問ハス威權ヲ濫用セス謹愼懇切ナルコトヲ務ムヘシ

第四條  官吏ハ己ノ職務ニ關スルト又ハ他ノ官吏ヨリ聞知シタルトヲ問ハス官ノ機密ヲ漏洩スルコトヲ禁ス其職ヲ退ク後ニ於テモ亦同樣トス

裁判所ノ召喚ニ依リ證人又ハ鑑定人ト爲リ職務上ノ祕密ニ就キ訊問ヲ受クルトキハ本屬長官ノ許可ヲ得タル件ニ限リ供述スルコトヲ得

第五條  官吏ハ私ニ職務上未發ノ文書ヲ關係人ニ漏示スルコトヲ禁ス

第六條  官吏ハ本屬長官ノ許可ナクシテ擅ニ職務ヲ離レ及職務上居住ノ地ヲ離ルヽコトヲ得ス

第七條  官吏ハ本屬長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ營業會社ノ社長又ハ役員トナルコトヲ得ス

第八條  官吏ハ本屬長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ其職務ニ關シ慰勞又ハ謝儀又ハ何等ノ名義ヲ以テスルモ直接ト間接トヲ問ハス總テ他人ノ贈遺ヲ受クルコトヲ得ス

官吏外國ノ君主又ハ政府ヨリ授與セントスル所ノ勳章榮賜俸給竝贈遺ヲ受クルニハ天皇陛下ノ裁可ヲ要ス

第九條  左ニ揭ケタル者ト直接ニ關係ノ職務ニ居ルノ官吏ハ其饗燕ヲ受クルコトヲ得ス

一  官廳ノ工事ヲ受負フ者

一  官廳ノ爲替方又ハ出納ヲ引受クル者

一  官廳ノ補助金ヲ受クル起業者

一  官廳ノ用品ヲ調達スル者

一  官廳ト諸般ノ契約ヲ結フ者

第十條  凡ソ上官タル者ハ職務ノ內外ヲ問ハス所屬官吏ヨリ贈遺ヲ受クルコトヲ得ス

第十一條  官吏竝ニ其家族ハ本屬長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ直接ト間接トヲ問ハス商業ヲ營ムコトヲ得ス

第十二條  官吏ハ取引相場會社ノ社員タルコトヲ得ス及間接ニ相場商業ニ關係スルコトヲ得ス

第十三條  官吏ハ本屬長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ本職ノ外ニ給料ヲ得テ他ノ事務ヲ行フコトヲ得ス

第十四條  浪費シテ產ヲ破リ其分ニ應セサル負債ヲ爲ス者ハ過失ノ一タルヘシ

第十五條  官吏ハ私立郵船會社又ハ私立鐵道會社ヨリ無賃乘船無賃乘車切符ヲ受クルコトヲ得ス

第十六條  凡ソ局長所長其他一部ノ長ハ各所屬官吏ヲ監督シ其過失若シ懲戒處分ヲ行フノ區域ノ內ニ在ラサル者ハ之ヲ訓吿スルコトヲ務ムヘシ若シ懲戒處分ヲ要スト認ルトキハ事狀ヲ具ヘテ之ヲ本屬長官ニ稟吿スヘシ其情ヲ知リ隱蔽シテ稟吿セサル者亦過失タルコトヲ免レス

第十七條  本紀律ハ高等官判任官及俸給ヲ得テ公務ヲ奉スル者ニ適用ス

この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。