女子挺身勤勞令

提供:Wikisource

新字[編集]

朕女子挺身勤労令を裁可し茲に之を公布せしむ

御名御璽

昭和19年8月22日

内閣総理大臣 小磯 国昭

軍需大臣 藤原銀次郎

内務大臣 大達 茂雄

厚生大臣 広瀬 久忠


勅令第519号

女子挺身勤労令

第1条 勤労常時要員としての女子(学徒勤労令の適用を受くべき者を除く)の隊組織(以下女子挺身隊と称す)に依る勤労協力に関する命令にして国家総動員法第5条の規定に基くもの、並に当該命令に依る勤労協力を為すべき者及女子挺身隊に依る従業を為す者の雇入、使用、就職、従業又は給与其の他の従業条件に関する命令にして同法第6条の規定に基くものに関しては本令の定むる所に依る。

第2条 国家総動員法第5条の規定に依る命令に依り女子が女子挺身隊に依り為す勤労協力(以下挺身勤労と称す)は、国、地方公共団体又は厚生大臣若は地方長官(東京都に在りては警視総監以下同じ)の指定する者の行う命令を以て定むる総動員業務に付之を為さしむるものとす。

第3条 挺身勤労を為すべき者(以下隊員と称す)は、国民職業能力申吿令に依る国民登録者たる女子とす。

前項該当者以外の女子は、志願を為したる場合に限り隊員と為すことを得るものとす。

第4条 引続き挺身勤労を為さしむる期間は、特別の事情ある場合を除くの外概ね一年とす。

隊員をして、引続き一年を超え挺身勤労を為さしむる場合に於ては、隊員の同意あることを要す。

第5条 挺身勤労を受けんとする者は、命令の定むる所に依り、地方長官に之を請求又は申請すべし。

第6条 地方長官前条の規定に依る請求又は申請ありたる場合に於て女子挺身隊を出動せしむる必要ありと認むるときは、命令の定むる所に依り、市町村長(市町村長に準ずべきものを含み東京都の区の存する区域並に京都市、大阪市、名古屋市、横浜市及神戶市に在りては区長とす以下同じ)其の他の団体の長又は学校長に対し隊員と為るべき者を選抜すべきことを命ずるものとす。

第7条 前条の命令を受けたる者は、本人の年齢、身体の状態、家庭の状況等を斟酌し隊員と為るべき者を選抜し、之を地方長官に報吿すべし。

第8条 地方長官は前条の規定に依る報吿ありたる者の中より隊員を決定し、本人に其の旨を挺身勤労令書に依り通知し、挺身勤労に関し必要なる事項を指示するものとす。

第9条 前条の規定に依る通知を受けたる者は、同条の規定に依る指示に従ひ挺身勤労を為すべし。

第10条 挺身勤労を為す場合の女子挺身隊の組織及運営並に其の隊員の規律に関し必要なる事項は、命令を以て之を定む。

第11条 地方長官は、命令の定むる所に依り、特別の事情ある場合に於ては挺身勤労の全部又は一部の停止に関し必要なる措置を為すことを得。

第12条 挺身勤労に要する経費は、命令の定むる所に依り、特別の事情ある場合を除くの外、其の挺身勤労を受くる者之を負担するものとす。

第13条 厚生大臣(軍需省所管企業に於ける勤労管理及給与に関する事項に付ては軍需大臣)又は地方長官必要ありと認むるときは、国家総動員法第6条の規定に基き挺身勤労を受くる事業主に対し隊員の使用又は給与其の他の従業条件に関し必要なる命令を為すことを得。

隊員が業務上負傷し、疾病に罹り又は死亡したる場合に於ける本人又は其の遣族の扶助に関し必要なる事項は、命令を以て之を定む。

第14条 左の各号の一に該当する者は隊員と為さざるものとす。但し隊員にして第一号又は第二号に該当するに至りたるものは此の限に在らず。

一 陸海軍軍属
二 陸軍大臣若は海軍大臣の所管に属する官衙(部隊及学校を含む)又は厚生大臣の指定する工場、事業場其の他の場所に於て軍事上必要なる総動員業務に従事する者
三 法令に依り拘禁中の者

第15条 左の各号の一に該当する者は、志願に依る場合を除くの外、隊員と為さざるものとす。

一 厚生大臣の指定する総動員業務に従事する者
二 家庭生活の根軸たる者
三 其の他厚生大臣の指定する者

第16条 厚生大臣又は地方長官は、命令の定むる所に依り、挺身勤労に関し、市町村長其の他の団体の長若は学校長又は隊員若は挺身勤労を受くる事業主を監督す。

第17条 地方長官、必要ありと認むる場合に於ては、国家総動員法第6条の規定に基き挺身勤労を為さざる者に対し、第5条の規定に依る請求又は申請に係る工場、事業場其の他の場所に就職することを命ずることを得。

前項の工場、事業場其の他の場所の事業主は、国家総動員法第6条の規定に基き、同項の規定に依る命令を受けたる者より就職申出を受けたるときは、之を雇入るることを要す。
厚生大臣(軍需省所管企業に於ける勤労管理及給与に関する事項に付ては軍需大臣)又は地方長官、必要ありと認むるときは、国家総動員法第6条の規定に基き、第一項の規定に依る命令を受けたる者又は前項の事業主に対し、第一項の規定に依る命令を受けたる者の使用、従業又は給与其の他の従業条件に関し必要なる命令を為すことを得。
第13条第2項の規定は、第一項の規定に依る命令を受けたる者又は其の遺族の扶助に之を準用す。

第18条 第13条の規定は、地方長官又は国民勤労動員署長の為す指導又は勧奨に基き、女子が女子挺身隊に依り第2条の規定に依る総動員業務に付工場、事業場其の他の場所に於て従業する場合に之を準用す。

第19条 地方長官、必要ありと認むるときは、本令に依る其の事務の一部を国民勤労動員署長をして分掌せしむることを得

第20条 第13条(第17条第4項及第18条に於て準用する場合を含む)、第16条並に第17条第2項及第3項の規定は、事業主たる国及都道府県に之を適用せず。

第21条 本令中厚生大臣とあるは、朝鮮に在りては朝鮮総督、台湾に在りては台湾総督とし、地方長官とあるは、朝鮮に在りては道知事、台湾に在りては州知事又は庁長とし、市町村長とあるは、朝鮮に在りては府尹(京城府に在りては区長)又は邑面長、台湾に在りては市長又は郡守(澎湖庁に在りては庁長)とし、国民勤労動員署長とあるは、朝鮮に在りては府尹、郡守又は島司、台湾に在りては市長又は郡守(澎湖庁に在りては庁長)とし、都道府県とあるは、朝鮮に在りては道、台湾に在りては州又は庁とす。

第22条 挺身勤労には国民勤労報国協力令は之を適用せず。

第23条 本令に規定するものの外、挺身勤労に関し必要なる事項は、命令を以て之を定む。

附則

本令は公布の日より之を施行す。

旧字[編集]

朕女子挺身勤勞令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム

御名御璽
昭和十九年八月二十二日

内閣総理大臣  小磯 國昭

軍需大臣  藤原銀次郎

内務大臣  大達 茂雄

厚生大臣  廣瀬 久忠


勅令第五百十九號

女子挺身勤勞令

第一條 勤勞常時要員トシテノ女子(學徒勤勞令ノ適用ヲ受クベキ者ヲ除ク)ノ隊組織(以下女子挺身隊ト稱ス)ニ依ル勤勞協力ニ關スル命令ニシテ國家總動員法第五條ノ規定ニ基クモノ竝ニ當該命令ニ依ル勤勞協力ヲ爲スベキ者及女子挺身隊ニ依ル從業ヲ爲ス者ノ雇入、使用、就職、從業又ハ給與其ノ他ノ從業條件ニ關スル命令ニシテ同法第六條ノ規定ニ基クモノニ關シテハ本令ノ定ムル所ニ依ル

第ニ條 國家總動員法第五條ノ規定ニ依ル命令ニ依リ女子ガ女子挺身隊ニ依リ爲ス勤勞協力(以下挺身勤勞ト稱ス)ハ國、地方公共團體又ハ厚生大臣若ハ地方長官(東京都ニ在リテハ警視總監以下同ジ)ノ指定スル者ノ行フ命令ヲ以テ定ムル總動員業務ニ付之ヲ爲サシムルモノトス

第三條 挺身勤勞ヲ爲スベキ者(以下隊員ト稱ス)ハ國民職業能力申吿令ニ依ル國民登錄者タル女子トス

 前項該當者以外ノ女子ハ志願ヲ爲シタル場合ニ限リ隊員ト爲スコトヲ得ルモノトス

第四條 引續キ挺身勤勞ヲ爲サシムル期閒ハ特別ノ事情アル場合ヲ除クノ外槪ネ一年トス

隊員ヲシテ引續キ一年ヲ超エ挺身勤勞ヲ爲サシムル場合ニ於テハ隊員ノ同意アルコトヲ要ス

第五條 挺身勤勞ヲ受ケントスル者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地方長官ニ之ヲ請求又ハ申請スベシ

第六條 地方長官前條ノ規定ニ依ル請求又ハ申請アリタル場合ニ於テ女子挺身隊ヲ出動セシムル必要アリト認ムルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ市町村長(市町村長ニ準ズベキモノヲ含ミ東京都ノ區ノ存スル區域竝ニ京都市、大阪市、名古屋市、橫濱市及神戶市ニ在リテハ區長トス以下同ジ)其ノ他ノ團體ノ長又ハ學校長ニ對シ隊員ト爲ルベキ者ヲ選拔スベキコトヲ命ズルモノトス

第七條 前條ノ命令ヲ受ケタル者ハ本人ノ年齡、身體ノ狀態、家庭ノ狀況等ヲ斟酌シ隊員ト爲ルベキ者ヲ選拔シ之ヲ地方長官ニ報吿スベシ

第八條 地方長官ハ前條ノ規定ニ依ル報吿アリタル者ノ中ヨリ隊員ヲ決定シ本人ニ其ノ旨ヲ挺身勤勞令書ニ依リ通知シ挺身勤勞ニ關シ必要ナル事項ヲ指示スルモノトス

第九條 前條ノ規定ニ依ル通知ヲ受ケタル者ハ同條ノ規定ニ依ル指示ニ從ヒ挺身勤勞ヲ爲スベシ

第十條 挺身勤勞ヲ爲ス場合ノ女子挺身隊ノ組織及運營竝ニ其ノ隊員ノ規律ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

第十一條 地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事情アル場合ニ於テハ挺身勤勞ノ全部又ハ一部ノ停止ニ關シ必要ナル措置ヲ爲スコトヲ得

第十二條 挺身勤勞ニ要スル經費ハ命令ノ定ムル所ニ依リ特別ノ事情アル場合ヲ除クノ外其ノ挺身勤勞ヲ受クル者之ヲ負擔スルモノトス

第十三條 厚生大臣(軍需省所管企業ニ於ケル勤勞管理及給與ニ關スル事項ニ付テハ軍需大臣)又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第六條ノ規定ニ基キ挺身勤勞ヲ受クル事業主ニ對シ隊員ノ使用又ハ給與其ノ他ノ從業條件ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

 隊員ガ業務上負傷シ、疾病ニ罹リ又ハ死亡シタル場合ニ於ケル本人又ハ其ノ遣族ノ扶助ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

第十四條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ隊員ト爲サザルモノトス但シ隊員ニシテ第一號又ハ第二號ニ該當スルニ至リタルモノハ此ノ限ニ在ラズ

一 陸海軍軍屬
二 陸軍大臣若ハ海軍大臣ノ所管ニ屬スル官衙(部隊及學校ヲ含ム)又ハ厚生大臣ノ指定スル工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ軍事上必要ナル總動員業務ニ從事スル者
三 法令ニ依リ拘禁中ノ者

第十五條 左ノ各號ノ一ニ該當スル者ハ志願ニ依ル場合ヲ除クノ外隊員ト爲サザルモノトス

一 厚生大臣ノ指定スル總動員業務ニ從事スル者
二 家庭生活ノ根軸タル者
三 其ノ他厚生大臣ノ指定スル者

第十六條 厚生大臣又ハ地方長官ハ命令ノ定ムル所ニ依リ挺身勤勞ニ關シ市町村長其ノ他ノ團體ノ長若ハ學校長又ハ隊員若ハ挺身勤勞ヲ受クル事業主ヲ監督ス

第十七條 地方長官必要アリト認ムル場合ニ於テハ國家總動員法第六條ノ規定ニ基キ挺身勤勞ヲ爲サザル者ニ對シ第五條ノ規定ニ依ル請求又ハ申請ニ係ル工場、事業場其ノ他ノ場所ニ就職スルコトヲ命ズルコトヲ得

 前項ノ工場、事業場其ノ他ノ場所ノ事業主ハ國家總動員法第六條ノ規定ニ基キ同項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ヨリ就職申出ヲ受ケタルトキハ之ヲ雇入ルルコトヲ要ス

 厚生大臣(軍需省所管企業ニ於ケル勤勞管理及給與ニ關スル事項ニ付テハ軍需大臣)又ハ地方長官必要アリト認ムルトキハ國家總動員法第六條ノ規定ニ基キ第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者又ハ前項ノ事業主ニ對シ第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者ノ使用、從業又ハ給與其ノ他ノ從業條件ニ關シ必要ナル命令ヲ爲スコトヲ得

 第十三條第二項ノ規定ハ第一項ノ規定ニ依ル命令ヲ受ケタル者又ハ其ノ遺族ノ扶助ニ之ヲ準用ス

第十八條 第十三條ノ規定ハ地方長官又ハ國民勤勞動員署長ノ爲ス指導又ハ勸奬ニ基キ女子ガ女子挺身隊ニ依リ第二條ノ規定ニ依ル總動員業務ニ付工場、事業場其ノ他ノ場所ニ於テ從業スル場合ニ之ヲ準用ス

第十九條 地方長官必要アリト認ムルトキハ本令ニ依ル其ノ事務ノ一部ヲ國民勤勞動員署長ヲシテ分掌セシムルコトヲ得

第二十條 第十三條(第十七條第四項及第十八條ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)、第十六條竝ニ第十七條第二項及第三項ノ規定ハ事業主タル國及都道府縣ニ之ヲ適用セズ

第二十一條 本令中厚生大臣トアルハ朝鮮ニ在リテハ朝鮮總督、臺灣ニ在リテハ臺灣總督トシ地方長官トアルハ朝鮮ニ在リテハ道知事、臺灣ニ在リテハ州知事又ハ廳長トシ市町村長トアルハ朝鮮ニ在リテハ府尹(京城府ニ在リテハ區長)又ハ邑面長、臺灣ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖廳ニ在リテハ廳長)トシ國民勤勞動員署長トアルハ朝鮮ニ在リテハ府尹、郡守又ハ島司、臺灣ニ在リテハ市長又ハ郡守(澎湖廳ニ在リテハ廳長)トシ都道府縣トアルハ朝鮮ニ在リテハ道、臺灣ニ在リテハ州又ハ廳トス

第二十二條 挺身勤勞ニハ國民勤勞報國協力令ハ之ヲ適用セズ

第二十三條 本令ニ規定スルモノノ外挺身勤勞ニ關シ必要ナル事項ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス

この著作物は、日本国の旧著作権法第11条により著作権の目的とならないため、パブリックドメインの状態にあります。同条は、次のいずれかに該当する著作物は著作権の目的とならない旨定めています。

  1. 法律命令及官公󠄁文󠄁書
  2. 新聞紙及定期刊行物ニ記載シタル雜報及政事上ノ論說若ハ時事ノ記事
  3. 公󠄁開セル裁判󠄁所󠄁、議會竝政談集會ニ於󠄁テ爲シタル演述󠄁

この著作物はアメリカ合衆国外で最初に発行され(かつ、その後30日以内にアメリカ合衆国で発行されておらず)、かつ、1978年より前にアメリカ合衆国の著作権の方式に従わずに発行されたか1978年より後に著作権表示なしに発行され、かつ、ウルグアイ・ラウンド協定法の期日(日本国を含むほとんどの国では1996年1月1日)に本国でパブリックドメインになっていたため、アメリカ合衆国においてパブリックドメインの状態にあります。