大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約の説明書

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昭和三十九年一月

大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験

を禁止する条約の説明書

外務



一 条約の成立経緯

核兵器実験停止交渉は、一九五八年十月末、米英ソ三国間でジュネーヴにおいて開始されたが、同交渉は、国際管理の原則に対する関係国間における見解の相異から行きづまりに陥り、改めて一九六二年三月から十八箇国軍縮委員会の場において進められることとなつた。同軍縮委員会においても、当初から国際管理の要否をめぐる関係国間の意見の対立のため、会議は、なんらの進展も見せなかつた。一九六二年末にいたり、ソ連は、現地査察を実際上認めるとの立場をとつたが、査察回数及ぴ査察方法等に関する意見の対立は、容易に解決できず、交渉は、行きづまりの状態にあつた。

ついで一九六三年六月十日、ケネディ大統領は、アメリカン・ユニヴァーシティにおいて米英ソ三国間の高級会談をモスクワにおいて開くことに合意が成立した旨発表し、同時に米国の誠意を示すため他国が行なわない限り大気圏内核実験を行なわない旨声明し、他方フルシチョフ首相も、七月二日、東ベルリンにおいて、地下を除く大気圏内、宇宙空間及び水中での核実験禁止条約締結の用意ある旨を表明した。

米英ソ三国会談は、一九六三年七月十五日より、アメリカ大統領特別代褒ハリマン国務次官、イギリス首相特別代表ヘイルシャム科学相及びソ連グロムイコ外相の間に行なわれたが、同年七月二十五日、「大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約」がイニシヤルされ、次いで同年八月五日、ラスク米国務長官、ヒューム英外相及びグリムイコン連外相によつて同条約への署名が行なわれた。

わが国は、一九六三年八月十四日、米英ソ三国政府がそれぞれ保管する同条約の署名本書に署名を了したが、同条約に署名した国は、米英ソの原締約国を除き、ワシントンにおいては、一〇二箇国、ロンドンにおいては、八十八箇国、モスクワにおいては、八十七箇国であり、これを通計し、原締約国を加えれぱ、一〇九箇国になる。

なお、この条約は、同年十月十日米英ソ三国の間で批准書の寄託が行なわれ、同日その効力を生じた。

また、一九六三年末日までに寄託国政府(米、英、ソ)から受領した通報によれば、この条約の批准書又は加入書を寄託した国は、米英ソの原締約国を除き、ワシントンにおいては、八箇国、ロンドンにおいては、十二箇国、モスクワにおいては、九箇国である。

二 条約の内容

この条約は、前文、本文五箇条及び末文から成り、その内容は、概略次のとおりである。

前文

厳重な国際管理の下において全面的かつ完全な軍縮についての合意をできる限りすみやかに達成することを主たる目的としていることを明らかにし、さらに今後全面的な核兵器実験禁止を実現するため話合いを継続する決意であることをうたつている。

第一条

締約国は、大気圏内外を問わずすべての空間及び水中において、また放射性物質が爆発が行なわれた国の領域外に拡散する結果をもたらす場合には、地下においても、核兵器実験のみならずすべての核爆発を禁止する義務、防止する義務及び実施しない義務を負う(第一項)。

また、締約国は、前記のいずれかの環境において行なわれ、又は前記の結果をもたらす核実験等の実施を実現させ、又はその実施に参加すること等を自制する義務を負う(第二項)。

第二条

この条約の改正規定であつて、改正のためには原締約国(米、英、ソ連)を含む全締約国の過半数の賛成が必要であるとしている。

第三条

この条約の署名、批准及び加入並びに発効に関する規定であつて、暑名は、すべての国に開放され、批准書及び加入書は、原締約国政府に寄託すべきものとしている。また、この条約は、すべての原締約国による批准書の寄託により発効し、その後に批准書又は加入書を寄託する国については、寄託の日に発効するものとしている。

第四条

有効期間を無期限と定めてやり、また、この条約の対象である事項に関連する非常事態が生じ、これにより、自国の至高の利益が害されたと当該締約国が判断する場合には、三箇月の事前通告で脱退できるとしている。

第五条

英語及びロシア語を正文とするこの条約は寄託国政府に寄託すること並びに寄託国政府が認証勝本を送付することを規定している。

三 わが国との関係

わが国は、従来核兵器実験の全面禁止について、国連の場においても、広く一般世界与論に対しても訴え、その実現に努力してきた。この条約は、かかる従来からのわが国の立場からみて満足なものとはいえないが、全面的核兵器実験禁止実現のための有力な一歩前進と認められる。わが国がこの条約の締約国となることは、全面的な核兵器実験禁止を主張する従来の立場を変更するものでないのは、勿論のことであり、わが国の核実験禁止に対する熱意と広く世界に示し、従来からのわが国の主張をおしすすめる上に有意義である。

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