大塚徹・あき詩集/美しき暴力

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美しき暴力[編集]

―あなさむし 絢爛として打碎く
 天も落ちこよ 地も裂けよ、恋
    久仁子の指輪も売りて―
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爪は 耿として歳月の疵にとぼ
指は 抗として生活の嵐にささ
掌は 荒として人世の穹に聠り
天譴の星 冬夜はびこる悪徳の下界に堕ちて、
いまはすでに 紅花ひらく要もなく
涯しなき曠野に 絢爛の情痴も壊滅するか!
 紅玉の!

白皚皚 積雪の地底に凍て
その夜 拉犇と 飢え迫る 肉親たちの囁き

嗟嘆!
爪は 指は 掌は
拗くれの 節くれの 皺くれの
われら
焰のごとく おおきのごとく 荒天のごとく

  奪る!
 摑む!
抛つ!
戞つとして ルビの指輪
去らば 飢日の糧に打砕かんとする。

〈昭和十二年、日本詩壇〉