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大塚徹・あき詩集 梅雨の窓作者:大塚徹昭和15年1940年
杏の実 せつなく 熟れて 六月の空 晦(くら)く 噴霧(ガス)となる。 いさかいしあとの虚白(むな)しさ―― × × しらじらしきは ふるさとの伝統 うっとうしきは にんげんの絆。 恍として熱あり われのみ怒る。 × × ひとりの友は彈に斃れ
ひとりの友は獄に死す 梅雨の窓、セキズイの疼きに慟哭する。 × × ああ、まぼろしの経はひとすじ―― 病み呆け、霧ふりやまず ふりやまず。 生や 死や あハハ そは 問わまほしく哀れにおかし。
〈昭和十五年、日本詩壇〉