大塚徹・あき詩集/春の雪馬鹿

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春の雪馬鹿[編集]

破れ傘、巷に飢えて
味気ない春の淡雪、
思い出はみんなぼろぼろ
ぎごとも千々に消えさり――

デカタンもやるならやらせ かつつぶせ、
その後にきたる真理の夜明け、
ボードレールの悪の華
咲くか咲かぬかこらどうじゃ。

この野郎、音ものう降りつむ雪の
ぺいぷめんとの夕闇に
またしても またしてもうかびあがるは
にっぽんの自由と平和のあかきまぼろし。

暴風のように どっとたかまるこの血潮、
いつに口火をるものぞ
足もとはよろけよろけして
あハハの穴あきしゃっぽ 泥のちび下駄。

泣くも 笑うも
今宵はゆるせ
心のなかの ふるさとの
わがゆく末に れ住んで
痩せもやせたり妻も、子も。

どうせやるなら かつつぶせ、
明日は英雄、今日は馬鹿、
雪がわが身のおきなれば
どんどん降れふれもっと降れ、
雪馬鹿野郎のちゃんりんに
積りつもって朝がくる。

〈昭和十四年、国民詩〉