大塚徹・あき詩集/セキズイ正月

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セキズイ正月[編集]

ひる ひる ひる ひるる
セキズイは軋る。

じっと耳をすませば
セキズイは軋る第二頸骨と第三頸骨。
おもしろやセキズイ軋る。軋る。
こぞの太陽――魚屑のごとく男棄てし加古川
 の女よ。
浪あらき日本海の温泉に
胸病みて、いまをこそ杏き松葉牡丹の情痴を
 抱くとか
寒鴨をわれに送りて逢えばまた悲しき恋なが
 ら
ほそぼそと われとてもセキズイの疼きに
年月のみながれて今年二十四の春となる

戸外は氷雨ふる春の夕ぐれ。
それら悲しき恋の女、ユリアンよ。ウメンチ
 よ。クニッペよ。ツンよ。
今年こそ蒼白いインテリの戯びやめて、タイ
 キンよ。セッシャンよ。ミッシャンよ。

ああ、血潮吹く赤旗を黎明の風に漂わそうぞ
ふるさとの屋根裏の朽窓に冷えし火桶抱きて
パンパンと笑うひつじ年の正月。

ひる ひる ひる ひるる
セキズイは軋る。
またしても セキズイは軋る骨と骨と相尅つ
 ひびき。
黙念と屠蘇に酔えば
瞳とじてああセキズイ軋る。軋る。

〈昭和六年、朝〉