玉櫛笥、ふたたび三度思ふこと、思ふが儘に書きつけて、見すれど海女のかづきして、苅るてふ底のみるめにも、ふれぬをいたみ頼みにし、筆にさへだに恥かしの、軒の葱に消えやすき、露の身にもならもほし。ならまく星の光すら、絶えてあやなくなるまでも、八夜九夜と思ひあかし、雲井をながめすべをなみ。袖の雫にせき入るる、硯の海に玉や沈めん。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』下、武蔵野書院、1975年。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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