そもそも天の霑ひに、雨露霜雪の四つを見せ。同じく雪月花の、三つの徳を分つにも、雪こそ殊に勝れたれ。先づ春は梅桜、咲くより散るまでも、雪を忘るる色は無し、夏は五月雨の。降る家の軒は暮れながら、庭は曇らぬ卯の花の、垣根や雪に粉ふらん。夜寒忘れて待つ月の、山の端しろき影までも、降らぬ雪かと疑はれ。冬野に残る菊までも、また初雪と面白き、山路の憂さや忘るらん。山路の憂さや忘るらん。
- 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』中、武蔵野書院、1975年。
この作品は1929年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。
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