四季の眺

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梅の匂ひに、柳も靡く、春風に、桃のやよひの花見てもどる。ゆらり〳〵と夕霞、春の野がけにせりよもぎ、摘みかけたる面白さ。里の卯の花、田のさなへ、色見えて、茂る若葉のかげとひ行けば、まだきはつね、やまほととぎす、一声に花の名残も忘られて、いへづとに語らばや、草葉いろ付き、野菊も咲きて、秋深み、野辺の朝風つゆ身にしみて、ちらり〳〵と、村しぐれ、よしや濡るとも紅葉葉の、染めかけたる面白さ。野辺の通ひ路人目も草も冬枯れて、落葉しぐるる木枯の風、峰の炭がま煙りも淋し、降る雪に野路も山路も白妙に、見渡したる面白さ。


  • 底本: 今井通郎『生田山田両流 箏唄全解』中、武蔵野書院、1975年。

この作品は1927年1月1日より前に発行され、かつ著作者の没後(団体著作物にあっては公表後又は創作後)100年以上経過しているため、全ての国や地域でパブリックドメインの状態にあります。