古社寺保存法

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朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル古社寺保存法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム

   

明治三十年六月五日

內閣總理大臣 伯爵󠄄松方正義

內務大臣 伯爵󠄄樺山資紀󠄅

法律第四十九號

古社寺保存法

第一條 古社寺ニシテ其ノ建造󠄃物及寶物類ヲ維持修理スルコト能ハサルモノハ保存金ノ下付ヲ內務大臣ニ出願スルコトヲ得

第二條 國費ヲ以テ補助保存スヘキ社寺ノ建造󠄃物及寶物類ハ歷史ノ證徵、由緖ノ特殊又ハ製作ノ優秀ニ就キ古社寺保存會ニ諮詢シテ內務大臣之ヲ定ム

第三條 前條ノ建造物及寶物類ノ修理ハ地方長官之ヲ指揮監督ス

第四條 社寺ノ建造󠄃物及寶物類ニシテ特ニ歷史ノ證徵又ハ美術ノ模範トナルヘキモノハ古社寺保存會ニ諮詢シ內務大臣ニ於テ特別保護建造󠄃物又ハ國寶ノ資格アルモノト定ムルコトヲ得

內務大臣ニ於テ前項ノ資格ヲ付シタル物件ハ官報ヲ以テ之ヲ吿示ス

第五條 特別保護建造󠄃物及國寶ハ之ヲ處分シ又ハ差押フルコトヲ得ス但シ內務大臣ノ許可ヲ得テ國寶ヲ公開ノ展覽場ニ出陳スルハ此ノ限ニ在ラス

第六條 前條ノ物件ハ神職(官國幣󠄃社ニ在テハ宮司、府縣鄕社ニ在テハ社司、村社以下ニ在テハ社掌、以下之ニ做フ)若ハ住職之ヲ監守シ內務大臣ノ監督ニ屬スルモノトス但シ內務大臣ノ許可ヲ經テ別ニ監守者ヲ置クコトヲ得

第七條 社寺ハ內務大臣ノ命ニ依リ官立又ハ公立ノ博物館ニ國寶ヲ出陳スルノ義務アルモノトス但シ祭典法用ニ必要ナルモノハ此ノ限ニ在ラス

前項ノ命ニ對シテハ訴願ヲ爲スコトヲ得

第八條 前條ニ依リ國寶ヲ出陳シタル社寺ニハ命令ニ定メタル標準ニ從ヒ國庫ヨリ補給金ヲ支給スルモノトス

第九條 神職住職其ノ他ノ監守者ニシテ內務大臣ノ命ニ違󠄅背シ國寶ヲ出陳セサルトキハ內務大臣ハ其ノ出陳ヲ强要スルコトヲ得

第十條 社寺ニ下付シタル保存金ハ地方長官之ヲ管理ス

保存金ハ豫算額ヲ以テ之ヲ下付ス但シ精算ノ上剩餘アルトキハ內務大臣ハ之ヲ還󠄃付セシムルコトヲ得

第十一條 社寺ニ下付シタル保存金ハ之ヲ差押フルコトヲ得ス

第十二條 第十條第十一條ノ保存金ハ其ノ利子ヲ包󠄃含スルモノトス

第十三條 監守者其ノ監守スル所ノ國寶ヲ竊取シ、毀棄シ、隱匿シ若ハ他ノ物件ト變換シ又ハ第五條ノ規定ニ違󠄅背シタルトキハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス

第五條ノ物件ナルコトヲ知リテ之ヲ讓受ケ、借受ケ、擔保ニ取リ、寄藏シ若ハ其ノ牙󠄃保ヲ爲シタル者ハ六月以上三年以下ノ重禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス

第十四條 監守者怠慢ニ由リ國寶ヲ亡󠄃失若ハ毀損シタルトキハ五十圓以上五百圓以下ノ過料ニ處ス

過料ハ地方裁判󠄄所ノ命令ヲ以テ之ヲ料ス但シ其ノ命令ニ對シテハ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得

過料ハ檢事ノ命令ニ依リ之ヲ徵收ス其ノ徵收ニ付テハ民事訴訟法第六編ノ規定ヲ準用ス但シ此ノ場合ニ於ケル檢事ノ命令ハ執行文ノ效力ヲ有ス

第十五條 第七條ニ依リ出陳シタル國寶ノ監守者故意怠慢ニ由リ國寶ヲ亡󠄃失若ハ毀損シタルトキハ國庫ハ命令ニ定メタル評󠄃價ノ方法ニ從ヒ其ノ損害󠄆ヲ賠償スルモノトス但シ其ノ評󠄃價額ニ關シテハ裁判󠄄所ニ出訴スルコトヲ得ス

第十六條 本法ニ定メタル保存金及補給金トシテ國庫ヨリ支出スヘキ金額ハ一箇年拾五萬圓乃至貳拾萬圓トス

附則

第十七條 本法施行前社寺ニ下付シタル保存金ニ關シ內務大臣ハ第十條乃至第十二條ヲ適用スルコトヲ得

第十八條 第四條ニ該當スル物件ハ社寺ニ屬セサルモノト雖所有者ノ請󠄃求アルトキハ第七條第一項ニ揭ケタル博物館ニ出陳スルコトヲ許可シ之ニ補給金ヲ支給スルコトヲ得

第十九條 廢止

第二十條 本法施行上必要ナル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム

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