加拉太書(明治元訳) 第五章

Wikisource:宗教 > 聖書 > 明治元訳新約聖書 (明治37年) > 加拉太書(明治元訳)

第五章

1 イエス・キリスト我儕（われら）を釋（とき）て自由（じゆう）を得（え）させたり是（この）故（ゆゑ）に爾曹（なんぢら）堅（かたく）立（たち）て復（ふたた）び奴隸（どれい）の軛（くびき）に繫（つなが）るる勿（なか）れ
2 我（われ）パウロ爾曹（なんぢら）にいふ爾曹（なんぢら）もし割禮（かつれい）を受（うけ）なばキリスト更（さら）に爾曹（なんぢら）に益（えき）なし
3 我（われ）また割禮（かつれい）を受（うけ）たる各々（おのおの）の人（ひと）に就（つい）て證（あかし）す其（その）人（ひと）は全（まつた）き律法（おきて）を行（おこな）ふべき者（もの）なり
4 なんぢら律法（おきて）に由（より）て義（ぎ）とせらるる者（もの）はキリストと與（かかは）りなく恩（めぐみ）より墮（おち）たる者（もの）なり
5 われら望（のぞ）む所（ところ）のもの即（すなは）ち信仰（しんかう）を以（も）て義（ぎ）とせらるることを靈（みたま）に由（より）て俟（まつ）なり
6 夫（それ）キリスト・イエスに在（あり）ては割禮（かつれい）を受（うく）るも受（うけ）ざるも益（えき）なく惟（ただ）愛（あい）に由（より）て行（はたら）く所（ところ）の信仰（しんかう）のみ益（えき）あり
7 なんぢら前（さき）には善（よく）走（はし）りたり誰（た）が爾曹（なんぢら）の眞理（まこと）に循（したが）はざるやう阻（ささふ）ることを爲（せ）しや
8 その勸（すすめ）は爾曹（なんぢら）を召（めす）者（もの）より出（いづ）るに非（あら）ず
9 少許（すこし）の麪酵（ぱんだね）は全團（かたまり）をみな發（ふくれ）しむ
10 爾曹（なんぢら）に就（つい）ては我（われ）なんぢらが少（すこ）しも異念（ことなるおもひ）を懷（いだか）ざることを主（しゆ）に由（より）て信（しん）ず誰（たれ）にても爾曹（なんぢら）を煩（わづら）はす者（もの）は其（その）審判（さばき）を受（うく）べし
11 兄弟（きやうだい）よ我（われ）もし今（いま）も尚（なほ）割禮（かつれい）を宜（のべ）ば何（なん）ぞ窘（せめ）らるる事（こと）あらん乎（や）もし然（しか）せば既（もは）や十字架（じふじか）に礙（つまづ）くこと止（やむ）べし
12 爾曹（なんぢら）を亂（みだ）す者（もの）の自（みづか）ら爾曹（なんぢら）より離（はなれ）んことを願（ねが）ふ
13 そは兄弟（きやうだい）よ爾曹（なんぢら）は召（めし）を蒙（かうむ）りて自由（じゆう）を得（え）たる者（もの）なれば也（なり）されど其（その）自由（じゆう）を得（うる）を機會（をり）として肉（にく）に循（したが）ふ勿（なか）れ惟（ただ）愛（あい）を以（も）て互（たがひ）に事（つかふ）ることを爲（せ）よ
14 それ己（おのれ）の如（ごと）く爾（なんぢ）の隣（となり）を愛（あい）すべしと曰（いへ）る此（この）一言（ひとつのことば）すべての律法（おきて）を全（まつた）うする也（なり）
15 なんぢら愼（つつしめ）よ若（もし）たがひに呑（かみ）噬（くら）はば恐（おそら）くは互（たがひ）に滅（ほろぼ）されん

16 われ謂（いふ）なんぢら靈（みたま）に由（より）て行（あゆ）むべし然（さら）ば肉（にく）の慾（よく）を成（なす）こと莫（なか）らん
17 そは肉（にく）の慾（ねがひ）は靈（みたま）に逆（さから）ひ靈（みたま）の慾（ねがひ）は肉（にく）に逆（さから）ひ此（この）二（ふたつ）のもの互（たがひ）に相（あひ）敵（もと）る是（この）故（ゆゑ）に爾曹（なんぢら）好（この）む所（ところ）の事（こと）をなすを得（え）ず
18 然（され）ど爾曹（なんぢら）もし靈（みたま）に導（みちび）かるるときは律法（おきて）の下（した）に在（あら）ざるべし
19 それ肉（にく）の行（おこなひ）は顯著（あらは）なり即（すなは）ち苟合（こうがふ）、汚穢（をくわい）、好色（かうしよく）
20 偶像（ぐうざう）に事（つかふ）ること巫術（ふじゆつ）、仇恨（きうこん）、爭鬪（さうとう）、妬忌（とき）、忿怒（ふんど）、分爭（ぶんさう）、結黨（けつたう）、異端（いたん）
21 媢嫉（ばうしつ）、兇殺（きようさつ）、醉酒（すゐしゆ）、放蕩（はうたう）などの如（ごと）し此等（これら）の事（こと）につき我（われ）甞（かつ）て爾曹（なんぢら）に斯（かか）る事（こと）をなす者（もの）は神（かみの）國（くに）を嗣（つぐ）べからずと告（つげ）しその如（ごと）く今（いま）また預（あらか）じめ之（これ）を告（つぐ）
22 靈（みたま）の結（むす）ぶ所（ところ）の果（み）は仁愛（じんあい）、喜樂（きらく）、平和（へいわ）、忍耐（にんたい）、慈悲（じひ）、良善（りやうぜん）、忠信（ちゆうしん）
23 温柔（をんじう）、撙節（そんせつ）かくの如（ごと）き類（たぐひ）を禁（きん）ずる律法（おきて）はある事（こと）なし
24 夫（それ）キリストに屬（ぞく）する者（もの）は肉（にく）と其（その）情（じやう）および慾（よく）とを十字架（じふじか）に釘（つけ）たり
25 若（もし）われら靈（みたま）に由（より）て生（いき）なば亦（また）靈（みたま）に由（より）て行（あゆ）むべし
26 互（たがひ）に怒（いかり）たがひに妬（ねた）むことを爲（なし）て虚榮（むなしきほまれ）を求（もとむ）る勿（なか）れ